尾川とも子の辛口解説&
藤井快選手の登りをしたい!を叶えるトレーニング


今回はリードジャパンカップ優勝の藤井快選手と
3位の清水裕登選手の見比べてみます!

■藤井快選手ってどんな選手?
■清水裕登選手ってどんな選手?
■決勝での藤井選手の集中した登りが優勝に
■清水選手が優勝できなかったワケ
■私たちができるトレーニング

この項目でお届けします。





■藤井快選手ってどんな選手?
オリンピック強化選手男子6人の中に選ばれ、26歳男子では6人の中で最年長。
リード、ボルダリング、スピードとも国内ではすべてにおいて常に上位に食い込んでくる選手です。
なかでもボルダリングが一番得意で
2018年のボルダリングのワールドカップでは何度も優勝の経験をしています。
自分のペースで淡々と集中していく登りが特徴で、他の選手と比べると抑揚の少ない登りをしています。


「もう1手がしんどい時に、あと1手をどう乗り越えていますか?」
と質問しました。

「しっかりあそこまでいこうと思いながら、粘る時は粘る、無理で無駄な時はやめる。そんな感じです。」

と、インタビューの答えも、冷静とというより、すごく藤井ペースの淡々とした感じでした。

どんなに周りがギャーギャー言ってもあまり動じない登り。
これが藤井選手の持ち味です。

抑揚がある登りとは、
ここでは、
「よっしゃー」とか声を出したり、気分の高揚というか、気分の温度的な上がり下がりが登りのパフォーマンスに出てくることを指すことにします。

藤井選手はそれが少なく、無味無臭、例えていうなら水のような登りと言えます。


■清水裕登選手ってどんな選手?
23歳の清水選手は、オリンピック強化選手に次ぐクライミングワールドカップ派遣選手男子19人の中のひとりに選ばれています。
リードを得意とする選手で
アジアユースや
ジュニアオリンピックカップ大会のリードで優勝
ワールドカップのリードでは最高11位と健闘しています。


明るくて周りを楽しませるような、楽しいこと大好き、パーンと弾けたような性格でありながら、冷静沈着な面も持ち合わせています。

藤井選手が水なら、清水選手はシュワシュワのコーラでしょうか!?
弾けるときは弾け、でも、多くの人に愛され安定した売り上げを誇るコーラなイメージ。



「もう1手がしんどい時に、どう乗り越えていますか?」
の質問には

「とにかく、パンプ(腕が張ること)してからどれだけ落ち着けるか?です。手首をささっとシャイクするだけでも違う。呼吸を整えるだけでも違う。いっぱいいっぱいでも、絶対にやみくに出さない。やみくもに出して次のホールドを保持できたとしても、次につなげられない。さらにもう1手だせるかもしれない。やみくもにだして後悔てしきたことが何度もあるので、だから、とにかく冷静に1手出します。」

と、自身の失敗を冷静に分析して糧にできている選手です。

ウォームアップが他の選手に群を抜いて的確にできていて、翌日の決勝にむけてクールダウンもきちんとして
生真面目さ、自己分析力が伺い知れます。
見事予選では1位通過。圧巻の登りを見せてくれました。

今回決勝で惜しくも3位でしたが、これもまた糧にできる選手ですので、今後の試合に注目したいです。


■決勝での藤井選手の集中した登りが優勝に
先に書いたように藤井選手は、自分のペースに入り込める選手。
ここでは藤井ペースと呼びます。

まずは決勝の登りを見てみましょう。
観ていただきたい途中の高度から再生されます。そこから1分ほど見ていただければいいです。

注目するところは、藤井選手の頭の動きです。体の軸からあまり動いていないことがわかります。
上を見上げるのはほぼ2か所。

○壁の右端まで登ってきたときの遠いホールド
○左端まで登って来たときのダブルダイノ(両手て飛び移るところ)

のところくらい。

つまり藤井ペースは、全体を見ながら登っていかないのです。

おそらくオブザベーション(下見)の時に
アタマの中でホールドの配置、核心部、レスト部分を入れ込んでいるんでしょう。

たとえ1個先、2個先、のホールドを見たとしても、頭がぶれない。
頭をブラさず、眼球だけで先のホールドを見てとらえています。
ルート全体をイメージに入れ込み、目の前の範囲に集中した登りをすることで

