「「起死回生」 中溝康隆 著 新潮新書」 

プロ野球界で一度は挫折したけれど、そこから復活した人たちの物語。

 

野茂英雄(1989~2008、近鉄~メジャー)は、89年ドラフト会議の目玉選手で、投球フォームを変えないことを条件に近鉄に入団します。当時の監督は仰木監督。野茂のフォームをいじらず、自由に調整させていました。その結果が4年連続最多勝です。

 

しかし、4年目に監督となった往年の大投手鈴木啓示との折り合いが悪かった。鈴木監督は、野茂にあれこれと注文をつけました。しかし、野茂は自分のやり方を曲げません。

 

「近鉄のあるコーチの口癖なんですが、野球を会社にたとえるなら、監督は社長、コーチは部長か課長、そして選手は平社員であると。ヨソの球団はどうなのか知りませんが、こういう考え方にはついていけません(p.44)」という姿勢だったのです。

 

メジャー入りを希望する野茂に対して鈴木監督は、「自己満足、ここに極まれりやで」「世の中、そんなに甘くないやろ。自分の思うようにならんのが人生や。そんな簡単にメジャーでは通用せんのとちがうか。夢も結構やが、自分の力というのもわかっとらんといかん(p.49)」と怒りをあらわにするのですが、結果は、野茂がメジャーリーグで大活躍することとなりました。

 

同じくやがてメジャーにいく吉井理人(1983〜2007、近鉄〜ヤクルト〜メジャー〜オリックス〜ロッテ)も鈴木監督とはうまくいきませんでした。

 

この本にも書かれていますけれど、野茂のやったことは革命でした。

そして、鈴木啓示のような指導は、もう通用しない時代に入っていたのでしょう。

 

その他、江川との後味のよくない交換トレードで阪神に移り大活躍をした小林繁(1972~83、巨人~阪神)や、巨人を終われた西本聖、交通事故で再起不能と言われながら復帰し39歳で2000本安打を達成した大島康徳(1968〜94、中日〜日本ハム)などのビッグネームだけではなく、あまり知られていない選手の復活劇も書かれています。

 

野中徹博(1983~89=阪急~オリックス、94~98=中日~ヤクルト)は、一軍で目が出ず一度引退し、芸能人のチームと戦うテレビ番組などに出ていたのですが、再びプロでやりたいという気持ちが抑えきれなくなり、台湾球界の俊国ベアーズのテストを受け合格し、15勝4敗1セーブの大車輪の活躍をします(p.25)。その後、日本球界に復帰し、ヤクルト在籍中、97年の対横浜戦で初勝利を飾ります。NPB通算2勝です。その2勝はなんとも尊いものに感じます。

興味深い本でした。

 

でも、一つ注文。各エピソードの途中で、毎度のように「男の運命なんて一寸先はどうなるか分からない」と言う文言が出てくるのですが、少々しつこい。

 

 

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