Heaven+Hell

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機材のレビュー等

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皆様、すいません
いつもながらかなり間があいてしまいました

前回のブログで、次はすぐにアップする、と書いていたにも関わらず・・・
(もう、何について書こうとしていたのかすら覚えてない有様)

さて、気を取り直して今回のレビューですが
「世界最高のマルチバンドコンプ」と言われているMASELEC / MLA-4になります
(ちなみにエクスパンダー部はまだ全然触っていませんので、今回は触れません)



実は私、マルチバンドコンプ大好きでして、プラグインはかなり使っていたんです。
Waves /C6、Izotope / Ozone 8等の定番はいうに及ばず、最近メインで使っていたVengeance / VMS Multiband Compressorなどなど
設定の研究もかなりやりました

でも、多分TUBE-TECH / SMC2BMや、MASELEC / MLA-3(当時は4はまだ出てなかった)はすごいんだろうなあ、とおぼろげに思っていたものの、値段の高さや、バンド数の少なさ(プラグインは4~6バンドのものが多いですが、上記ハードウェアはどちらも3バンド、ちなみにDrawmerの1973も3バンド)から、プラグインの方がバンド数多いし、と無理矢理に自分を納得させていた日々でした

しかしある日、スタジオで開催されたセミナーでちょこっとMLA-3を触ったら、あれ?こんな設定決まるの早いの?っていう位すんなり設定が決まり、プラグインのマルチバンドコンプで感じていた違和感や、物足りなさが全くなかったんです
もちろんこれでバンド数がもっとあれば、とも全く思いませんでした

その日から、いつかはMLA-3!と思い続けてはや幾年
ようやくと清水の舞台から飛び降りる覚悟ができたので入手した、というわけです
(ま、値段だけで言えば以前レビューしたManley Laboratories, Inc. / Mastering Version SLAM!の方が高いんですが)

さて、MLA-4というよりハードウェア全般(特に良いハードウェア)の話になるんですが、ハードウェアとプラグインを比較すると、音ももちろん違いますが、音決めの速さが違うんですよね
プラグインでカチカチと設定するより、ハードウェアでグリグリやってる方がいい感じの音になるまで時間がかからないというか(マスタリングの機材はツマミもカチカチだろ、とかいうツッコミは置いておいて)

特にマルチバンドコンプはパラメーターの数が膨大な事もあり、いつもプラグインで処理していると時間がかかるなあという印象を持っていました
ところが、MLA-4を入手してからは、思ったような音に仕上げるまでの時間がかなり短縮されています

あと、かなり深くかけても潰れた感じがしない、というのも大きな特徴でしょうか

昨今は音圧戦争も佳境を迎え、ある程度は音圧上げて当たり前の時代ですから、マルチバンドコンプがマスタリングに占める比重もかなり上がっています
そんな中、MLA-4はスピードで音決めできるならむしろ安いかも!と思ってしまいました

マスタリング用の機材ですから、ガッツリ味付けするような機材ではないですが、エンジニアの思い描くサウンドを実現するという意味では、かなり自由度が高いツールです

なかなか文字では説明しにくい機材ではありますが、Heaven+Hell mastersで立ち合いでいらっしゃる事などあれば、是非その効果を体感してみてください






 

めちゃめちゃ間があいてしまいましたが、今回はRupert Neve DesignsのPORTICO II Master Buss Processorです。

mbp


実は、発売した時に結構真剣に買うか検討してた機種だったんですが、その時は結局買わず、今年に入ってから購入しました。

Manley / Slam!のマスタリングバージョンを購入した時も、候補機種に入っていたので3回目の正直といった感じです。

この機種の構成としてはコンプとリミッターのダイナミクス2段に加え、Silkによる倍音付加とM/S処理といったわりとなんでもできるゴージャスな仕様になっています。

コンプとリミッターの2段という仕様はNeve / 33609シリーズでもおなじみの仕様ですが、Slam!や以前にレビューしたShadow Hills / Mastering Compressorも同じように2段構成になっているんですが、コンプでアタックをつけてリミッターで潰すという事が可能です。

ちなみにコンプ部のアタックは
Variable from 20 mS to 75 mS (0.1mS with “FAST”)
という記載があるんですが、どうやって0.1mSのFASTという設定にするのか未だ不明・・・
歌録りのとき1176が無いときとかにも使えるって事なんでしょうか?

