古賀茂明氏 

古賀茂明氏

 

 高市早苗首相が誕生した。いくつもの意味で、日本の歴史に残る大きな出来事だ。

【写真】日本政治の右傾化路線の復活を印象づけた政治家がこちら

 まず、日本初の女性首相である。さまざまな評価はあるだろうが、それでもなお新しい歴史の一ページを開いたと言って良いだろう。

 次に、公明党との四半世紀を超える長期の連立が解消された。自民党の右傾化のスピードを落とすブレーキ役と言われたが、ついにその役割を放棄せざるを得なくなった。

 また、日本維新の会という新たなパートナーの閣外協力を得ての船出となった。維新が政権運営に関わるのはこれが初めてだ。これも歴史的な転換点である。

 さらに、石破茂前首相が自民党の中では最もリベラルな立ち位置にあり、いわゆる「安倍政治」の終了を目指して路線転換を図っていたのに対して、高市氏は安倍晋三元首相の後継者を自任する。内閣官房参与に安倍元首相の筆頭秘書官だった今井尚哉氏を起用するなど、要所に安倍政権と関わりの深い官僚・元官僚を就けた。高市首相の誕生は、終焉を迎えたと思われていた安倍政治を復活させ、より強化するという大きな意味を持つ。政治の「大逆流」である。

 しかも、閣外協力でという違いはあるものの、政権運営の協力者が公明から維新に代わり、その役割が自民右傾化のブレーキ役からアクセル役に大きく変化した。自民右傾化路線をさらに決定づける出来事だと言える。

 このように見ると、高市首相誕生は、日本政治の右傾化路線の復活というだけでなく、安倍政権時よりもさらに右寄りで、しかもブレーキ役が存在せず暴走する恐れがある「安倍政治極右化バージョン」の誕生だと位置づけるべきかもしれない。

 ただし、これには異論もある。私がよく知る著名な政治学者のA氏は、高市氏は、右翼的思想に共鳴はしているかもしれないが、その本質は「右翼的ポピュリスト」に過ぎず、本当の意味での保守、あるいは右翼とは言えないと指摘した。高市氏は、社会全体が右傾化している流れに乗るため、あるいは安倍氏の歓心を買うために右翼的言動をしていたが、それは高市氏の確固たる思想を反映したものではないというのだ。