17日月曜日は祝日ですが、朝9時からWomen Solo Freeの予選が始まります。早めにホテルを出て、会場に向かいました。会場では観衆を盛り上げようと、進行役のような男性がマイクを持って、カメラが会場を巡り映し出された画面の中で踊ったり、太鼓をたたいたりすることをうまく誘導するように工夫されていました。座席からは、音楽を提供するディスクジョッキーが操作しているのも見えます。競技が始まる前に、会場の人たちが良い気持で競技開始に向かっていくのが実感できました。

 

 以前までこの競技の開始前に行われていた競技委員や審判員などの紹介は、一人一人の名前を読み上げ、彼らが立ち上がり手を振って拍手に応えていましたので、時間がかかっていました。しかし、今回は実に簡単に大きな画面に映し出すだけで済ませていたのが印象的でした。それで、いよいよ競技が始まりました。

 

 予選には29選手が出場します。乾選手は12番目に登場。最初に飛び込むところから少し斜めで水中へ、会場はどよめきます。そして次に水面に浮上するときテーマの「大蛇(おろち)」のイメージのように形を作ります。その後、出すスピードと止まる正確さが伴った脚技、そして、斜めでのスピンの角度も変わらない安定した演技で、テーマに沿った雄大な姿を演じました。

 

 今回は演技の後、点数を待つ間は、従来のように飛び込んだ台のところで立っているのではなく、ちょうどフィギュアスケートのキス・アンド・クライのように、コーチと並んで座って待つ仕組みになっていました。確かに、そこでは昨日の逆転優勝があったようにまさに抱き合い、キスして、歓喜する一方、嘆き、あえぎ、苦しむ「キス・アンド・クライ」が繰り広げられていました。

 

 この種目でもライバルたちの中には、次々とベースマークを取られ期待した点数が出ないで、憤然と席を立つような選手の姿もあるかと思えば、点数を見てコーチを抱き合い喜びを爆発させる選手の姿も見ることになりました。

 

 乾選手の得点は253.1853で1位になり、19日の決勝に進むことになりました。彼女は採点で、ベースマークをゼロで乗り切ったのです。2位はイギリスのKate SHORTMAN(21)で213.8417でした。乾選手の2位との得点差は39.3436でした。3位はギリシャのEvangelia PLATANIOTI(28)で199.4834、4位は韓国のYoonseo HUR(17)で185.9500、5位はイタリアの小国サンマリノのJasmine VERBENA(23)で182.3520、6位がオーストリア例の三つ子の一人Vasiliki ALEXANDRI(25)で179.2834、7位がスペインのIris TIO CASAS(20)で174.0208、8位がカナダのAudrey LAMOTHE(18)167.3625という結果でした。

 

 いかに乾選手が飛び抜けているかということなのですが、なにぶん、一発勝負での結果で新しい採点ルールのこともあり、ご家族ともに1つの山を超えたのは事実ではあるけれど、決勝の結果が出るまでわからないねと話し合いました。

 

 新体操でも、フィギュアスケートでも、フリースタイルスキーでもよりアクロバティックな演技構成が増えています。アーティスティックスイミングでもそのトレンドに合わせ、アクロバットなパフォーマンスに特化した新種目として、アクロバティック・ルーティンが加えられました。技の難易度や芸術性で争われ、世界水泳選手権ではこの大会で初めて公式種目として実施されることになりました。そして、このアクロバティックルーティン(AR)は、開幕まで1年に迫るパリ2024オリンピックのアーティスティックスイミング新種目ともなります。その意味で注目される種目でもあります。男子選手が最大2名まで加わることが承認されていて、パリではチームメンバーにも加わることにもなります。今後のこの競技の変貌ぶりが、なんとなく推察できますね。

 

 さて、15日の予選では19チームのうち上位12チームが決勝に進出しています。日本は224.5167で4位で通過して、この日の決勝に臨んでいます。構成メンバーとしては、Tokyo2020オリンピックにおいてチーム競技で日本代表を務めた吉田萌選手・栁澤明希選手、前日(16日)のミックスデュエット・テクニカルルーティンで金メダルに輝いた佐藤友花選手・佐藤陽太郎選手の姉弟が含まれています。自動車レースの「F1」をテーマにスピード感のある演技で、男性が入って土台となったためでしょうか、高さのあるジャンプ技を披露していました。リフトでブリッジした選手を別の選手がジャンプで飛び越える技も決め、7つの技をノーミスで演じきり、220.5867点をマークして銅メダルを獲得しました。

 

 優勝は中国238.0033でした。日本チームと同様に、ブリッジした選手の上を他の選手が越える演技がありましたが、高さが見事でした。そして、2位はアメリカで232.4033でした。3位は日本、4位はメキシコで215.7267、5位はフランスで210.6900、6位はカナダで205.4900、7位はウクライナで204.3634と続いています。

 

 チームでの戦いで上位にいたチームが必ずしも上にいないのは、新しいルールへの適応の遅れではないかと勝手に想像しています。

 

 こんなことを考えていると、私の頭にはAIがコーチを務めるチームができるのではないかということが浮かびました。人間一人一人の能力や特異な部分が異なるわけで、それは無理と言われるかもしれませんが、これだけ厳格に動きを判断することで評価するというのであれば、見た目の芸術性は別としても技術についての評価は機械が行うのと同じとなります。とすると、それに向けての対応も可能なのではないかと夢想をした次第です。

 

 終了後、乾さんご家族のお誘いに乗り、またもや居酒屋さんに乗り込みました。そこは、博多の名物「もつ鍋」のお店でした。お醤油と味噌の二通りの鍋があり、ホルモンがとろりと煮込まれていて、少々箸を動かしすぎたと後で反省しました。仕上げの麺は、縮れ麺とまっすぐの麺があり、お店の人のおすすめで、醤油には縮れが、味噌にはまっすぐの麺がと言われて、そこまで選べるというこの土地の食の文化の深さに感心しました。

 

 

~おしらせ~

きたる8月19日土曜日、グランキューブ大阪・リーガロイヤルホテル大阪にて乾友紀子選手・井村雅代コーチのトークショー&祝勝パーティーを開催予定です。

祝・世界水泳ソロ2連覇!一緒に乾選手、井村コーチをお祝いしませんか?
詳細・申し込みについては以下のURLからご覧ください。

※トークショーはオンライン(ウェビナー)での参加も可能です