Slam!を購入したときに、候補となっていたにも関わらずなぜ購入しなかったかというと
純粋なコンプ・リミッターとしてはちょっと音が素直すぎて音に色気が感じられなかったから、というかあまりにSlam!の音が良すぎて他の機種が霞んで見えてしまった、という感じでした。

その後、知り合いのスタジオでわりとじっくりPORTICO II Master Buss Processorを触る機会があったので魅力を再発見して購入に至ったというわけです。

基本的なコンプ・リミッターとしては上にも書いたように素直な出音なんですが、わりと極端な設定をしても破綻せずかかるところはさすがNeveさん印という所でしょうか(メインの設計はSlam!と同じくCraig "Hutch" Hutchison氏という話ですが)。

コンプ・リミッターとして出音を素直に作っておいて、色づけとしてはSilkで行う、というのが基本的な考え方なのだとおもいますが、このSilkも派手に色づけされるというよりかマスタリングでも使用できるような感じで留まっているところが好感をもてます。安心して2mixにかけていける感じです。

また、今流行り、というより既に定番となっているM/S処理やパラレルコンプレッションにも対応して機能としてはテンコ盛りという感じです。
パラレルコンプレッションに関しては今や色々なプラグインに搭載されてますが、アナログハードウェアだと意外と無かったりするので、録りやTDで使用する際にもかなり威力を発揮してくれると思います。

パラレルコンプレッションに関しては、以前に
という記事を書いておりますので、興味がある方はそちらも読んでみてください。

ちなみにHeaven+Hell masters常設機材の2台、このPORTICO II Master Buss Processorのコンプ部とSlam!のFETリミッター部を組み合わせると大抵の場合それだけでかなり追い込めます、いままで試した中で最強の組み合わせです。(もちろん曲によってはSlam!のELOPを使用する事もありますし、PORTICO II Master Buss Processorのリミッターを使用する事もあります)

購入するにあたって吟味していた際、同じような機種を2台入れて意味あるのかな、とか色々考えたんですが、結果的に4台のダイナミクスセクションを組み合わせて使い分けできるという事になり、かなり幅が増えました。

他にもレビューしたい機材がありますので、次回はここまで間をあけずに更新できる予定です。
最近のミックスではサイドチェインが多用されており、サイドチェインに特化したプラグインも多数でています。
例えば
・Nicky Romero / Kickstart
・Cable Guys / VolumeShaper 4
・Xfer / LFO Tools
・Vengeance / VPS Multiband Sidechain3
等がありますし、サイドチェイン対応のコンプも数多くあります。

サイドチェインの目的としては
・キックをトリガーにしてベースやシンセをダッキングさせる
・ドラムをトリガーにして上モノに薄くかけ、ドラムの抜けを良くする
・ボーカルをトリガーにしてディストーションギターに薄くかけ、ボーカルの抜けを良くする
・ボーカルをトリガーにしてボーカルのディレイ成分にかけて、ごちゃっとしないようにする
・ナレーションをトリガーにしてBGMにかけ、ナレーションが入ってきたときにBGMの音量を自動的に下げる

等など、ここでは挙げ切れないほど色々な使い方があります。
やりすぎると不自然な感じになったりしますが、上手く使うと分離の良いハイファイなサウンドつくりに一役買ってくれます。

コンプでサイドチェインをする場合にはわざわざプラグインを買わなくてもDAW標準のコンプがたいていサイドチェインに対応していますので、まずはそれを使ってみるのが良いと思います。
薄くかける場合にはレシオは2:1などの控えめ設定、アタック早め、リリースも早めから試してみてください。

