勉強合宿中、Tと私は自由時間に合宿所から抜け出してお出かけをした。山の上でのデートはなかなか楽しかった。

うどんを食べにいったり、豆腐スイーツを一緒に食べたり、寺巡りをしたり。


また、人に見えないような場所でキスしまくったり。彼は、そこでほぼ初めて、「結婚してください」と言ってくれた。


ほぼ、というのは、記憶が定かではないからである。笑


それまでにも何回か、結婚しよう、って言われたと思うのだが、ここでのプロポーズが一番カッコよくて、本気っぽくて、心に残っている。



合宿の場所に戻ったあとは、私は嫌がる(照れる?)Tの横に無理やり座って一緒に採点をした。彼は理系、私は文系なので、私に手伝えることは少なかったが、彼の担当分の採点も少しは楽になるように、点数の計算をしたり簡単な問題の採点をしたりした。


また、飲み物を飲むための紙コップに、「T大好き」とか「かっこいいね」とか、色々落書きをして、Tを困らせてしまったが、彼は私の筆跡を捨てることができないタチなので、ぐちゃぐちゃに書き込まれたその紙コップを丁寧に持ち帰っていた。


合宿の途中で、「今日のポニーテールかわいい」と、携帯電話に打ち込んでくれた彼もとても可愛かった。


普段遠距離恋愛をしている身としては、隣を見れば彼がいる状況が1週間続くのは夢のようであった。

山の上での合宿に大学生スタッフとして参加したのは5人。私だけが女子だったが、高校時代から優秀だった、仲良くなりやすい人たちだった。


Tの他にも京大医学部の同級生がおり、その2人が医学の勉強のクイズをしている時には私は「構って~。」という状況になっていたが、それ以外は楽しく過ごしていた。


また、私たち自身の自習時間も多くあったので、私は大量の教材を持ち込んだ。なかでも、国家公務員試験の勉強を始めようと思っていたので、それに出てくる数学系の問題が集まった冊子を持ってきて、Tに教えてもらうことにした。


展開図や推理クイズなど、右脳が必要になりそうなそれらの問題は、私が苦手とするものだった。そしてTには軽々解けるものばかりだった。


Tはあまりにもスパルタであった。


「これの答えはコレって、すぐわかるやろ?」

などと聞かれると、わかりません、とは言えない。

ただ、よくわからないままにわかりましたと答えると、それを見抜かれて、「なんでコレって分かるん?」などと聞かれ、私は一問解くたびに半泣き状態にまで追い詰められていった。


彼には一瞬で解けるものを、じっくり考えてもわからない私は、純粋に悔しかった。


ただ、自由時間には、彼は私と一緒に外に出て散歩をしてくれて、「よく頑張ったねー、よしよし」などと、優しい彼氏に戻ってくれた。

私たちが通っていた高校には、夏休み、山の上で勉強合宿をする、という行事がある。

そして、私とTは、卒業生として同行し、試験の採点や自習監督をすることになった。


というのも、Tが参加すると聞いたので、1週間も一緒に過ごせる機会はないと思って、猛烈に学校側にアプローチをかけ、仕事を手に入れたのである。


その合宿の打ち合わせのために母校に向かう前日、母が倒れて救急車で搬送された。父を亡くしているので、母が倒れるとどうにかできるのは私1人。軽くパニックになりながら救急車を呼び、母を搬送してもらい、一緒に病院に行った。

なんやかんやでその日はほぼ徹夜だったのだが、びっくりしたのは、次の日母校でTと会ったら疲れが吹き飛んだことである。恋人ってすごい。


そして、Tと母校で顔を合わせるのは合格発表以来、しかも、その時は別れていて険悪なムードだったので、ラブラブな状態で母校にいる、というのは実に高校二年生ぶりだった。とても不思議な感じがした。


担当の先生と打ち合わせをしている間、少し遠くからまた別の先生と打ち合わせしているTの声が聴こえてくるたび、キュンとしてしまっていた。



打ち合わせが終わったらデートをする予定だったが、母が入院することになったので、私は一旦病院に戻った。ただ、母の病状は一向に良くならず、それでいて「大丈夫やからどっか行ってもいいよ」などと言ってくれる。この判断は正しかったのかわからないが、私は数時間ほどTと会うことにした。


結局、その日中に母は退院できず、私が山で合宿している間もしばらくは入院することになった。