「「同調圧力」 望月衣塑子 前川喜平 マーチン・ファグラー 著 角川新書」 

東京新聞記者の望月衣塑子さん、元文科省事務次官の前川喜平さん、ニューヨークタイムス元東京支局長マーチン・ファグラーさんによる、同調圧力に関する本です。日本のジャーナリズム大丈夫かなと思ってしまいました。

以下は、2018年12月26日の辺野古埋め立て現場での赤土使用の疑いについての望月記者と菅官房長官(当時)とのやりとりです。

 

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望月 沖縄辺野古についてお聞きします。民間業者の仕様書には「沖縄産の黒石岩ズリ」とあるのに、埋め立ての現場では赤土が広がっております。(土砂の積み込みを行う)琉球セメントは県の調査を拒否していまして、沖縄防衛局は「実態把握ができていない」としております。埋め立てが適法に進んでいるのか確認ができておりません。これ、政府としてどう対処するおつもりなのでしょうか。

菅官房長官 法的に基づいてしっかりやっております。

望月 「適法かどうかの確認をしていない」ということを聞いているのです。粘土分を含む赤土の可能性が指摘されているにもかかわらず、発注者の国が事実確認をしないのは行政の不作為に当たるのではないでしょうか。

菅官房長官 そんなことはありません。

望月 それであれば、政府として防衛局にしっかりと確認をさせ、仮に赤土の割合が高いのなら改めさせる必要があるのではないでしょうか。

菅官房長官 今答えた通りです。

 埋め立てが始まった2018年12月14日以降、県職員や市民が現場で赤土混じりの土砂を確認。県は、埋め立てに使用する土砂に大量の赤土が混じっている疑いがあるとして、防衛省沖縄防衛局に立ち入り検査と土砂のサンプル提供を求めた。だが、国は現在に至るまで、必要ないと応じていない。(p.16)

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菅さんは、デジタル庁を発足させるなどいい仕事もしたと言われる人だとは思いますが、この会見はいけませんね。菅さんは、望月さんの質問に全く答えていません。このやりとりを聞いた同業他社の記者から「官房長官、ちゃんと答えてください」という援護射撃があってもいいと思うのですが、そうはならない。会見後、菅官房長官を囲んだ取材(オフレコの懇談=オフ懇)がある(p.29)ため、あまり突っ込んだ質問をすると、後から情報が取りにくくなってしまうということもあるのでしょう。こうしたことが起こってしまうのは、記者クラブの存在が影響しているのではないかと思います。

 

記者クラブは、国内の大手メディアの新聞社やテレビ局などで構成され、中央省庁や国会・政党、業界・経済団体、各地方自治体や警察本部などそれぞれについて、およそ全国に800程ある(p.33)のだそうです。

 

日本のメディアは、記者が独自に調査し報道する調査報道と対局の、記者クラブ制度に象徴されるようなアクセス・ジャーナリズム「権力者からいかに情報を得るか」に、あまりに重きが置かれている(p.132)と、ファグラーさんは指摘しています。メディアのトップが盛んに首相らと会食しているようですし、この傾向は、近年さらに強くなっているのではないかと思います。

 

アクセス・ジャーナリズムによって定期的に安定的に情報が得られるというメリットもあるのでしょうが、情報を得るためには政府の方針に対し意見することもできにくくなります。つまり政府からの同調圧力を受けやすくなるわけです。さらに、記者同士にも自発的な同調圧力が生じる可能性があります。「取材しにくくなるから、余計なこと言うな」と言う空気は記者クラブ内に充満しやすくなるでしょう。

 

ジャーナリズムの独立を維持するために、記者クラブは廃止したほうがいいのではないかと思ってしまいました。「ペンは剣より強し」は、どこへ行ってしまったのでしょう。

 

 

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