EDMの派手なリードやベース等をダッキングをさせる場合は、最初に挙げたような専用プラグインが便利ですが、実は持ってなくても同じような感じでかける事が可能です。

sidechain


スクリーンショットを見ていただければ何の事はないんですが、ボリュームオートメーションを書いているだけです。
オートメーションを書くのは面倒臭いとおもうかもしれませんが、1つ書いてしまえばあとはコピー&ペーストでいけますので、実はやってみると意外と面倒くさくありません。
しかも、ダッキングから戻るカーブも自在に描けますので、意外と詰めやすくて便利です。
効果を薄くしたい場合はオートメーションを変更してもいいですし、別のバスに送ったサイドチェインがかかってないものを混ぜていけば効果は薄くなっていきます。
専用プラグインを買うのもいいですが、工夫すれば同じ効果はだせますので一度やってみるのも良いかと思います。

サイドチェインは上手く使うと非常に効果的ですので、試行錯誤してどう使えば効果的なのかを研究してみてください。

ステムとは何か、という方もいらっしゃると思いますが、ステムはマスタリングに出す際のファイルの形式になります。
とはいえ、何も難しい事はなく、ファイル自体はWAVやAIFFといったファイルになります。

では、何が通常の2mixファイルと違うのかというと、2mixファイルが1つのファイルにリズム、ベース、ギターやボーカルなどが全部まざっている状態に対し、ステムはリズムで1ファイル、ベースで1ファイル、ギターで1ファイルといったようにいくつかのファイルに別れている状態になります。
グループごとにファイルをわけてある、と思って頂いて間違いありません。

あまりファイルを多くするとまとめる際に煩雑になったりするので
・リズム
・ベース
・ギター
・ピアノ
・ストリングス
・ブラス
・その他上モノ
・メインボーカル
・コーラス
といった程度に別けるのが一般的です
もちろん楽曲ごとに使用する編成が異なってきますので、ステムの別け方も変わってきます。

例えばクラブ系のサウンドを作る場合には
・キック&ベース
・その他のリズム
・シンセ
・リード
・メインボーカル
・コーラス
といった別け方になったりします。

ステムを使用するメリットですが
例えば、ミックス完了からマスタリングまで時間があった場合、聴き返してもう少しボーカルを出したい、といった場合に簡単に対応可能です。
また、マスタリングエンジニア側でもうちょっとリズムの抜けを良くしたい、といった場合でもステムで受け取っていれば2mixでの作業よりもより効果的に処理ができます。

バンドの場合、メンバーに渡してマイナスワンとして使用して練習したりもできますし、ステムで書き出しておいて損になることは無いと思います。

実際にステムを作成し、DAWに読み込むと画像のような状態になります
ファイルの頭が揃っていて、フェーダーは0dbの状態になっているのがおわかりいただけるかと思います。

stem


注意点としては、センドで送ったリバーブやディレイをそれぞれのファイルに含まれるように書きだす事です。
最近ではステムで書き出す事を前提としてミックスする場合も多いのでリバーブをグループごとに使用したり、インサーションでかけたりしてステムを書き出しやすいように作業する場合もあります。

2つ目の注意点としては、各ファイルをDAWの空のプロジェクトに読み込んだ時点で何もしなくてもバランスの取れた状態にする事です。
ミックス完了の状態を維持するだけですので、さして難しい事ではありませんが、書き出す際に1つ1つのファイルで音量が小さいからといって音量を上げたりしないようにしてください。

また、ステムで入稿される場合も2mixも併せてお送りください。

先ほども書きましたが、ステムを作成して損になる事はありませんので、是非トライしてみてください。ご不明な点などはHeaven+Hell mastersのサイトより遠慮なくお問い合わせ頂ければと思います。


今回はいつもと違った感じになるのですが、Heaven+Hell players所属の売れっ子ギタリスト吉田穣が新しいアコギを買ったということで、Cubase付属のマッチングEQであるCurveEQを使って
「ピエゾで録った音をあたかもマイクで録ったような音にするプリセット」
を作ってみようという話になり、さっそくやってみました。

要するにUAD-2で出ているSound Machine Wood Worksみたいなもんだとおもってください。

いきなりですが、とりあえず元のピエゾのライン直の音を聴いてみてください
演奏はもちろん吉田穣
https://soundcloud.com/heaven_and_hell_masters/no-plugins
どうでしょう、いかにもピエゾ、という感じの音ですね
(ブログにSoundCloudプレイヤーを埋め込めなかった不甲斐ない自分・・・すいません)

