私は、平成19年4月以降に設立した出資持分のない、いわゆる基金拠出型医療法人の理事長をしています。

 

 近い将来、理事長を退任したいと思っていますが、後継者がおらず、他人に法人を売る気もないので、医療法人を解散させたいと考えています。

 

 利益は出ているので、医療法人に残余財産はありますが、基金拠出型医療法人は解散しても、残余財産を分配してもらえないと聞きました。

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 平成19年4月以降に設立された基金拠出型医療法人が解散した場合、借入金などの負債を全部返して残った財産(残余財産)は国等に回収されてしまい、個人へは分配されません。

 

 基金の拠出金のみだけが返ってくることになります。

 

 国等に財産をもっていかれないように、残余財産を残さない方法をご紹介します。


(1)退職金で消す


 解散の認可を受けたらすぐに残余財産が決定するのではなく,解散後に清算法人となり、清算手続きを進めることになります。

 

 清算法人とは、法人の財産整理に関することだけを行う法人で、清算手続き中に資産の売却や負債の支払いなどを行います。

 

 清算手続きの際に、役員退職金も出せますので、役員退職金で残余財産が残らないようにすることもできます。


 例えば,借入金などの負債を支払った後の財産が2億円あった場合、理事長に1億5000万、他の理事に合計5000万退職金を出したとすると、残余財産は残りません。

(2)清算人に対する報酬を出し続ける


 基本的には、退職金の支給をして残余財産が残らないようにしますが、万が一退職金を支給しても財産が残る場合、財産の整理を行う清算人に対して報酬を支払い、残余財産を減らしていくこともできます。

 

 清算人は理事がなる場合が多いかと思います。

 

 ただし、清算人の報酬には税金や社会保険料がかかり、清算中の申告も必要なので清算手続きが長引けば、税理士報酬も余分にかかってしまうなど、コストが発生する可能性があります。


(3)毎年の役員報酬を退任時に見据えて設定する


 理事長先生の退任時期を検討しているのであれば、退任時を見据えて毎年の役員報酬を設定することもできます。

 

 将来の退職金がいくらかを見積もり、運転資金や設備投資積立てを加味した金額を、毎年法人内部に留保するため利益をいくら出す必要があるかを算定し、逆算してその年の役員報酬を設定する、ということが理想的ではないかと思います。

 

 これにより、もし理事長先生が退任し法人を解散させることになったとしても、残余財産が多く残りすぎることを回避することができます。

 万が一、それでもなお財産が残った場合は、残余財産の回収は国や地方公共団体だけが行うのではありません。

 

 都道府県や郡市の歯科医師会、財団又は持分の定めのない社団医療法人などにも、帰属させることができます。医療法人を解散して、財産が国に持っていかれることは考えにくいです。