第64回「偶然の力(その3)」

他の交代人格たちが、いくら呼びかけても、人格Dは出てきてくれません。その時のグループセッションに参加していた人格EやFは、「Dは、人見知りだし、めったに出てこない」と言います。んー、こまったと思っていた時、僕の携帯の着信音が鳴ってしまったのです。


僕は、カウンセリングの時は、携帯の電源を切るようにしていたのですが、その時は、うっかり忘れていたのです。「まずい!」と思って、電源を切ったところ、人格E(この人格は、男性です)が、「きっと、Dからの電話だよ」と言いました。僕は、人格Eに(身体的には、クライアントCさんに)、電源を切った携帯を渡しました。人格Eは、自殺願望の高まっていた人格Dと話をし、僕の言葉を伝えてくれました。人格Eによれば、人格Dは、僕と直接話すことは拒否しているとのことでした。


この変則的なグループセッションの結果、人格Dの自殺願望は沈静化し、結果的にクライアントCさんの危機は、回避されました。

あの時、いつものように僕が携帯の電源を切っていたら、そして、携帯の電源が入っていたとしても、たまたまあの時間に電話がかかってこなかったら、Cさんの安全を確保することは、もっと困難を伴うことになったに違いありません。


向後善之(ハートコンシェルジュ・カウンセラー)

ハートコンシェルジュ


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