では、作成したCurveEQのプリセットを使い、さらにUAD-2のOceanWayをかけた完成形がこちら
https://soundcloud.com/heaven_and_hell_masters/curveeq-oceanway
どうでしょう?かなりいい感じになったんではないでしょうか?
とりあえずデモとかで、マイクを立てるのはめんどいけどピエゾの音はちょっと、という時には結構使える感じまではもっていけたと思います。

CurveEQのみだとこんな感じです
https://soundcloud.com/heaven_and_hell_masters/curveeq-only

当初はCurveEQのみでいけるかな、という予測だったんですが、やはりOceanWayの効果も大きいですね。
OceanWayのほうのセッティングはプリセットのRE-MIC OWA Guitarをベースにこんな感じです



このCurveEQのプリセットはサーバーに置いておきますので、ご自由にお使いください

使い方はCurveEQを開いてLOAD CSVをクリックして、解凍したプリセットファイルを読み込むだけです。
Cubaseには7から付属していますが、Voxengoのプラグインなので、持っていれば他のDAWでも使用可能です。

Heaven+Hell playersでは、アコギ以外にもエレキギター、ベース、ピアノ、ストリングスアレンジメント等をオンラインで承ります、是非WEBを見てみてください。

http://www.heavenandhell.jp/players/
今回はShadow Hills / Mastering Compressor(以下SHMC)のレビューです。

SHMC


国内に代理店がないので、なかなか目にする機会がないのですが、以前デモ機をお借りする機会があって1週間程使用しておりましたので、レビューしてみたいと思います。

Manley / SLAM! Masteringを導入する際の候補にあがっていて、結局SLAM!を導入したので、SHMCは購入しなかったのですが、もちろんこれはこれで超高級機種ですから悪いわけもなく、どちらが好きか、どちらが使いやすいか、といった感じの選択の結果なわけです。

SHMCはSLAMと非常によく似た構成をもっていて、オプティカル・コンプレッサーの後段にClass-Aのディスクリート・VCAコンプレッサーという構成になっています。

スローなオプティカルで緩やかにコンプレッションした後に速いVCA・コンプレッサーで潰して音圧を稼ぐ、という手法を想定していると思います。

最大の特徴はアウトプット・トランスが3種類選択可能で、最終的な色づけが可能、という所だと思います。
もちろんマスタリングを想定しているので、ガラっと変わるような色づけではないのですが、面白い機能だとは思いました。

個人的な感想としては、これはマスタリングに使うのではなく、バスコンプとして使うと最高だな、と。
それが非常に感じられたのはハイパスサイドチェインなんですが、オンにすると一気にガツっと低音が出てファットになります。
ミックスバスやドラムのバスにかけてそのサウンドを聴きながらミックスしていくとすごいカッコいいサウンドになりそうなんですが、マスタリングで使用する際には元音と変わりすぎてかなり使いにくいんです。
アウトプット・トランスの変更による色づけ、とかどう考えてもマスタリングというよりミックスの段階で使いたい機能なんですよねえ、自分の曲を自分でマスタリングする場合とかなら良いのかもしれませんが。

SLAM!を導入した際には、あくまでマスタリング用のコンプを導入しようとしていたのでSHMCはちょっと違うなあ、と思ったんですが、バスコンプとして考えるとこの機種を超えるコンプはちょっと見たことがないという位優れたコンプでした。
値段を考えると当然ですが(笑)

なんせこのスチームパンクテイスト満載の見た目も最高なんですが、ネーミングでマスタリングコンプと謳っている事により、意外と損をしているんじゃないか、という気もしています。

1週間程度しか使用していない状態でのレビューなので、掘り下げられていない所もあるとおもいますが、購入を検討されている方のお役にたてば幸いです。
低音が足りてないと、スカスカな迫力のない音源ができあがります。
逆に無闇やたらと低音を出していくとモワモワとしたヌケの悪い音源ができあがります。
そんな重要な役割をもつ低音ですが、今回は足りない低音をどうやってブーストすればいいのか、というお話です。

