『大英博物館マンガ展図録 マンガ!』 | First Chance to See...

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 久しぶりに行った図書館の新着図書コーナーで、大判の赤い本が目に飛び込んできた。

 

 

 2019年にロンドンの大英博物館セインズベリー・ギャラリーで開催された、「マンガ展」の図録の日本語訳。ひったくるように借りて読んだ。

 

 今の私はさほど熱心なマンガの読者ではないが、私が中学生/高校生/大学生をやっていた1970年代〜1980年代がちょうど少女マンガ黄金期だったこともあって、「LaLa」や「プチフラワー」や「ぶ〜け」を本屋の店頭で立ち読みしては気に入った作品を単行本で買うという、愛はあるけど金のない日々を過ごしていた。実際、普通の小説本を読む以上の時間を少女マンガを読む時間に費やしていたと思う。

 

 社会人になると次第に少女マンガから遠のいたが、マンガ自体は根本的に嫌いじゃないので、友人知人同僚から布教されて少年マンガや青年マンガを読むことはあるし(「SLUM DUNK」を読んだことがない、ですって? 私が貸してあげるから読みなさい!)、学生時代からファンだった萩尾望都や山岸涼子や吉田秋生といった描き手の新作発売の情報が入れば今でも買って読んでいる。ただ、学生時代のような熱心さに欠けるせいで、発売されて何ヶ月も経ってからようやく新刊が出ていることに気づく始末——ひどい時には、「えっと、何巻目まで買ってたっけ???」と、今持っている最終巻を確認してからでないとダブりを買いかねない有様。あーあ。

 

 そんなやる気のないマンガ読みの私を、『大英博物館マンガ展図録 マンガ!』は大いに鼓舞してくれた。マンガにはマンガの文法や記号があり、それらの知識なしには読み解けないことに、こうの史代の「漫符図鑑」で改めて気づかされると、それらすべてを瞬時に理解できる日本語ネイティブとしての特権を利用してない我が身を振り返って、あまりのもったいなさに目眩がする。私が知らなかった/読んでなかっただけで、おもしろいマンガはまだまだたくさんあることも、この図録でよくわかったから、これからはもっと積極的に読むことにしようっと。

 

追伸/この図録には、講談社、小学館、集英社、白泉社のベテラン編集者のインタビューも載っている。その全員が、大手出版社に(恐らくは新卒の)正社員として入社したエリートサラリーマンであり、人事でたまたまマンガの編集部に配属された、という経歴を持つ。日本人のマンガ読みの私は「そういうもの」と思ってこれまで特に意識していなかったけれど、こうして4人のインタビューが並んでみると、マンガ好きが高じて編集者になった人がいないことへの違和感が募った(たまたま配属されただけの男性サラリーマンが、少女マンガの女性作家さんにダメ出しとかしてたんだよねえ)。ま、これはあくまで昭和の話であって、令和の今は事情が違うだろうけど。