「福島第一原発事故の真実 NHKメルトダウン取材班 著 講談社文庫」 

福島原発事故から、13年。その時、何が起こったのかが地道な調査の末に、次第にわかってきました。

津波が事故の主原因だとは思いますが、実は津波到達前に地震による破損があった可能性があるのではないかということです。

原発事故があってから、すぐ僕は耐震設計がどうなっているのか調べました。すると、耐震強度が足りなかったのです。

確認のため、改めて調べなしてみましたが、震災当時、福島第一原発付近の震度は6強、加速度は550ガルでした。しかし、福島第一原発の耐震強度は、設計基準地震動(S1): 167ガル(cm/s²)、極限状態地震動(S2): 270ガル(cm/s²)です。・・・足りないのです。

 

この本には、専門家らと福島第一原発の事故検証を続けている新潟県技術委員会が2020年10月に公表した報告書の内容が、示されています。

「原発を襲った津波は、東京電力の言う巨大津波第2波の2番目の波ではなく、その後の3番目の波であり、その到達時間は、午後3時38分台だったと主張している。すると、午後3時37分とされる電源喪失の原因は、原発敷地を乗り越えた津波が電源盤を被水させたためという東京電力の「説明」は崩れてしまう。(p.69)」

「一号機の循環水系の配管は、建設当時、耐震評価されていないことから自身の揺れで損傷した恐れを否定できないというのだ。(p.70)」

また、未だ原因のわからない「二号機のベントができなかった理由」についても、「原発の耐震設計に詳しい専門家は、この配管が地震の影響で一部損傷して、圧縮空気の漏洩が起きた結果、ベントができなかったという可能性は否定できないと話している。(p.284)」とのことです。

つまり、津波到達前に、重大な損傷があったのではないかということです。

 

また当時の吉田所長が最も恐れていた「格納容器の破壊」が起きなかった要因の一つは、最近の調査結果では、「放射能を密閉するはずの格納容器は、高温・高圧にさらされ、容器の繫ぎ目や配管との接続部分が溶けて隙間ができ、放射性物質を漏洩させたためではないか(p.283)」ということです。

 

つまり、ベントしなくても、高温になった時に、放射性物質と共に、圧力も逃げたのでしょう。また、背筋が寒くなったのは、四号機「燃料プール」の危機回避です。四号機は稼働していなかったのですが、「燃料プール」内には、主に使用済み核燃料が多数保管されていました。もし、水がなくなったら、メルトダウンを起こしてしまうのです。その燃料プールの水が不足したらしい時期がありましたが、それが、なぜか復活するのです。

 

「四号機の燃料プールが満水だったのは、隣に接している原子炉ウェルから水が流れ込むという僥倖に救われていたことが後の東京電力の調査で明らかになる。(p.306)」

 

「定期検査のため、原子炉ウェルとその隣にある機器貯蔵プールには燃料プールとほぼ同じ1400トンもの水が満たされていた。(p.307)」

四号機の燃料プールが無事だったのは、偶然だったのです。

 

非常用のアイソレーションコンデンサーが働いていると思い込んでしまったなどのミスはあるものの、吉田所長以下所員の奮闘と、いくつかの偶然のおかげで、最悪の事態は避けられました。「最悪シナリオ」とは、以下のようなものです。

 

「福島第一原発の半径170キロ圏内がチェルノブイリ事故の強制移住基準に相当し、半径250キロ圏内が、住民が移住を希望した場合には認めるべき汚染地域になると試算されている。  250キロの移住範囲とは、北は岩手県盛岡市、南は神奈川県横浜市にまでいたる。東京を中心とする首都圏もすっぽりと包まれ、3000万人もの首都圏の住民の退避が必要になることを意味した。(p.325)」

 

現場の努力を、しばしばディスターブ(邪魔)したのは、現場外の人たちでしょう。

 

吉田さんは「有識者で原発の運転をしたことのある人は一人もいないと言ったうえで、「本当に僕は大学の先生頼りないと思ったのは、運転わかんないんですもの」と手厳しく専門家を批判した。(p.338)」のだそうです。危機が起きたら、現場を信頼して任せること、現場の邪魔をしないことだろうと思います。本店は、現場からの要請にできるだけ答えられるように体制を整えるということでしょう。それは、危機管理の鉄則かと思います。

 

 

 

 

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