2018『舞台友情』初日マチネVol.25 友だちだから。 | 電卓男の友情日記

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白血病になった女の子とクラスメイトとの絆の舞台『友情〜秋桜のバラード〜』について書いています。

 
帰ろうとしたその時。
 
 
 
 
 

なぁっ‼︎

 
島崎行こうよ‼︎
 
 
 
ふいに正があゆみのそばに駆け寄り
感情をむき出しにして必死に説得する。
 
 
 
 
ここの正、初日マチネはイマイチ必死さが伝わらなかった。
というのは、声量は十分なのだが、やや力が入りすぎて、いかにも演じているみたいな印象を受けてしまった。
 
正はこのシーンだけで人柄の良さが伝わってくる。
今年にかぎっていえば、例年に比べて少なからずおごり高ぶったキャラを作り上げているので(決めポーズとかね😁笑)、ここで飾らない、人間らしい一面を十分に見せられると、最後のフライパンのシーンもより親しみやすく観ることができる。
 
 
しかし、これはあくまで初日マチネの感想。
 
このあとのソワレはもっと自然にできていたし、千秋楽は友だちのために一生懸命な姿に、心から感動した。
 
 
 
 
それから正役のおはるやす君は、タカコが話しているときは彼女の顔をきちんと見ている。
 
人の目をまっすぐ見て、笑顔で話を聞ける人は、お芝居でもプライベートでも、信頼の置ける人だと思う。
とてもいい人柄が窺えた。
事実、千秋楽後に初めてお話しできた時は、ものすごく礼儀正しくて、いろいろと褒め称える電卓男に対しても常に謙遜されていて、できた人だなぁとつくづく感心した。
 
 
 
 
 
 
舞台に戻します。
 
正に続き、タカコもあゆみのもとへ駆け寄って、あきらめない。
 
クラス全員が行くんだよ!
 
 
 
 
 
 
 
 
……ほんと?
 
 
 
それまで目を合わせなかったあゆみが、はじめて2人の方を半身越しに見る。
 
 
 
暗雲の切れ間から、わずかに光が差し込みはじめたのを観客も感じ出す。
 
 
 
2人がうなずく。
 
みんなで計画したこと、
三浦三崎ならそんなに遠くないこと。
 
 
行こうよ、
行こうよ‼︎‼︎
 
 
正が懸命にあゆみに訴えかける。
 
 
 
 
 
 
 
 
ありがとう。
 
…でも、
やっぱり行かないと思う。
 
 
 
 
 
2人とも、
ガックリと肩を落とし、黙ってしまった。
 
一度断られ、
家族の説得も受け入れられず、
それでも
最後まで希望を捨てずにねばった。
 
 
でも、もうこれ以上は
かける言葉がなかった。
 
 
 
 
 
 
観客からすれば、
あゆみのためを思い
一生懸命誘ってくれている2人の気持ちが痛いほどよくわかる。
 
 
 
あゆみが、決して頑ななのではない。
それくらい、アタマが気になって仕方ないのである。
 
 
白血病を患った方の本心。
それはもちろん、実際になった人にしかわからないこと。
 
 
だが、この舞台では観に来られた方全員がそうした心情を理解できるようにストーリーが作られている。
 
 
 
素晴らしい芝居を観ながら、徐々に理解が深まっていく。
 
 
 
 
このシーンでは、ご年配の方は、もしかしたら親目線だったり、学生さんだったらクラスの友達目線だったり、あるいは教育に携わる方なら、先生目線でご覧になっていたかもしれない。
 
 
どの角度からでも観ることができ、それぞれに考えさせられる。
そして白血病になったあゆみは、自分たちがそれほど気にならなかったり、ふつうにしようと思っていることが、当人にとっては途方もなく耐えがたいことで非常に苦しんでいるのである。
 
 
 
 
 
誰もが口を閉ざしている中、
その場を動かしたのは、担任の野本先生だった。
 
 
 
 
 
 
 
みんなはお前に同情して誘ってるんじゃない。

お前が、友だちだから誘ってるんだ。
 



 
みんなで一緒に遊びたいから誘ってる、
そこを考えてほしい、と。
 
 
 
 
非常に大きな意味のある言葉。
 
去年、このセリフを聞いて、
体の奥底から、深い感動を覚えたのを思い出す。
 
 
自分がもし先生だったら、
こんな言葉を言えたらいいなぁと、
思わず先生目線で考えてしまうくらい、
素晴らしい教えだとつくづく感じた。
 
 
誰のことも傷つけることなく、
何よりもあゆみのことを考え、
的確な言葉を伝えられる先生に感動した。
 
 
 
諦めがまだつかない生徒たちをなだめ、今日のところは帰ろうと、島崎家をあとにする。
 
 
両親が玄関まで見送る。
 
 
 
