第5269回「アイデンティティ・クライシス?」
ちむどんどんの鈴木保奈美さん演じる重子は、なかなか強烈。
しかし、この強烈さ、結構リアリティがあるかもと思います。
多分、鈴木保奈美さん演じる重子の年齢設定は、50代後半。
終戦時には20代前半だったと思われます。
1945年時点で小学生から20代前半ぐらいだった人たちにとって、敗戦は大変なトラウマだったはず。
おそらく、戦前は最も国や軍の思想に洗脳されていた世代でしょう。「鬼畜米英」「電髪禁止」なんて言葉の中で育ち、竹槍でB29をはたき落とすなんてことを信じさせられていた時代に小児期から青年期あたりを過ごした世代です。
敗戦は、大きなアイデンティティクライシスだったはずで、突然梯子を外され空虚感に苛まれた世代です。その空虚感・絶望感は、もう少し上の大人たちとは比べものにならないほど大きかったと思います。上の世代は、うすうす「この戦争やばくね?」と思っていた人も少なからずいたでしょう。しかし、重子の世代は、そんなこと考えも及ばなかった人が多いと思います。
彼らの中には、不安・恐怖からのがれ、ひたすら安全を求める人がいたでしょう。そうした人たちは、例えば「学歴」「家柄」といった補償を求めようとするわけです。結局、前線で死んでいった人たちは、下々のものたちなのですから。
アイデンティティクライシスを起こした人の中には、左翼運動に向かった人も多いでしょう。
また、そうした方向に行かず、歴史研究家の半藤一利さんや保坂正康さんのように、作家の北杜夫さんや加賀乙彦さんのように、あの戦争はなんだったのかを探究する人になっていった人たちもたくさんいるのだろうと思います。
さて、ちむどんどんこれからどうなるんでしょうね?
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