「踊るトレンチ」またの名を「前田トレンチ」 | 黒服ワーク

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キャバクラで働く黒服の仕事をご紹介しています

先日、ホールをラウンドする時には

ランウェイを歩くような気持ちで

という投稿をSNSで見つけ

懐かしい気持ちになり

かつて自分が教わったことを

一つ一つ思い出していました

 

 

私はとても幸いなことに

今のINSOUグループの母体

オスカーグループの名駅店を

若くして託された経歴を持つ

前田さんにキャバクラの

いろはを教わりました

 

 

前田さんのホールでのテクニックは凄まじく

服装から身なり、歩き方、

そして曲がり方までもが洗練されていました

 

 

前田さんのトレンチ技術はまさに一級品で

通称「前田トレンチ」と言われ

前田さんにかかれば

「トレンチが踊る」とすら言われていました

 

 

実際前田さんはトレンチに

どれだけ多くの物を載せても

トレンチの高さが変わらない

いわゆる「ハイトレンチ」

3本指で必ずキープしていました

 

 

また、灰皿の回収一つとっても

移動の際に灰皿に触れず

ラウンドしながらトレンチを

傾けるだけでトレンチ上の

灰皿を動かしていました


 

そのため回収物がある卓に

着いた時にはトレンチ上で

新しい交換物が手ごろな位置に

移動しており卓でのスムーズな入替と

無駄のないラウンドがホールで

毎晩披露されていました

 

 

そして何より前田さんのトレンチ技術の

最たるは『クラッシュ』を

しないことにありました

 

 

『クラッシュ』とはトレンチに物を載せ過ぎたり

ホステスや他の黒服とぶつかって

ホールでひっくり返すことを言います


 

長くウェイターをやっていれば誰でも

クラッシュなんかしなくなる

と経験者の方なら思うでしょう

 

 

しかし、前田さんは

人とぶつかってもクラッシュしません

日々の鍛練によってフィジカルが強い

という理由もあるのですがバランス感覚が

あまりに凄い為トレンチに物満載の状態で

人とぶつかり、大きな物音がしても

トレンチ上からは何一つ物が

落ちはしませんでした

 

 

そんな前田さんの有名な逸話に

空中でお酒を飲んだという話があります

 

 

ある晩、トレンチにドリンク満載で前田さんが

卓へ入った際にホステスの1人が誤って

急に立ち上がってしまい、がしゃーんという

大きな音がホールに響き渡りました


 

流石の前田さんも遂にクラッシュしたか

と思い数人が慌ててホールに駆け出しましたが

流石は前田さん、ドリンク満載のトレンチが

あれだけ大きな音を立てながらも無傷でした


 

そんな前田さんの技術にお客さまからは

拍手が起こり、流石は前田さんと

皆が感心していました

 

 

しかし、この卓に付いていたトップホステスが

後ほど前田さんはぶつかった時にトレンチを

ひっくり返さないどころかぶつかった衝撃で

空中に浮かびがったカクテルの滴を空中で

漫画のように食べていた!

と証言していました

 

 

前田さんに真偽のほどをたしかめると

得意げに「仕事中に飲む酒は美味いね」

語ってくれました


 

『トレンチが踊る』とはまさにこの事かと

皆が驚愕していたのを今でも鮮明に覚えています

 

 

そんな前田さんも新人の頃は

トレンチに水を張り溢さいように

ラウンドする訓練や4リットルの

鏡月のペットを2本トレンチに載せ

ハイトレンチをキープする訓練を

営業前に1時間~2時間程

行っていたそうです

 

 

そんな前田さん曰く

キャバクラ全盛の後期

トップホステスに認められないと

どれだけ優秀でもつけ回しに

昇格は出来なかったそうです

 


そして、ウェイターとして誰よりも

優秀な者だけがつけ回しを行う

資格を初めて得られる

しかし、毎晩40人程のホステスを

捌く有名店のつけ回しは結果に厳しく

売上が悪ければすぐにウェイターへ

降格となったそうです

 

 

そんな厳しい時代と

優秀な先輩たちに

育てられたからこそ今の自分がある

 

 


トレンチを手足のように扱う

前田さんからは他にも

・仕事中にお酒を頂いても営業中は絶対に酔わないこと

・ラウンド中は常にモデルウォークであること

・靴底は必ず皮のものにして曲がる際には直角で曲がること

などを教えて頂きました

 

 

しかし、修練の差なのでしょうか

私はトレンチ捌きに関して自信があります

ですが、未だトレンチを躍らす程の

腕前とはいきません

 


その後、いくつかの店やグループを

渡り歩きましたが前田さんほどの

ハイトレンチで美しくラウンド出来る

ウェイターには未だ出会えていません