低音ブーストする、といえば真っ先に思いつくのがEQでブーストする方法です。

EQで上手に低音をコントロールする方も非常に多いスタンダードな方法ですが、ちょっと油断すると低音がモワっとしてしまいがちな難しい方法とも言えます。
逆にいえば、EQで低音を自在にコントロールできるようになれば一人前、とも言えるかもしれません。
キックやベースのような低音楽器の低音をブーストする際にはシェルビングではなく、ピーキングタイプでコントロールするほうがモワっとなり難いです。
かなり大胆にブーストしなければいけないような場合にはシェルビングにローカットを併用すると上手くいく場合があります。
PultecタイプのEQもよく使用されますが、Pultecタイプは低音はシェルビングなので、Attenを使って上手くかけないとモワっとします。
逆に言えば、Attenを上手くつかうとカッコよくブーストできるので、PultecタイプのEQが不動の人気を誇っている、という事だと思います。

次に思いつくのが、Waves / Maxx Bass、Renaissance Bass、Lo-Airなどの低音エンハンス系プラグインですね。
いま挙げた3つのプラグインも実は役割が違うのですが、それ以外にもNomad / CosmosやVoxengo / LF Max Punch等色々なメーカーからプラグインが出ています。


MaxxBassは元の低音と、生成された倍音のバランスを変更できるプラグインで、倍音を低音の主役にすることでモワつきをなくしつつ、低音感を維持するといった使い方が可能です。


Renaissance Bassは元々の低音は変更できず、単純に生成された倍音が加算されます。
LoAirは元の低音と、1オクターブ下の低音のバランスを変更できるプラグインで、各々の低音にサチュレーションとリミッターが入っています。
このようにMaxx BassとRenaissance Bassは兄弟のような関係で、パラメーターはMaxx Bassの方が多いので、そちらを使う事が多いですが、シンプルに低音感を足したいときはRenaissance Bassも役に立ちます。


Lo Airはちょっとかかりが特殊ですが、うまく使うと低音をドライブさせてカッコよくかけられたりしますので、ソースによって使い分けてみてください。

LoAir



そして、3番目の手法ですが、トラックを複製して、片方のトラックをハイカットします。
ハイカットした方のトラックのフェーダーを一端下げて、そこから徐々に上げていく、という方法です。
要はパラレルEQなんですが、Dry/WetコントロールをもつEQがなかなかないのと、Dry/Wetよりラクにコントロールできます。
元の状態の低域成分を純粋にブーストするので、EQでブーストするよりも変なピークがなく、コントロールしやすいのが特徴です。
トラックが2つになってしまうので、その後に違うプラグインをかけたりする場合などはバスにまとめたりといった手間がかかるのが、難点といえば難点です。

ですが、上記のパラレルEQの弱点を克服した方法もあります。
それはマルチバンドコンプの低音部以外をバイパスし、コンプをかけない設定で(レシオ1:1、アタック最遅、リリース最速)、低音部のゲインのみを調整する方法です。


上記のパラレルEQのほうが感覚的に細かく調整できる感じはあるのですが、効果はほぼ一緒です。トラックが複数にならないので、その後の処理などはこちらの方がラクですね。
コンプなしの各バンドのレベルだけをコントロールするプラグインがあれば欲しいんですが、そんなマニアックなプラグインはないみたいですね(笑)

色々な方法を書いてまいりましたが、それぞれの方法によって得られる効果が違ってきて、ソースによって必要な処理も異なってきます。
低音を単にブーストしたいのか、ドライブさせたいのか、レンジ感を伸ばしたいのか等、を決めてから処理をしていくと目的の音に近づけると思います。

どの方法を使ってブーストしてもやりすぎはモワついた音源を産み出すだけですので、低音のブーストはローカットとセットで行うもの、という認識を持って処理してみてください。

今回はEQのプラグイン一つだけという実に地味なレビューですが、Massenburg DesignWorks® MDWEQ5 Parametric EQ Plug-Inのレビューです。
UAD-2版しか使用しておりません。AAX DSPやNative版に関しては解りかねますのでご了承ください。

最初からこんな出だしも何ですが、このプラグインは凄いです。
どう凄いのかはスクリーンショットを見ればわかる人にはすぐわかるのですが、いかがでしょうか?

