あいかわらず2024年になっても映画館にはあまり行かないようにしている。

とはいえ、ライブ・ビューイングを見にいったり、後日書く予定だがえんえんと視聴者を待たせ続けたテレビアニメの劇場版を見に行ったりしていた。

しかし、定期更新するほどの頻度では行かなさそうなので、今年は固定タイトルは使わずにその時そのときで思いついたことを書いてことにする。

 

で、今月ハンガリー生まれのアメリカの作家の三部作の小説を読み終えたので、それに関連して書く。

〈アテナ・クラブ〉シリーズの一作目二作目1二作目2三作目だが、これらの小説では有名な(とはいえ知られている度合いは作品によって異なるが)小説の主人公達の娘が協力して悪の組織(というかある組織に属するマッドな感じの人たち)の野望と立ち向かう。彼女たちは有名な小説に実際に登場していたりもするし、またおそらくいてもおかしくはない存在であったりもする。

ネタバレにならないようにどの小説かは詳細に書かないようにするが(もっとも、早川書房の本の常として冒頭で彼女たちの来歴は説明されてしまっている……)、タイトルに出ているメアリ・ジキルはスティーブンスンの「ジキル博士とハイド氏」のヘンリー・ジキルの娘である。原作には彼に子どもがいるということは書かれていないものの、逆に子どもはいないとも書かれていないので、娘がいてもおかしくはないわけである。また原作との接続として、ジキル家の執事(既に亡くなっている)の妻の家政婦や、ジキル氏の弁護士の事務所で働いていた男が弁護士事務所を引き継いでいて登場したりする。

彼女達や彼女たちの家族および敵が登場する小説は19世紀後半または20世紀初頭に書かれており、このシリーズはその時期の社会では常識だった不平等・偏見を描くというところに主眼があったりもする。

テーマというだけではなく、オリジナルの小説ではふれられていない19世紀後半の社会状況(このシリーズでは女性の権利を求める運動)が背景になっているのもニヤリとさせるところである。

 

そのあたりのことは実際に小説を読んで楽しみつつ確認してもらいたいのだが、ここでは様々な作家が書いた小説に登場する様々な登場人物を同時代人として出会わせるアイディアについて考えたい。

 

同時代を生きた実在の人物たちを出会わせるということはいわゆる時代小説・歴史小説でよく見られるアイディアだが架空の人物でそれをやるというのは、たとえばこちらのイギリスのコミックが早そうだ。

The League of Extraordinary Gentlemen

とはいえ、第一作が1999年なのでまだ四半世紀くらいの歴史しかない。

SF小説・冒険小説・ゴシックロマン・ミステリといった様々なジャンルの重要人物たちが協力し合ったりしなかったりする小説というのは魅力的である。さらに〈アテナ・クラブ〉と同様に、オリジナルの小説では背景に沈んでいる社会状況(こちらは植民地問題)を前景にしているのも読み所となる。

 

このあたり日本の小説ではどうなるのか、と考えてしまう。

ミステリの方では、様々な作家が生み出した名探偵が一堂に会すという小説が1972年に書かれていたりするし、そちらにも登場する明智小五郎は最近でも金田一耕助と共に活躍する小説が書かれたりしている。

 

また、ゲームでは「スーパーロボット大戦」があるが、こちらはロボットアニメジャンルに限られるし、また時代とか舞台とかを合わせることもしていない。

 

様々なジャンルの小説の登場人物たちを集めた小説というのは今のところ書かれていないようだ。

 

Fateシリーズのように実在の人物と架空の人物とを集めてしまったものはあるものの、彼らが生きていた時代で生きさせるものではない。Fateが切り開いた有名人物対決・戦争ものの中にも、彼らが生きていた時代から切り離されているものがほとんどで歴史物のとして醍醐味は無かったりする。

 

このあたり、誰も知っている架空の人物というのが少ないということもあるかもしれない。戦国時代だと真田十勇士や風魔小太郎といった忍者系がいるが、近代だとかなり難しい。

たとえば明治時代の小説で、今の人でも名前を挙げたらすぐわかる登場人物といっても思いつかないわけです。1970年くらいまでなら貫一とお宮とか、早瀬主税とお蔦とか、浪子と武男とか、新派の劇や映画を通して知られている名前があったが、彼らも2020年代には知名度は低くなってしまっている。

 

逆に1960年代以降のマンガやアニメの登場人物であれば、いくらでも知られているのだが、それらは著作権の縛りがあって自由には使えませんからねえ。

 

逆に一般的知名度は低いが、文学史上で有名な小説は読んでいる読者は知っているという縛りで登場人物を揃えた小説を書くのはあるかもしれない。

内海文三と太田豊太郎と美登利と瀬川丑松と早月葉子がアメリカで出会う小説とかどうですか。