合宿中、英語の先生の協力のもと、私とTは英作文対決をおこなった。


プリンストン大学に通っている手前、Tには負けられない。



あっさり負けた。

Tの英作文は美しかった。

私のは、ごちゃごちゃしていた。



「あなたの作文は、英語を喋れるおばちゃんが近所にいて、その人相手に話すのならとても適している。

Tのは、ちゃんとした論文向きやな」

という、なんのフォローにもなっていない評を得た。


また、Tは、思ったより英会話が得意らしいと判明した。山で、イタリア人の美人観光客に英会話を褒められたらしい。美人、ということを強調してくるあたり、彼は完全に私の嫉妬を誘おうとしていたのがわかったが、可愛いので一応妬いたようなフリをしてみた。


なんやかんやで楽しい合宿だったのだが、私の渡米まで残り1週間ほど。寂しさが募りはじめる時期でもあった。

勉強合宿中、私とTが付き合っている、ということを後輩たちが知ったことで、やりやすくなった部分もあった。

Tは京大医学部で、後輩たちからすると憧れだ。

しかし、少し強面(?)で硬派に見えてしまうのと京医の人には恐れ多くて話しかけにくい、ということで、彼にアドバイスをもらいたくても話しかけられない子がいたのである。

医学部を目指す、リリちゃん、というかわいい女の子だった。


リリちゃんは、私をとても慕ってくれるようになり、Tにアドバイスをもらいにいこっか、というと、目をキラキラさせていた。せっかくなので、私も一緒に話を聞くことにした。


Tは、リリちゃん相手に天使のような優しさを見せていた。教科ごとのアドバイスや得意科目を作ることの大切さなどを詳しく語っていた。また、私は、彼のことを天才だと思っていたのだが、彼も彼でやばいほど努力をしていた。なんでも卒なくこなしているように見えるTの挫折の話は初めて聞くものばかりだったし、問題集を何十回も解き直していたことも全然知らなかった。何もしなくても勉強できる人も素敵だが、天才なのに恐ろしく努力していた彼のことがもっと好きになった。


合宿中、卒業生として、勉強をしている後輩の女の子たちに向けて小さなスピーチをする機会があった。

私は、東大に受かった経験とハーバードに落ちた経験をもとに、合格がいかに嬉しく、不合格がいかに辛いものかについて語った。


また、試験を受けてから合格発表の日までの数日間はあまりにも不安で、半殺し状態のようなものであるので、その期間を2度と経験しないためにも浪人はしない方が良い、という完全なる持論も展開したが、みんな、頷きながら聞いてくれた。



そして、モチベーションの上げ方については、Tの話をした。年頃の女の子たちに、私とTが付き合っていることを素直に打ち明けてしまうとキャーーーー❤️となるかもしれないので(ならないか。)、個人名は伏せたが、カッコよくて賢い人に追いつきたくて勉強を頑張った、という話をしたら、かなりウケた。

「その人とはどうなったんですか!❤️」と、目をキラキラさせて聞いてくる子たちもいて、「付き合ってるの笑 あの人だよ」とTを指差すとJKたちは騒いでいた。


また、「高校の時はラインとかで連絡してたんですか?携帯は使っていましたか?」と聞かれ、「Tと私は置き手紙でやりとりしてたよ!」と答えると、「そういう時代だったんですねぇ」と、曲解されてしまった。