ボルダリングトレーニング~持っている力の出し方。強いクライマーとうまいクライマーの違い。



私のインタビューからの、音声抜粋です。


スポーツは何でもそうだと思いますが、ボルダリングも十代、二十代の子は体力だけで登れてしまうので、100出さなくてもいい場所を全部100で登って、いつも100出しきるのがカッコいい、それで、やった、やったとなるところがあると、いろいろ学んだり、研究して感じています。でも強いクライマーとうまいクライマーというのは別だと思うのです。


100全部出す人は確かに強いです。でも、うまいクライマーは自分のどれくらいの力が100で、その100ある力を25でも35でも、細かく出せるのが、うまいクライマーだと学び、私もそう思いました。

それが「経験」なのかもしれないのですけれど、十代とか二十代の若い子は0100しかないクライマーも多い。でもうまいクライマーになると、自分の100を見極めていて、そこからこの岩は54で登れると思ったらちゃんと54という力が適切に出せる。そこが違うというのはすごく感じます。

だから、0100しか武器を持ってないと「登れない」というスランプ壁にぶち当たった時、乗り越えるのに大変。壁を超えられなくて、やめてしまうクライマーもいるでしょう。



(強いだけではなくて、やはり自分自身の持っている力をよく自分自身で知るということですね。)


そうだと思います。身の丈を知ると言ったら何か上から目線かもしれないですけれど、そういう自分の100はどれくらいなのか、50はどれくらいなのか、その半分はどれくらいなのかというのを知っておくというのが大事になると学びました。


今日は体調が悪いと思えば、昨日の100はここだったけれど、今日の自分の100はここだなと、日によっても変わってきます。下手したら時間によっては、朝はここだったけれど、夕方でちょっと疲れてくると100はこの辺だとか。

疲れた100を知っておかないと無理して120出して怪我をするというようなことになってしまいます。


そのためには、自分の分析がとても大事。何が得意で、不得意で、どんな心身の状態なら調子がよくて、悪くてなど。


日本のトップのユース選手にインタビューもしますが、得意不得意な技は?ホールドは?と聞いても、「え~わからない」「ガバ以外不得意」などと答える選手もいました。

私はこの答えをもらった時、とても、残念な気持ちになりました。


きつい言い方ですが、これでは、全く自分の分析ができてなくで、上を目指すのは大変だな。と感じてしまいました。

反面、よく言えば、まだ、そこを気づけば伸びる余地が十分あるわけです。



(尾川さんは本当に常日頃から、ご自分の感情コントロールとか、思考のコントロールとか、力のコントロールが非常によくできていらっしゃいますが、それはやはり登ることによって身についたのですか?)


体力という面では、クライミングの筋肉は、クライミングでしかつけられないと思います。いくら懸垂100回できても、岩を登れるわけでもない。

そういったことでは、もちろん登っている中でもあるし、トレーナーの山下先生のアドバイス、メンタルケアとかを受けたりとかして、自分の中で理解していく中で、「あ、そういうことだったんだ」と、何か自分の経験と、先生に言われたことがうまくかみ合って消化されてきているのだと思います。


(まずは経験があって、そして教えていただくことでそれがだんだん自分の身になってまた経験になる。)



わたしは、それが多かったでしたね。もちろん逆に、教えられたあと腑に落ちる経験があることもありました。

やはり自分だけの知識とか経験だけだとどうしても幅が狭くなってしまいます。限界があります。

体の筋肉、骨、細胞のひとつひとつまでどんな働きをするのか?人間の思考がどんなふうになってるのか?

専門的なことは、自分の経験や知識だけでは限界です。そういっことを覚えたり学んだりする時間は全て登る時間に費やしてきましたから。

それは、やはり、その専門の人たちに尋ねた方が早いと思ってます。



例えば、クライミングでもそうですけど、いくらうまい人のまねをしても骨格が違うし体重も違うので、まねをしても身に付かないと言われました。本当にそうだと思います。


他の人の意見なりアドバイスを聞いて、それを丸々受け止めるというよりも、自分に合うエッセンスをだけを取って、自分のものにしていくというか、自分の中で噛み砕いて、消化して吸収、排泄させていくというか、全くもって食べ物の栄養と同じように、そういうことは心がけています。

そこまでできてこそ、ようやく自分に「身につく」のです。



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