現在、個人クリニックから法人成りして医療法人を設立しようと考えています。

 法人成りすると、交際費が経費として認められない可能性があると聞きました。

 毎年、交際費の額は多額ではないものの、所得は1,000万円程度出ているので、経費は減ってほしくありません。


 交際費は原則として損金(経費)とはなりませんが、設立してすぐに交際費のほとんどが損金とならないということは考えづらいです。

 

 今回は、医療法人の交際費の損金不算入の考え方についてご説明させていただきます。
 

 ゴルフ代や一定の金額以上の飲食代などの交際費は、原則として損金とはなりません。

 

 しかし特例として、一定の規模の法人は、下記のいずれか高い方の金額まで損金とすることが認められています。


 ①800万円
 ②飲食代の50%


 基本的に①の方が高くなるので、ほとんどの医療法人は800万円までの交際費は損金算入することができます。


 特例の判定対象となる一定の規模の法人とは、平成19年3月31日までに設立した出資持分ありの医療法人の場合、出資金が1億円以下の法人が対象となります。

 

 ただしご相談者様は、平成19年4月以降に法人成りを検討されているため、出資持分ありの医療法人は設立できません。

 

 平成19年4月以降は、出資持分なしの基金拠出型医療法人といわれる形態で設立されるケースが多いので、基金拠出型医療法人を設立する前提でお話させていただきますと、基金は当該規模の判定材料とはなりません。

 

 よって基金の金額とは関係なく、一定の規模を判定することになります。

 

 どのように判定するかというと、

((総資産-総負債-当期純利益(または +当期純損失))×60%

で算定した金額 が1億円以下か否かで800万円まで損金算入できるか否かが変わります。

 

 もう少し分かりやすくお伝えすると、(総資産-総負債-当期純利益(または +当期純損失)は純資産となるため、純資産の額が約1億6,666万円を超えると、60%をかけて1億円超となり、800万円まで損金算入される特例は使えなくなってしまいます。


 よって純資産が1億6666万円を超えない限り、年間800万円までは交際費として損金とすることができますので、医療法人設立早々に特例が適用できなくなることは考えづらいです。

 

 ただし毎期利益が出ると徐々に純資産の金額も大きくなります。

 

 例えば拠出した基金が2,000万円で、税引後の利益が毎期1,000万円発生したら、医療法人を設立して約15年後には純資産が1億6666万円を超える可能性があります。

 

 1億6666万円を超えた場合には、上記特例の①はなくなり、②の飲食代の50%以上の交際費は損金とならないことになります。

 

 ちなみに、100億円を超えた場合は、②の適用もなくなり、交際費の全額が損金とはなりません。


 今回交際費の損金不算入の考え方についてお話させていただきましたが、そもそも交際費に計上しなくてもいい飲食代があります。

 

 スタッフの慰安のための忘年会などは福利厚生費、ミーティングに関連したお弁当代や1人あたり5,000円以下の外部の方との会食は会議費となります。

 

 なお令和6年4月1日から、会議費の範囲が広がり1人あたりの飲食代が5,000円以下から1万円以下となりました。

 

 物価高騰で1人あたり5,000円以下に収まらなかった場合も、今後は交際費ではなく会議費に計上できる可能性があるので、上手く活用して損金とならない交際費が多額に発生しないようにしましょう。