初見なのに懐かしいのはワケがある 宝塚花組公演「Ernest in Love」(中日劇場) | オンナひとり気まま日記

オンナひとり気まま日記

大好きなラグジュアリーホテルや、外で見つけた美味しいものの話がメインです。日々の徒然の他、脱線話も色々。

私が宝塚を初めてみたのは、日向薫・毬藻えりのトップお披露目公演、「春の踊り/ディガ・ディガ・ドゥ」の二本立て公演でありました。ベルばら再演イヤーのことで1989年、もう27年も前であります。

そして、多分一番夢中になっていたのは、ヤンミキ(安寿ミラ、真矢みき)時代の花組です。
その後ほかにそこまで心惹かれる別の何かを見つけた記憶もないのですが、ヒイキのトップの退団と前後して、何となくヅカからは一旦遠ざかりました。

ということは阪神大震災の年だから、1995年ですか。 あの頃は時間がたつのが今より長く感じたせいか、何か長いこと見ていた気がしたけれど、たかだか中高生時代の6年程度だったわけね。

ここ数年では2作ほどを東京で見た程度。一番最近は朝夏まなとさん主演の宙組「王家に捧ぐ歌」だけど、これがようやく昨年のこと。

そして。

「Ernest in Love」の原作で、19世紀末イギリスの風習喜劇の最高傑作である、The Importance of Being Earnestを著したオスカー・ワイルドは、英文学専攻学生であった頃の私が最も読んでいた作家であります。
その後、大学院まで進んだものの、結局アカデミックの世界への就職は厳しく、今や文学からはすっかり遠い社蓄と成り果てた次第です。

何が言いたいかというと、もはや自分が詳しいとか、馴染みがあるとは口が裂けても言えませんが、懐かしくてたまらんという組み合わせが、宝塚歌劇団による「Ernest in Love」なわけです。

すでに2005年だけで2度、昨年も東京で上演されていたはずなのに、ずっと見逃していたこの舞台。もうそろそろ見とかないとと思い、今回は名古屋まで遠征しました。

中日劇場。昨年の歌舞伎、猿之助さんの「雪之丞変化」で初めて来て、それ以来。


本日の演目はこちら。


この話、19世紀末のイギリスを舞台に、社会的義務からの息抜きとして、ロンドンと田舎で二重生活を送る男性二人と、「アーネスト」(Ernest)という名前の人と自分は結婚すると信じて疑わない若い娘二人の、ドタバタな恋模様を描いたものです。

ワイルドの作品だけに、お堅いヴィクトリア時代の道徳観に対する皮肉は全編満載です。
が、これに関してはワイルドの他の作品と比べてそこまで強烈な諷刺は前面に出ておらず、華やかな上流社会に咲く男女二組の恋物語とありえないナンセンスなオチがメインなので、肩肘張らず楽しめるし、何より宝塚にぴったりです。

さて、舞台。 劇団四季だってほとんど録音環境な今、ヤッパリ生オケは気分がいいですな。

それにしても、オケが舞台に露出しているだけでなく、アールヌーボー調の温室風のセットになっているところが何とも素敵!
これ以外にも、装置の転換は大がかりではないのに、舞台を上下左右実に巧みに使ってますね~、感心。

あと、原作戯曲では、ブラックネル夫人の'A handbag?' って台詞は昔から、様々な女優たちがそれは色々な解釈で口にして来た見せ場なのですが、ミュージカルだと一曲の歌に仕上げちゃうのも面白い。この歌詞も、後々のジャックの素性を知るとニヤリとしてしまう伏線がありますしね。

さて、主演のジャック役の明日海りおさん、ヅカのスターには使い古された陳腐なホメ言葉で恐縮ですが、本当に華のある方ですね。
端正なのに、それでいて何がオモチャのように可愛らしい。
あと、最後のご挨拶も、慣れていないわけでもないだろうに、ミョーな間合いと天然ぽいぎこちなさで、場の空気をゆるーくしていました。決めるとこ決めてこういうの、何か好きだなあ。

アルジャノン役の芹香斗亜さん。この方、コメディの呼吸が非常にお上手ですね。
第一幕冒頭、アーネストと名のっていたジャックの煙草入れを手に秘密を暴こうとするシーンなど、少し間を外したり、突っ込んだり、展開をわかってはいても、思わずジャックの気持ちになって焦れてしまいそうです。

グウェンドレンの花乃まりあさん。個人的には、この作品のヒロインポジションはグウェンドレンではなく、絶対にセシリイだと信じてますが、キャラ的にはちょっと大人っぽいルックスの花乃さん、よく似合ってると思います。マザコン風味のジャックとならんでもお姉さんぽい感じでGood(この方、身長も結構高いですよね?)。

そして、セシリイ役の音くり寿さん。2014年入団って若いんだねえ。大抜擢。本当はそんなことも知らずに、何の先入観もなしにみたんですが、かなりハマりだったと思います。
くりんとしたおデコの福々しい可憐なお顔立ちによく通る声、都会の垢にまみれない天然妄想ムスメの役がよく似合ってます。
ま、娘役だしこれから結構な勢いで役つきそうですが、大事に育てて下され。

あと、ブラックネル夫人とミス・プリズムを演じていた悠真倫さんと花野じゅりあさん。上手とは思うのですけど、個人的にはもうちょっと誇張された ヴィクトリア時代のモンスターっぽさが欲しかったかも。

最後はフィナーレもきっちりついて宝塚らしく、素敵な舞台でした。

ロビーの物販。いや、一応「キャトル・レーヴ」の出張所と呼ぶべきかな(笑)。


昔ほど熱を入れて見ることになるかはわからないけど、また宝塚はもう少し頻繁に見ることにしようかな。ヤッパリ楽しいや。