柔和な曲線美と繊細な色彩 ミュシャの世界がお皿の上に ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ | オンナひとり気まま日記

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大好きなラグジュアリーホテルや、外で見つけた美味しいものの話がメインです。日々の徒然の他、脱線話も色々。

もう随分前のことになってしまいましたが、今年3月8日から6月5日まで国立新美術館で開催されていたミュシャ展、ものすごい人気でしたね。

私はぼんやりしているタチで、展覧会の類は、あちこちでプロモーションしているのを見て、行きたいなあと思いつつ、結局会期終盤まで動かないという。

このミュシャ展も例外ではなく、ようやく国立新美術館に出かけたのが、最終日前々日の土曜、当然凄まじい行列で容易に入れるわけもありませんでした。

結局、後の予定もあったため並びはせず、同美術館内にあるレストラン「ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ」でランチだけ頂いてきたという情けない体たらくでした…。

こちらのブラッスリーも、ポール・ボキューズブランドで展開する他の店と同じくレストランひらまつの経営ですが、美術館の中だけあって、企画展の内容に沿ったテーマのコースが提供されるのが楽しみです。

とは言え、大体西洋絵画系の企画が大半とは思いますけどね。
今年2月から5月に同美術館では草間彌生展もあったかと思いますが、そちらのテーマでも(というか、むしろその方が)大層話題性はあっただろうかと(笑)。

故・黒川紀章氏設計の、それ自体がオブジェのような美術館の3階、あたかも天空の小島のごとくポッカリと中央に浮かび上がるのが、このブラッスリー。何ともユニークです。

分かりやすいラグジュアリー感というよりは、近未来的な雰囲気。

店頭の丸テーブルには、お料理本とフランスっぽいモチーフのディスプレイ。可愛いけど、この空間の中では少々没個性気味?

ここ、中はそこそこ空いているように見える時でもしばらく待つことが多いような。
単なるごゆっくりなのか、それとも何か独特のオペレーションで動いているのか。

勿論、ミュシャ展の待ち時間に比べれば、待ったうちにも入らないけど(笑)。

お席からの窓の外の眺め。

振り向いてみる店内中央はこんな感じです。


トリコロールの効いたテーブルに映える、可愛いロゴ。

通常のランチコースは、2,200円のブラン・コースと、3,800円のルージュ・コースがあります。

ですが、ここはやはりミュシャ展特別コースを頂かねば。
「四つの花」をモチーフにした、見目麗しいコースです。

まずはどのコースでも共通のパンとリエット。

鶏のリエットは、ほんのりカレー風味が効いて、とてもなめらか。

サクサクのバゲットとの相性は勿論ピッタリです。

前菜は、四つの花「カーネーション」。
「オマール海老とホワイトアスパラガスのムース ソース・オロール ホタテ貝とグリンピースのナージュ」。


女心の琴線にこれでもかと触れまくる、ピンクとグリーン。

オマールエビとホワイトアスパラのムース。

オマールエビ&オーロラソースの味がかなりしっかり存在感ありなので、アスパラのムースはちょっと影薄め?かも。

でも、層がたくさん入ったパートフィユテでなく、サクッとした薄いタイプのパイ皮が土台なので、カナッペ風で美味しいです。

ホタテ貝とグリーンピースのナージュ。
ホタテと上にかかったジュレは、ごく淡い繊細なお味。

写真では見えないけど、ホタテの下には、グリーンの小さな丸いパンケーキが敷いてありました。

彩りの鮮やかさだけでなく、形の愛らしさもばっちりな緑のお野菜とピンクペッパー。


メインは、四つの花「ユリ」のイメージ、「真鱈のヴァプール ブイヤベースのジューと軽いにんにくのムースリーヌ じゃがいものコンフィと白野菜と共に」。

淡白な鱈と野菜なので、一見かなりさっぱりではと思えますが、軽やかながら意外にしっかり味。

軽くソテーしてプリプリの身が嬉しい鱈、野菜とブイヤベースのスープを纏って優しい佇まいです。

野菜は透けるくらい薄い大根に白ネギ、カリフラワー、後はニンニクも影の主役。

鱈と野菜の間からはベーコンも。これがコクの秘密でしょうか。

下に敷いていたジャガイモはローズマリーの風味が効いていて、この柔らか一辺倒に終わらない一皿で、存在感を放っていました。

デザートは、四つの花「アイリス」。
「フリュイルージュのパラチンキ ヴァニラ風味のアイスクリーム ピスタチオのアングレーズソース」。
パラチンキは、チェコ風クレープです。

ソースはブルーベリーに、ピスタチオのアングレーズソース。
スミレの花弁も儚げな美しい紫色です。

ヴァニラアイスは濃厚な味わいの正統派です。

パラチンキは、薄く柔らかなクレープ皮の中に、イチゴやラズベリーなどの赤い実の果物とアングレーズソース入り。


これまた柔らかな色彩と食感のお皿ですが、それでも複数のソースを組み合わせて、重層的な味や香りを生み出した、フレンチらしい一品。


最後はコーヒーで。

あら、四つの花のうち、残りの「バラ」はいずこ?と思いましたが、こちらはディナーコースのお肉料理「トマト風味のクルートで焼き上げた牛頬肉の煮込み グーラッシュ風」で組み入れられていた模様。

ランチの3品コースでも、十分お腹いっぱいにはなりますが、これはまた味わってみたかった気も。ちょっと残念。

ミュシャらしい柔らかな色彩とフォルムを表現したコースは、女性的なたおやかさに満ちていながら、けっしてさっぱりシンプルでは終わらない、深みのある味わいのコースでした。

肝心のミュシャ展は見られませんでしたが、ミュシャ展に行列する皆様を観賞。
文字通りの「上から目線」でごめんなさい。

実際、ドアの外にもさらに多くの人たちがはみ出して行列をなしていました…。

残念だけど、美味しいものは食べられたからよしとするか。

ごちそうさまでした!