レストホールドまで、まだもう少しあるなあ、疲れたなぁ

とか、

あそこが核心だからもう少しセーブしようか、でもきついなぁ

とか、このような気持ちが混じる雑念も入りづらくなります。




ホールドをつかむたびにそんなことを思ってたら
脳ってものすごく酸素とエネルギーを消費しますよね。



つまり、抑揚のない登りであるが、メリハリがある登りをしています。



ここでいう、メリハリとは、リズムよく登っていくことです。
休むべきところでじっくり休み、
それ以外はホールドを掴んで、チョークをつけて、腕を軽くシェイクして、をリズムよく登り、
休むレストポイントまでは、レストしない。
そう決めて登っていくような感じです。

だから、藤井選手の

「しっかりあそこまでは行こう!」

は、全体がイメージできているからこそ、あそこまではリズムを崩さずに行こう、あそこでレストするから、あそこまでは余分なレストはせず、集中していこう、と言える言葉ですね。



また、頭がぶれないのは、カラダにとってもメリットがあります。

人の頭は体重の1割。つまり5,6キロのボーリング玉が細い首で支えられているわけです。
それをいちいち、あちこちブラしていたらとんでもないムダなエネルギーや負荷がカラダにかかるわけです。

藤井選手は見事に完登することができました。


藤井選手の場面、ルート途中から再生

■清水選手が優勝できなかったワケ
一方清水選手も藤井選手と同じ高度から見てみましょう。その後1分ほどで構いません。
その、たった1分の中で、清水選手は登りながら何度もルート上部を見直し、頭もこちから目が見えるくらいまで反り返っている場面もあります。

次はこうだよね、その次の次はこうだよね、と次の動きの確認と1手1手に慎重になりすぎて、腕のシェイクも多めになり、少し無駄な負荷が増えてしまいました。

難しいルートを登っている最中に、ボーリング玉の頭をあっち向けたり、こっち向けたりとカラダに負荷を加えていたらどうでしょう。
めちゃくちゃ疲れますよね。

頭をフル回転しすぎても、エネルギーを全部脳にとられてしまいます。

清水選手が決勝で優勝できなかったワケはここにあります。
それがゴールほんの2手前で力尽きてしまった。
清水選手が落ちたとき足が滑ったように見えましたが、実際映像をスロー再生で見ると、足がのこったまま手でホールドを弾くようにしておちてます。もう、持てる力が残っていなかったんでしょうね・・・。

優勝できる準備、実力はあったのに、残念です。次回に期待しましょう!


清水選手の場面、ルート途中から再生
■私たちができるトレーニング
藤井選手の登りから学べることを、私たちのトレーニングにも生かしていきたいですよね!


まずは、簡単な課題から、頭をあちこちブラさずに登る練習をしましょう。きちんと頸椎に頭を乗せ、
下を覗き見すぎたり、上を見上げすぎたたりしないように意識します。

眼球だけでホールドをみる範囲を広げていきましょう。
これだけで、カラダの負荷も減っていき、
1手のエネルギーが貯金できて、もうあと1手が出るようになりますよ!



次に、メリハリのある登りを目指しましょう。ボルダリングも一緒です。

レスト(腕をシェイクする)場所を事前にオブザベーションで決めておき、そこまではリズムよく行く、なるべく予定外のレストを入れ込まないようトレーニングしてみましょう。

レストといっても重力に逆らって休んでいるわけなので、無駄なレストのしすぎで、逆に負担にならないよう気をつけましょう!


腕もシェイクするのに、毎回毎回下に下げてレストすれば、次のホールドをとるのに腕をあげ直すのに余計なエネルギーを使います。
シェイクのたびに重心下げてしまうと、またカラダをあげるのに余計なエネルギー使います。


上記はレストポイントと決めた場所だけにして、それ以外で腕をシェイクするときは、
一連のムーブの中で、
腕を上げたままホールドを持つ一瞬手前でシェイクを入れたり、
重心を下げずに、重心を上げたままシェイクするトレーニングをしましょう!











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