「アドバイスは、せいぜい1セッション1回」 

クライアントのプロセスを信頼するという姿勢を忘れてしまうと、「私でなければ、このクライアントは治せない」という思い上がりを生んでしまうことがあります。これは、カウンセラーが決してやってはいけないことです。そうした態度は、カウンセラーとクライアントの対等性を崩してしまいます。

カウンセラーが教える人、クライアントが学ぶ人という関係性になってしまい、カウンセラーがクライアントさんのペースを忘れて、ついつい押し付けがましいアドバイスをしてしまったりしてしまいがちです。

アドバイスは、悪いわけではないのですが、ほどほどにしないと、クライアントさんの自分で考え行動する力を奪ってしまいます。

CIISの教授でカウンセリングセンター長だったマイケル・カーンは、「アドバイスは、せいぜい1セッション1回」と言っていました。

なんでカウンセラーがクライアントに、あまりアドバイスしないのかというと、第1にクライアントさんの回復する力、成長する力を奪ってしまうことがあるからです。あまりにアドバイスしすぎると、クライアントは、自分で考える意欲を失って、カウンセラーに依存することにすらなってしまいます。また、クライアントが、すでになんらかのアイデアを持っているときにカウンセラーが不用意にアドバイスしてしまうと、クライアントの意欲がなくなってしまうこともあります。子供の頃、「そろそろマンガをやめて、勉強しようかな」と思っているときに、親から「勉強しなさい!」って言われると、やる気を失ってしまう・・そんな経験をお持ちの方もおられると思います。アドバイスのしすぎは、それと同じですね。

カウンセラーが、アドバイスをしすぎたり、しゃべりすぎたりする場合、カウンセラー側が不安を感じている場合が多いと言えるでしょう。なんとか、カウンセラーっぽくふるまわなければと競ってしまうのです。これは、経験の浅いカウンセラーが、よくやるミスです。振り返ってみると、私自身もやってしまったことがあります。

多すぎる押し付けがましいアドバイスは、クライアントのためにやっているのではなく、カウンセラーが自分自身の安心のためにやっているので、クライアントのためにはなりません。

しかし、だからと言って、アドバイスをまったくゼロにした方がよいというわけではありません。特に最初のセッションでは、なんのアドバイスもないと途方にくれてしまう方もいらっしゃいます。また、欧米の場合、クライアントは、あまりアドバイスを求めないのですが。アジア系のクライアントは、アドバイスを求めてきます。これは、文化の違いを反映したものでしょう。日本でカウンセリングをやる場合、クライアントは、アドバイスが無いと不安になったり、途方にくれてしまったり、満足感を得られなかったりする場合が少なくありません。私の場合、最初の数セッションでは、行動面でのアドバイスをしたりします。数セッションを経ると、日本のクライアントさんも欧米のクライアントさんとあまり変わりがなくなり、アドバイスを求めなくなってきます。

クライアントにアドバイスをするとき、行動面の提案をするわけですが、具体的には、簡単にできるリラクゼーション法や自分を観察するやり方をお伝えしたりします。リラクゼーション法は、例えば、不安でパニックを起こしてしまう人に対して有効で、しかもどんなところででもできる簡単な方法をお伝えしたりします。具体的には、足の裏の感覚に注目していく周りからは、だれからも気づかれないでできる方法などを提案します。また、いつもと違う視点で考えてみることをアドバイスする場合もあります。うつや不安になると、「もうだめだ」とか、「どうしよう」など、同じ言葉が頭の中で渦巻き、その言葉に圧倒されてしまうくことがあります。そういう方には、そうした考え方がどのくらい出てくるかを観察してもらったりします。ただ観察するだけで、不安のレベルがかなり低くなる場合が少なくありません。自分自身を観察すると共に、不安のレベルが下がる状態を実感してもらうのが目的になります。

クライアントさんにアドバイスするとき、意識面からのアドバイスは、大抵の場合役に立たないことが多いと言えるでしょう。例えば、うつのクライアントさんに、「気持ちの持ち方を変えるように」と言ったところで、クライアントさんは、戸惑うばかりでしょう。クライアントさんにしてみれば、「気持ちの持ち方をどう変えたらよいのかわからないからカウンセリングに来てるのに・・」と思うに違いありません。

単に「気持ちの持ち方を変えるように」ではなく、どうやったら気持ちの持ち方が変わるのかを、カウンセラーは伝えるべきです。アドバイスは、具体的なやり方にまで言及しなければ、意味はありません。

 

 

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