第4873回「「人が成長するとは、どういうことか」 鈴木規夫 著 日本能率協会マネジメントセンター」

 

世界は4つの性質に分類されます(pp.6-12)。

1、単純(シンプル):比較的安定した世界。解決法が特定できる。

2、煩雑(コンプリケイテッド):比較的安定した社会だが、課題や問題の性質が複雑化するため、仮説を立て調査をするなどしないと、解決法が見えてこない。

3、複雑(コンプレックス):「規範」や「常識」が瞬く間に変化する非常に流動的な世界。暫定的な計画や戦略に基づいて実際に行動を起こして、世界がどのように反応するのかを観察し、行動を修正していくべき世界。

4、混沌(カオス):価値観や世界観を全否定するような新たな現実が共同体を覆い、ひとびとの意識を深く混乱させる世界。カオスの世界を少なくとも最低限の理性が意味を持つコンプレックスな世界に向け変質させていくことが必要。

 

世界が複雑になるに従って、より、「自己を俯瞰し、自らの学を舵取りしていくための航海図は必須の道具となる(p.15)」と筆者は言います。そして、そうした航海図を手に入れていくことが、成長なのでしょうが、「段階的な成長においては、皮肉にも、現在の自身の欲求を最終的に否定することが求められる(p.75)」のです。

 

こうした発達段階は、ケン・ウィルバー、カート・フィッシャー、スザンヌ・クック・グロイター、ロバート・キーガンらの理論があり、本書の中で紹介されています。後半(第2部)では、ケン・ウィルバーの理論をベースに、高次の発達段階の能力をどのように開発していくのかについての実践的取り組みを解説しています。

 

アンバー(順応性)からオレンジ(後期合理性)への移行は、他者から与えられた期待や規範や規則に従って自らの思考や行動を律する意識(p.240 アンバー)が、「果たしてそれが今なお真実として信頼に値するのか?」と言う問い(p.241)を発することによって始まります。

 

オレンジ(後期合理性)は、「一人の自律的な個人としてー時として、他者と衝突することや他者から孤立することの可能性を引き受けてー思考・表現できるようになる(p.274)」と言う段階です。この段階の人は、優れた知性を備えているがために、自らの在り方を「鉄壁」の論理に基づいて正当化することができてしまいます。この段階から、その次の後習慣的段階に移行するためには、自分の「弱さ」を開示できること(p.278)にあります。オレンジの段階の人たちは、「理念先行」「概念先行」が生み出す自己への過剰な思いこみ(p.306)から脱却するために、「影(シャドー)」と直面しなければならないのでしょう。

 

オレンジの次の段階はグリーン(前期ヴィジョンロジック段階)です。グリーンには、対象化、拡張、統合の3つの要素(p.341)があります。自分自身が今持っている価値観・世界観(価値観・世界観A)を絶対視せず俯瞰することができ(対象化)、別の価値観・世界観(価値観・世界観B)が存在することを認識し、それに意識を開き、内側から理解する能力を持ち(拡張)、異なる価値観・世界観(A・B)を対象化し関連づけることができる(統合)段階です。しかし、この統合は、A・Bの横並びであり、「水平的な発達」と言えます。

 

さらに高次のティール(中期ヴィジョンロジック段階)は、より高い視座からの統合が実現した段階(垂直な発達)です。その結果、多様な関係者が存在する場合、それぞれの視点をもって注意深く向き合い話に耳を傾けるとともに、異なる視点をもつ関係者がいかにすれば合意や妥協に至ることができるのかという問題について、全体を俯瞰的に眺めながら、現実的な可能性を模索していく(p.374)ことができるようになります。グリーンからティールへの移行に際しては、多くの場合、自己の存在基盤そのものを失うような感覚を背負いこむ(p.356)実存的危機に直面します。それは、自分自身を作り替える死と再生のプロセスだと思います。

 

ティールの次に来るのが、ターコイズ(後期ヴィジョン・ロジック段階)で、より高い視座から世界を俯瞰的に眺めるために意識を高めていく上昇のダイナミクス(Eros)とそのようにして把握された世界に積極的に関わろうとする下降のダイナミクス(Agape)が融合されている(p.412)のです。つまり目覚めた者として、あらためて虚構の世界に戻り、そこで得た知見をお伝えする段階です。

 

その次の段階は、インディゴ(スーパー・インテグラル段階)です。この段階は、「この世界には、自らに与えられている感覚器官を通して把握することができない真実が存在していることを認識したうえで、そうしたものに自己の意識を謙虚に開いていこうとする態度や実践を堅持する(p.442)」というものです。

 

面白くて、途中で止められなくなって、全部読んでしまって、こんな時間になってしまいました。

 

 

<対面カウンセリング>

対面カウンセリングの際は、
・マスクに着用をお願いします。お持ちでない場合は、受付よりお渡しします。
・カウンセラーもマスクを着用して、セッションを行います。
・セッション前に、体調や渡航歴などについて、簡単な問診票に記入をお願いします。
・飛沫防止対策をしております。
・セッション中でも、必要に応じ換気をさせていただきます。

 

<オンラインカウンセリング>

電話・Skype・ZOOMによるカウンセリングも行なっております。ご活用ください。

 

 

【マンガでやさしくわかるオープンダイアローグ】は、好評発売中です。

 

 

カウンセリングのご相談は ハートコンシェルジュ(株)まで!

 

 

オンライン 無料カウンセリングセミナーはじめました。

 

次回は、7月9日(金)20時から。

 

 

 

 

 

第5回(7月2日)の動画です。
アメリカの臨床心理学大学院での経験と、なぜカウンセラーになろうとしたのか?についてです。