第237回「ほうれんそう??」

以前石油会社に勤めていた時、課長さんが新年のあいさつで、「今年は、是非とも『ほうれんそう』を徹底していきたい」とおっしゃっていました。僕が、まだ新人に毛の生えた程度のときのことです。

「えっ??『ほうれん草??』・・・会社は、社員の健康を気遣って、『ほうれん草をたくさん食べなさい』ってことかな??」なんて思ったのですが、どうも違うらしいことに気づき、まわりをきょろきょろ見回したのですが、諸先輩方は、みなさん「ふむふむ」といった感じで頷いてらっしゃるんですね。

後から知ったのですが、「ほうれんそう」とは、「ほうれん草」のことではなく、「報連相」で、報告・連絡・相談という意味でした。

なんでそんな単純なことを省略して妙な用語にしなきゃいけないのかな??と、当時感じたものです。最近、久しぶりに、この「ほうれんそう」という言葉を聞きました。

また、そういえば、「KYT」なるあやしい言葉もありました。
KYTとは、「空気が読めないとんでもないヤツ」という意味ではなく、危険予知訓練の意味なのだそうです。K=危険、Y=予知で、なぜか、Tだけ英語で、トレーニングの意味なのだそうです。むむむ、これも妙ですね・・。

なんだか不思議な業界用語って多いですね。臨床心理学の世界でも、妙な言葉があります。

帰国直後の7年ほど前に、はじめて臨床の勉強会に出席したとき、事例発表の後の質疑応答で、質問者が、「『ロール』は、やったのですか?」と質問し、「この事例において、『ロール』は、やっていません」と発表者が答え、ベテランらしいおそらくえらい先生が、「この場合、『ロール』は、やっておいた方がいいね」と、おっしゃっていました。

僕は、てっきり『ロール』は、『ロールプレイ』のことかと思ったのですが、どうも違うらしいということに、ディスカッションの中で気づきました。『ロール』とは、実は、心理テストのひとつである『ロールシャッハ』のことだったのですね。

まるで、成海璃子さんのコマーシャル「ミラバケッソ」の世界です。

僕は、「『ほうれんそう』って何?」、「なんなんだ『KYT』って??」、「『ロール』とは、なんじゃそりゃ?!」という感じでとまどい、まわりの皆があたりまえのように使っているのを見て、異次元の世界にきてしまったような気持ちになり、最後は、そんな常識的な言葉を知らないことに罪悪感を感じました。

しかし、なんとなく、ああいった業界用語っぽい言葉って、使うのが憚られてしまいます。

「ミラバケッソ」のコマーシャルを見ながら、そんなことを考えました。あのコマーシャルは好きですけどね。コマーシャルを作った人は、僕と同じような異次元の世界に迷い込んでしまったような体験をしたことがあるのではないかな?と、思いました。


向後善之(ハートコンシェルジュ・カウンセラー)
ハートコンシェルジュ


向後善之(ハートコンシェルジュ・カウンセラー)へのカウンセリングのご相談は... http://www.heartc.com/