ご無沙汰です。

最近は別の方に乗り換えつつあり、ブログはサボり気味です(^-^;)


ブルックナーの没後100周年を記念してEMIから発売された歴史的録音を、久しぶりに引っ張り出してみました。

2巻6CDです。

まず第1巻は


・交響曲第0番より第3楽章(ヴェス改訂版)

フリッツ・ツァウン&ベルリン国立歌劇場管(1933年10月の録音)


・交響曲第1番より第3楽章(シャルク改訂版)
・交響曲第2番より第3楽章(ヘルベック改訂版)

フリッツ・ツァウン&ベルリン国立歌劇場管(1934年2月の録音)


・交響曲第3番より第3楽章(シャルク改訂版)

アントン・コンラート&ウィーン響(1928年10月10日の録音)


・交響曲第4番より第3楽章(レーヴェ改訂版)

クレメンス・クラウス&ウィーン・フィル(1929年7月3日の録音)


・交響曲第4番(ハース版)

ベーム&ドレスデン国立歌劇場管(1936年6月の録音)


・交響曲第5番(ハース版)

ベーム&ドレスデン国立歌劇場管(1937年の録音)


・交響曲第7番(シャルク改訂版)

フルトヴェングラー&ベルリン・フィル(1949年10月18日の録音)


フルトヴェングラーの録音は昔から知られたものですね。

ベームによる第4番と第5番は、ハースによる原典版を用いた世界で最初の、それも全曲録音です。


それにしても、ブルックナーの初期の交響曲を、スケルツォ楽章だけとはいえ、この時代に録音していたのには驚かされます(勿論史上初録音)。

せいぜいドイツ語圏で聴かれる程度だったブルックナーの、それも初期の作品を録音するとは、どれだけ売れるかも怪しいですし、なんとも向こう見ずな企画だったかと思います。


第2巻は


・交響曲第6番より第2~4楽章(ハース版)

フルトヴェングラー&ベルリン・フィル(1943年11月13-16日の録音)


・交響曲第7番(レーヴェ改訂版)

カバスタ&ミュンヘン・フィル(1942年9月の録音)


・交響曲第8番(ハース版準拠)

フルトヴェングラー&ベルリン・フィル(1949年3月15日の録音)


・交響曲第9番(オーレル=ハース版)

ハウゼッガー&ミュンヘン・フィル(1938年4月の録音)


こちらは比較的知られた録音です。

フルトヴェングラーによる第6番は、この録音しか存在しないので、第1楽章が欠落しているのは痛恨の極み!

カバスタはナチスへの協力で戦後演奏活動を禁止され、夫人と共に自殺した悲劇の指揮者。
彼には他に第4番と第9番の録音があります。


フルトヴェングラーの第8番は、昔から評価が高く、日本でもレコ芸の大賞を受賞したことのある録音。

但しこの録音を巡ってはかなり複雑な経緯があります。

というのは、このCDに収められている3月15日の録音はティタニア・パラストでのライブなのですが、実はその前日の14日のダーレム・ゲマインデハウスでの聴衆無しの放送録音も存在してます。

この14日の録音はTestamentレーベルが発売しています。

そして従来EMIから発売されてきたLPやCDは、この両方の録音のいわばハイブリッド版だったようです。


第9番を指揮したハウゼッガーは、オーレルによる原典版が発表されると、1932年のミュンヘン・フィルのコンサートで、従来のレーヴェ改訂版による第9番を指揮したあと、オーレルによる原典版の第9番を指揮し、両者の違いを白日の下にさらすという壮挙を達成しています。

もっともこの1938年のオーレル原典版による録音でも、所々にレーヴェ改訂版の名残が聴かれ、いかにそれまでブルックナーの交響曲が改訂版で受容されてきたかが窺われます。

それはハウゼッガーに限らず、フルトヴェングラー、シューリヒト、マタチッチ、ヨッフム、カラヤンなど皆が直面したことです。


いずれにしましても、ブルックナー・マニアなら、座右に置いておきたいCDたちです。

昨年は、ウィーンの三羽烏の一人、パウル・バドゥーラ=スコダが90歳を迎え、それを記念して彼がウェストミンスター・レーベルに残した大量の録音から、自選したものが20枚組で発売されました