MDWEQ5


そう、周波数が41khzまで設定可能なんです、これは他のプラグインではちょっと見たことがない数値です。
一応Maag EQ4もAirBandが40kまで設定可能ですが、その他にプラグインであったかな・・・?という感じです。
(と思ったんですが、以前レビューしたHOFA / IQ-EQも40khzまで設定可能でした。)

正直いって、このMDWEQ5、最近のプラグインEQと比べて使い勝手は良いとは言えないのですが、どう使い勝手がよくないのかというと

・グラフィック部分でパラメーターが触れない
・アナライザーがついてない
・ハイパスローパスが24dbまでしかない
・ハイパスローパスの24dbはバンド5(一番右)専用、その他のバンドは12dbまで

特に24dbのカットがバンド5専用なのはとても謎、ローカットで使いたいんですけどねえ
そして出来ればハイパスは36db、できれば48dbまでつけて欲しかった・・・

しかし、それを補って余りある音の良さ、そして高域の自由度は他に類を見ないプラグインですので、かなり多用するようになりました。

特に高域が41khzまで設定できますので、96khzのプロジェクトでも高域がフルに触れ、Air感のコントロールも自由自在。Maag EQ4のAir Bandより自由度が高いです。
歌やピアノ等、超高域をコントロールする事で痛くならずにヌケ良くできます。

また、その部分を抜きにしてもとてもクリーンで、どういったアルゴリズムなのかわかりませんが、触っているとどのポイントにEQすればいいかが非常にわかりやすいです。
Oxford EQ持ってるし、いらないかなあ、と一度は思いましたが使ってみてわかるこのEQの凄さ(Oxford EQも良いEQなので使い続けますが)、これぞまさにハイレゾEQという名がふさわしいと思います。
今回はボーカル録音時のファーストチョイスコンプ、Retro / 176です。

176


このコンプは元々Universal Audioから発売されていた176という同名のコンプのクローンです。Universal Audioの176は非常にレアで、海外では8000ドル程度で取引されていました。

その名前のとおり1176の前身とも言えるコンプですが、1176と違い真空管コンプになっていて、音的にはCL-1Bと1176の中間とも言えるサウンドです。

音を聴くまでは同じビル・パットナム設計の真空管コンプという事でLA-2Aに近いのかな、と思っていたんですが、LA-2AよりはCL-1Bに近い感じがします。
CL-1Bも真空管タイプですが、オプトなので本来はちょっと違う感じなはずなのに不思議な所ですが、アタックタイムなどを比較すると見えてくるものがあります。

1176AE
Attack 0.02~0.8ms(20~800μs)
SLO Attack mode 10ms(10000μs)
Release 50~1100ms

176
Attack 0.1~2ms(100~2000μs)
Release 27~572ms

LA-2A
Attack 10ms(10000μs)
Release 500~5000ms

CL-1B
Attack 0.5~300ms(500~300000μs)
Release  50~10000ms

こうして見るとCL-1Bはかなりセッティングが広くて使いやすそうですね、スタジオで定番機種になるわけです。俄かに欲しくなってきました(笑)

1176もスタジオ定番機種ですので、当然非常に使いやすいのですが、もうちょっと真空管的なテイストが加われば、という際には176はバッチリなのですが、1176は上記のアタックリリースタイムを見てもらえるとわかるように、数あるコンプの中でもかなり速いコンプであり、真空管コンプである176はそこまで速いセッテングは不可能なので、HeavenHell mastersに両機種を常設しており、使い分けができるようにした所以となります。

パラメーターをフルコントロールできる真空管コンプは意外と珍しいので、非常に重宝しており、以前このブログでもレビューしたSSL / SuperAnalogue ChannelでEQをかけ、176を通して処理するとぐっと色気がでて、かなり完成形に近い形まで追い込めます。
操作性が1176に近いので、音決めが早いのも利点です。

