第79回「言葉が通じなくても・・」

共感は、心の非常に深い部分、自分と相手の間の境界線が希薄になり、あたかも主観が、行き来するような感覚の場で起こります。こうした、自分の主観が他人の主観と混じりあうような場を、「間主観的な場」と言います。そして、他人を主観的に感じている状態を間主性と言います。

例えば、自分のすぐ横に、とても悲しそうに泣いている人がいるとします。あまりに悲しそうなので、その人がなんで泣いているのかわからないけれど、自分も涙してしまうというようなとき、そのふたりは、間主観的な場におり、共感が生じていると言えるでしょう。

僕と妻で義母をモニュメントバレーに旅行に連れていったことがあります。そこで、先住民族のナバホ族の人が太鼓をたたきながら歌を歌ってくれたのですが、そのとき、ナバホ語がわかるはずがない義母が、「意味はわからんけど、なんだか、悲しい曲やねぇー」と、涙を流していました。彼女は、ナバホの人の感覚をダイレクトに感じ、共感したのでしょうね。


共感は、「・・・だから」という理由のもとに起こるのではありません。別な言い方をすれば、言葉や行動や思考に対して共感が起こるわけではなく、感覚や感情のレベルで、しかも言語的な理解が生じるよりもっと深いレベルで生じるものです。

そうした間主観的な深いレベルでの感覚や感情のやりとりがあった瞬間に、はじめて共感が起こるのだと思います。だれにでも共感の能力はありますが、いつでもできるわけではありません。カウンセリングの場では、カウンセラーに偏見や思い込みがなく、自分に正直でいるときに、共感が起こり得ます。


向後善之(ハートコンシェルジュ・カウンセラー)

ハートコンシェルジュ


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