やはり彼の十八番のウィーン古典派の作品がズラリと並びますが、そのなかで1枚異彩を放つのが8枚目。

①フランク  交響的変奏曲
②リムスキー=コルサコフ  ピアノ協奏曲
③スクリャービン  ピアノ協奏曲

①②ロジンスキ&ロイヤル・フィル(1955年)
③スヴォボダ&ウィーン響(1951年)


もちろん、彼がドイツ物しかやらないわけではないのでしょうが、それにしても異色ですよね。

リムスキー=コルサコフのピアノ協奏曲なんて、ロシア人のピアニストですらやらない人がごまんといますし(笑)

オーストリアは戦後の占領下で、シリングは安く、しかもソリストはまだ20代の若手で、ウェストミンスター・レーベルとしては何でも弾かせることができたのでしょうが(笑)、まぁよくも録音してくれたものです。


あとは15枚目の名曲アルバム的なディスクには、リストのハンガリー狂詩曲第2番や、ラヴェルの「クープランの墓」からトッカータといった、いわゆる超絶技巧系の作品も含まれていて、今日のわれわれがこのピアニストに対して抱くイメージとは異なる作品を、若い時期には録音していたんだと勉強になりました。


そう言えば、ハンス・スワロフスキーがN響に客演した際にモーツァルトの2台のピアノのための協奏曲を振った録音が、過日FMで放送されてましたが、その時のソリストがバドゥーラ=スコダど、彼と共にウィーンの三羽烏の一人とされたイェルク・デムスという、実に豪華な純ウィーン・メンバーでした。

バドゥーラ=スコダとデムスが健在なだけに、ウィーンの三羽烏のもう一人のグルダが、やはりあまりに若くして亡くなってしまったんだなぁと、ちょっとしんみりとしてしまいました。

昨年になりますが、フルトヴェングラー&ルツェルン祝祭管の1953年8月26日の演奏会の全演目の録音が登場しました。


・シューマン 「マンフレッド」序曲
・シューマン  交響曲第4番
・ベートーヴェン  交響曲第3番

シューマンとベートーヴェンの交響曲は、かつてフランス・フルトヴェングラー協会から発売されて、あらかた発掘され尽くされたと思われていたフルトヴェングラーの未発表音源の久々の超弩級の発掘として話題となりました。
(そして、その明らかに違法なコピー盤も大量に売れたというのが、いかにもフルトヴェングラーらしい現象(苦笑)

しかし、「マンフレッド」だけは今回が完全に初出です。

「マンフレッド」序曲の冒頭は手元のオイレンブルクのスコアでは、「Rasch」と書かれ、四分音符=152と指示されてますが、フルトヴェングラーは正反対で「Grave」くらいの遅さ&重さ。

そういうスコアがあるんですかね?
(彼の他の録音もやはり同じ)


まぁそれはともかくとして、燃焼度はさすがはライブのフルトヴェングラー、お見事です。

殊にシューマンの第4交響曲は、ベルリン・フィルとのスタジオ録音が今日まで他の追随を許さない、そして恐らくは今後もこれを凌駕する演奏は出てこないだろうというくらい、フルトヴェングラーの全ての録音の中でも一二を争う名盤ですが、振幅の大きさは今回のルツェルン盤も負けていません。

確かにフルトヴェングラーは戦後は病に倒れた1952年を除いては、亡くなる1954年まで毎年ルツェルン音楽祭には登場しているとは言え、手兵とは言えないこの音楽祭のオケを、まるでベルリン・フィルのように見事に統率しています。

音質について言うと、フランス・フルトヴェングラー協会盤や夫人のライセンスを得たTahra盤よりも改善していて、これは買いだと思います。


こうなると期待が高まるのが、1949年のルツェルン音楽祭でのハイドンの「天地創造」。

というのも、この演奏は録音されたことは確かなのですが、消去されてしまったとされています。

しかし今回の1953年の録音も、そもそもは録音が残されていないとされていただけに、「天地創造」の方は一度は録音されてることがはっきりしているので、何処かにコピーがあるのでは?と期待してしまいます。

しかもこの「天地創造」は、ゼーフリート、ヴァルター・ルートヴィヒ、ボリス・クリストフという素晴らしいソリストを並べたものなので、期待するな!という方が無理な話です。

ほんの微かな希望の光を感じるのは、私だけでしょうか?