第148回「カテゴリーエラー」


強すぎるグループ規範を巧妙に作るカテゴリーエラーとは、「発言者の論点の次元とまったく異なる次元の意見をかえすことによって、論点をずらすこと」を示します。


カテゴリーエラーの例としては、例えば以下のようなものがあります:

1)部下の提案に対して上司が、「そういう意見を出すのは10年早い」と言う。


2)「古くなった豚肉に漂白剤を入れるのはまずいですよ」と追求している部下に対し、「君は、会社が倒産しても良いというのか!!」と、社長が恫喝する。


3)会議で「Aという方法ではなく、Bという方法を採用したほうが効率がよいのではないかと思う」と発言した同僚に対し、「みんなAという方法で、がんばってきたんだからサ。今のまま行こうよ。そうじゃないと、これまでがんばってきたことが無駄になるじゃないか」と言う発言が出る。


上記の1)の上司は、本来部下の【提案の内容についての意見交換】すべきところであるのに、意見を述べるのは生意気だといわんばかりに、【部下が意見を言うときの姿勢】について言及しています。つまり、【提案の内容についての意見交換】の場が、【部下が意見を言うときの姿勢についての意見交換】の場に、いつのまにかすりかわってしまっているわけです。


また、2)の例では、【不正の追及】が【会社の経営状態】に話題がすりかわってしまっています。


そして、3)の例では、【効率的な方法に関する議論】が、【精神論】に変わってしまっています。


このように、カテゴリーエラーは一見正当な主張に見えますが、詳細に検討すると、その論点がずれていることがわかります。論点が、無意識的な心理的防衛により巧妙にすりかえられているわけです。上記の3つの例では、カテゴリーエラーをしている側は、自分の不利な方向に話題が進んでいくこと避け、自分の正当性を証明する方向に話題を転換させてしまっています。


このようなカテゴリーエラーがあった場合、その職場の中には、「上司や社長に意見を言うことはタブー」、「みんなと違う提案をするのはタブー」といったグループ規範が出来上がるでしょう。

その結果、

●結論が、本来のテーマからずれてしまう。

●感情論にひっぱられやすくなる。

●リスキーシフト、コーシャスシフトを引き起こす。

といった状況を生み出す可能性があります。


リスキーシフトとは、グループの方向性が過激な方向に向いてしまう傾向を示し、逆にコーシャスシフトとは、グループが何もしない方向に動いてしまう傾向を示します。


前述した例では、1)は、リスキーシフトもコーシャスシフトも起こす可能性があります。部下がみんな上司のイエスマンになって、上司の方針をより過激に推し進めていくかもしれませんし、部下は、なにも意見を言わなくなるかもしれません。


2)は、リスキーシフトを招く可能性があります。社長に意見を言えなくなり、古い豚肉には、どんどん漂白剤を入れてしまうといったことを起こすかもしれません。


3)では、みんな改革をしようとする気が起こらなくなり、問題は先送りされるといった、コーシャスシフトを引き起こす可能性がありますし、Bの方法を主張した人は、社内いじめの対象にさえなってしまうかもしれません。


カテゴリーエラーをしないためには、議論や意見交換の目的を明確にすることです。また、自分自身が、なんの目的でこの発言をしようとしているのか、ほんの数秒でよいですから、考えてみるのもよいでしょう。



向後善之(ハートコンシェルジュ・カウンセラー)

ハートコンシェルジュ


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