 
 
 
 
一人、
ぽつんと取り残される、あゆみ。
 
 
 
 
 
ゆっくりと、
顔をあげる。
 
 
玄関の方を、
じっと見つめる。
 
 
悲しげな目で、
いつまでも見つめ続ける。
 
 
 
 
 
 
 
ここ。
この場面。
前半におけるセリフのない箇所で、あゆみの最もすばらしいと感じた演技でした。
 
 
セリフがなくとも、
観ている側はあゆみがどんなことを考えているかが、手に取るように伝わる。
 
 
 
 
 
友情ラストのエピローグと同じくらい、
何度でも観たいシーンです。
 
 
 
 
 
両親が戻ってきて、我に帰る。
 
うつむくあゆみ。
 
 
 
お父さんは、行った方がいいと思うな。
 
 

この言い方が、とてもあったかくて優しい。
 
去年もこのお父さん役の大木さんの演技を拝見したが、他人からみても、あゆみとしても心に安らぎを与えてくれる言葉だった。
 
 
それと、なぜかわからないが、去年はこのセリフが出る前に、きっとこの言葉が飛び出すだろうと頭に描いたセリフが、そのまんま出てきて、びっくりした。
 
ホッとするような、はじめからそうあるべきような、自然なセリフだったのかもしれない。
 
 
 
 
この言葉を聞いたあゆみ。
揺れ動いていた心は、行きたい気持ちが勝るとともに、それ以上のつらい気持ちが溢れ出す。
 
 
 
 
そりゃあ私だって行きたいよ!
 
 
行きたいけど、
行ったって人にジロジロ見られるだけだし、
 
 
行きたいけど、
みじめになりたくない。
 
 
 
みんな楽しんでるのに、
私一人だけみじめなのは、、、いやだ…!!!
 
 
 
 
あゆみが心の奥に秘めていた気持ちを、さらけ出す。
 
 
 
誰も、観客もかける言葉が見つからない。
 
 
 
 
母の胸に飛び込む。
 
家族だからこそ、心を許せる時間。
 
 

最初の島崎家のシーンラストでは

母親の胸に飛び込むまでに

もっとためてためて~っと言ったが

ここではそれは不要

言い切ったらもう十分

あとは幕が降りるまで

あゆみの残した純粋な言葉たちが

会場いっぱい静かに浸透していく

 

 

 

島崎あゆみ役、天満綺実(てんま あやみ)さん、

初日マチネからここは見事な演技でした。

 

 

 

 

 

 

 

この世に生まれ落ちてから

まだ14年の月日しか流れていない

なのに

生きていくって大変なこと

 

つらいことばかりがやってくる

 

 

でも

大好きな友だちに誘われた

 

 

どうか

これから良いことが

たくさんありますように

 

 

 

 

 

 

 

 

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以上で

舞台『友情』2018、前半が終了です。

 

 

ここまで拙文をお読みくださり、

まことにありがとうございます。

 

 

後半は、前半以上に大きな困難、

そしておそらく、見たことのないような出来事がとび出します。

うっとりするような、うつくしい場面も。

 

 

あゆみは、はたして三浦三崎に行ったのでしょうか。

 

そこでは、どんな出来事が待ち受けていたのでしょうか。

 

 

 

”奇跡”を信じたあゆみに

はたして奇跡はおとずれるのでしょうか。

 

 

 

 

 

それを知っているのは、

観に来られたお客様と、

私の、頭の中だけ(笑)

 

 

 

 

 

よろしければ引き続きご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

それでは。

 

 

 
 
 
 
いつか自宅で咲いていた花
花は咲く。
 
 
 
 
 
 
 
 
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*読者の方へ*
 
このブログは、『友情』という舞台を行う意義、全体のストーリーや流れを熟知した上で、よりよくほかのお客様に観ていただけるよう、個人的な感想を書いているものです。
 
1人でも多くの方にこの舞台の存在を知っていただき、また実際にお越しいただいて、「白血病」という病気のこと、ドナー登録や献血の重要性を理解していただけることを第一に考えております。
 
そのためには、舞台の中心となる生徒役の役者さんたちが、もっともっと良い演技をすることが大事です。
 
私はそこに主眼を置き、生徒役の方々の演技の良し悪しをお伝えしています。
 
加えて、生徒さんたちが全力で稽古した成果も評価してあげたいと思っています。
 
「泣く」「叫ぶ」などといった演技を、「すばらしい」「リアリティがある」などと評価しているのは、すべて、上述のためです。
 
決して、現在病気と闘っている方々のことを憂慮していないわけではございません。
 
そのことをご理解いただいた上で、今後とも【電卓男の友情日記】をどうぞ宜しくお願い致します。