青色申告をされている個人事業主の先生のなかには、奥様などの配偶者に青色事業専従者給与を支給されている方もいらっしゃるかと思います。

 

 専従者給与とは、専ら個人事業主の先生の事業に従事し生計を同じにしている配偶者や親族に、事前に税務署に一定の書類を届け出をしている場合に限り、届出した範囲内の給与支給額を経費計上できるというものです。

 

 それなら、税務署に一定の書類を届け出るときに高めの金額を設定して、多額の利益が出たら事業専従者に多く給与支給し、所得を分散すればいいのではないか、と考える方もいらっしゃるかと思います。

 

 しかし、事業専従者の給与が不相当に高額すぎると、経費として認められない場合があります。

 

 最近(令和5年8月)に高等裁判所で事業専従者給与が高額すぎるとして、一部が経費として認められなかった事例がありますのでご紹介をさせていただきます。


 今回否認されたのは、歯科ではなく内科等の医師なのですが、配偶者に賞与含めて年1,800万円を支給していた事例です。

 

 当該配偶者は看護師兼事務長として事業に従事し、看護師業務のほか会計や労務管理、診療時間外の電話対応や、在宅医療の送迎等もされていました。

 

 他のスタッフよりも多くの業務に従事していたことは認められたものの、1,800万円が給料として相当と認められる証拠がなかったとして、国が算定した適正な給与相当額(H28・29年は約821万円、H30年分は約792万円)を超える部分の給与は、経費としては認められないとされました。

 

 国が算定した適正な給与相当額は、同一の業種、近隣の地域、事業規模が似ているなどの類似の同業者を抽出し、その類似同業者が配偶者等に支払った給与の平均額よりもとめられました。

 

 配偶者等の労務内容・労務の量をタイムカードや時間・労務内容等を記録した日報などで合理的にかつ客観的に証明できる証拠を残せば、類似同業者の平均支給額を超える給与でも認められる可能性はあります。

 

 しかし、労務内容・労務時間を鑑みても相場と大きく乖離した給与であると、認められない可能性が高いでしょう。

 

 事業専従者の給与決定時には、事業専従者の労務内容・労務時間、相場比較を意識してご検討いただいたらいいかと思います。