また、アタックとリリースを遅めにして、本当に緩くかけてから1176等の速いコンプで整える、といった手法も可能です。

1176ほどガッツはでませんが、色気があり、気持ちの良いコンプです。

今回は珍しくプラグインのレビューで、HOFA-Plugins / IQシリーズを取り上げてみたいと思います。

Heaven+Hell mastersではHOFAのDDPシリーズの日本語CD-TEXT関連のベータテストを行っていたのですが、それ以前からプラグインも知っており、最近では賞も取ったりしてるのでひそかに注目していたのですが、実際に使ってみるとかなり良く出来ていて、出音もかなり良いので、すっかり多用するようになってしまいました。

このIQシリーズにはいくつかのプラグインがあるのですが、まずIQ-Limiterから。

IQ-Limiter

このLimiterはいわゆる1176的なリミッターとは違い、どちらかと言えばWaves /Lシリーズに代表されるようなマキシマイザーと言う方が正しいと思います。
GUIを見てもらえればわかるのですが、パラメーターも非常に少なく、スレッショルドは固定、インプットでかかりを決めるタイプで、後はアウトセリング(マージン)とディザーくらいしかありません。
こういうパラメーターが少ないものは、かけた時の出音勝負なんですが、かなり潰しても音の破綻が少なく、平面的になりにくいのでこのIQ-Limiterはかなり優秀です。

続いてはIQ-Compです。

IQ-Comp

このコンプの特徴はコンプによって音に色づけが出来る事。
基本的にはあまり色づけの無いトランスペアレントなコンプなんですが、右下のFlavourの箇所でスレッショルドカーブを変更して色づけを加える事が可能です。
スクリーンショットではWarmを選んでいますので、スレッショルドカーブが高域がキツめ、低域にいくにしたがって緩くかかるようなカーブになっているのがわかると思います。
このセッティングでは高域をよりコンプレッションする事により、高域をちょっと抑えてWarmな感じを出す、という事です。
このカーブは自分でも書く事ができますし、6種類のプリセットからも選択可能です。
IQ-Comp自体がかなり出音的にも優秀なのに加え、MS処理、サイドチェイン、オーバーサンプリング、パラレルコンプレッション等思いつく限りのパラメーターは搭載されていますので、このコンプ1つで大抵の処理は出来ると思います。

そして、IQ-EQ。

IQ-EQ

これも非常に多機能なんですが、出音的にはコンプやリミッターと違い、かかった!という感じでかかります。
良く言えばかかりが良い、悪くいえばEQくさい感じになります。
各バンドのダイナミクスがついているので使い方によっては面白い効果が出せますね。
ちょっと個人的には出音のかかった感がハマるときとハマらない時があるので、出番は多くありません。

続いてはIQ-Analyzerです。

IQ-Analyzer

アナライザーなので音は全く変わりませんが、このアナライザーの最大の特徴はリファレンスのオーディオファイルと比較できる事。
この機能をもったアナライザーはなかなかないので、これは重宝しますね。
ちなみにためしにFlacを入れてみたんですが、問題なくアナライズできました。

最後に登場するのがIQ-Reverbです。

IQ-Reverb

このIQ-Reverbは非常に出音が気に入っていて、かなり多用しています。
中域~高域の解像度が素晴らしく、スーっと抜ける気持ちいい残響を得られます。
IRとデジリバ両方のセッティングが可能で、パラメーターも豊富なので、このリバーブ1つで全てを賄う事も余裕で可能です。
実際、個人的には他のリバーブを挿さない事も多くなりました。
また、GUIの操作性が素晴らしく、直感的にパラメーターを操作できるので、元のプリセットをどんどんエディットして自分のオリジナルプリセットを増やしていく事も可能です。
残響成分をEQではなく、帯域ごとにエディットできるあたりリバーブマニアの心をくすぐるのではないでしょうか?

HOFAのプラグインはどれもGUIデザインが優れていて、マニュアルを読まなくてもすぐに使う事ができて、直感的な操作が可能です。
プリセットも良く出来ているので、イージーに使ったり、パラメーターをいじって拘ったりが自在に出来るのでスキルアップにもつながるかと思います。
1つあたりの値段がわりと安いのも魅力ですね。
日本ではまだ知名度が低いメーカーですが、これから伸びてくるポテンシャルを感じました。