自転車の話をします。

最近のわたしはやたら自転車に乗りまくっています。家の周辺でも乗りまくりますし、電車に乗って遠出した先でレンタサイクルを借りて乗り回すことも気に入っています。こんなに自転車が好きになったのはいつの頃からでしょう。

自転車好きにも色々あると思いますが、わたしは特に車体そのものにさほどの興味があるわけではないので、特別に何かカスタマイズしたりメンテナンスしたりすることはないです。だから、いつもわたしの自転車は錆びてボロボロです。

最近では新しい町に引っ越すとまずは自転車を買います。つまり、住んだ町の数だけ自転車を買っては捨ててきているわけです。

東京に出てきた最初の頃はまだ自転車を持っておらず、実家を出てから初めて自分のお金で自転車を買ったのは上京して1年半程経った頃、3件目のアパートに引っ越してすぐのことでした。

わたしには今でもなんとなく節約が苦手なところがあって、別にブランドものが欲しいとかいう気持ちは全然ないのですが、安いものを探すために頑張る労力がめんどくさいので、なんとなく最初に目についたものの中から選んで買ってしまうことが多くなっています。

その最初の自転車も、今となってはスーパーやホームセンターで買えば安くで済んだと思うのですが、引っ越したばかりでどこにそういう店があるかも分からなかったので、駅とアパートの間で見かけた個人経営の自転車屋にふらっと立ち寄り、その中で比較的手頃な価格の赤い自転車を選んで、そのまま支払いを済ませて乗って帰ってきてしまいました。

おそらく2万円台くらいだったと思うので、高過ぎるということもないですが、その後いつも1万円前後の自転車に乗っていることを考えると、わたしの人生においては唯一の高級車と言える1台でした。

乗りやすく、それなりに見た目もよく、気に入っていたと思います。

その後、なんとなく時間が流れて大学を卒業してしまい、一切の就職活動をしなかったので生活を続けていく目処も立たず、家族に説得もされ、なんとなく不本意な気持ちのままアパートを引き払って実家に戻ることになりました。

そのときにその赤い自転車をリサイクルショップに引き取ってもらおうと何件か回ってみたのですが、全く買い手がつかなかったので、結局自分でゴミ処理センターまで乗っていって、処分料金を払って巨大な倉庫みたいな処分場の中に置いてくることになりました。

その後、説得を受けて戻った実家での生活はまるでうまくいかず、何度か出たり入ったりを繰り返した後、結局関東近辺で働きながら1人暮らすことになりました。

しかし、所詮はフリーターでいつまでその仕事をしているか、いつまでその土地に住んでいるか、我ながら全く見当がついていないので、その頃はろくに家具も買わず、しかし、徒歩だけでは行動範囲が狭くなるので、必ず自転車だけは購入して、引っ越しが決まる度にゴミ処理センターに捨ててくるというパターンを繰り返すようになりました。

わたしは記憶の仕方が変なのか、大体嫌な出来事は視覚的イメージになって残っているのですが、巨大な倉庫みたいな処分場にあのまだ壊れてもいなかった自転車を置いてきたことはどうもあまりよい思い出としてではなく記憶に残っているようで、時折不穏なビジュアルとして思い出されます。

最近では引っ越すことも減ってきて、家具なんかも買っちゃって落ち着きはらって生活しておりますが、そういう不穏なビジュアルを思い出していると、なんだかもっとそういったものに執着する生き方、引っ越す度にきちんと自転車もトラックに積んでもらって新しい町に持っていくような、そんな生き方もできたんじゃないかと考えてしまうのです。

おしまい。