
環境省が7月を「熱中症予防強化月間」と定め、注意を呼びかけています。
最近、通り掛かった男性2人を殴るなどし重軽傷を負わせた男性に、神戸地裁が
「熱中症による錯乱で心神喪失状態にあった」と無罪を言い渡していた裁判があったそうです。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130529/trl13052914550003-n1.htm
聞いたこともない稀な事件だと思いますが、毎年、梅雨明けには熱中症で救急搬送される人が急増し、1か月間だけで2万人前後に上っており、他人事とは思えません。
また、重度の熱中症では死亡率は30%以上にもなり、暑い場所にいるときだけでなく、
室内や夜間でも若い人からお年寄りまでが熱中症になっているので、普段の生活でも水分補給と体温調節は気にかける必要があります。
熱中症の何が怖いかというと、体内でおきている“血液の奪い合い”のバランスが崩れることです。
人は体温を下げるために、“発汗”と“皮膚での熱交換”、主に2つの方法を行っています。
人の体温調節のリモコンは脳の視床下部にあり、
視床下部の指令によって、
<寒いとき>
血管を収縮⇒皮膚から熱が逃げるのを少なくする
<熱いとき>
血管を広げる⇒皮膚からできるだけ熱を放出
発汗⇒気化熱による体温の低下を促す
などの体温調節反応を行い、常に体温が37度程度に保たれるよう、バランスよくコントロールしています。
<体温調節の血液の流れ>
体温が上昇=血液温度の上昇
↓
↓(情報伝達)
↓
脳の視床下部(体温調節中枢)
↓
↓(指令)
↓
情報に基づき、皮膚の欠陥を拡張
↓
皮膚の血流量増加
↓
熱の放射量増加
↓
体温低下
この血液の流れ、普段は絶妙なバランスで調整されていますが、
実は運動(活動)している時、私たちの体では、常に2つの相反する生理現象の板挟みによる問題がおきています。
それは、“血液の奪い合い”という問題です。
A.運動を継続するため筋肉組織への血流を確保
↑
血液の奪い合い
↓
B.熱放散のために必要な皮膚への血流
つまり、運動のための筋肉への血液循環と
体温調節のための皮膚への血液循環との間で“血液の奪い合い”が起こっているのです。
皮膚への血流が増加
↓
大量の血液が皮膚に留まる
↓
心臓へ戻る血液の量が減少
同時に、心臓への血液の戻りが減少しないよう
内臓の血管を収縮
↓
内臓への血流量を減少
このような生理機構がバランスよく働いていれば、運動(活動)を続けることができますが、
運動強度が高すぎたり、環境温度が高すぎたり、もしくは低すぎたりするとバランスがくずれてしまいます。
重度の熱中症では、
体内の生体機構でおこる血液の奪い合いのバランスがくずれる
↓
循環不全や高熱による中枢神経の機能不全
↓
臓器障害を引き起す
↓
循環障害は発汗不全を生じ高熱を悪化させ、臓器障害をさらに悪化させるという悪循環が発生
これにより、死亡の確率もとても高くなります。
熱中症は、軽度の段階での早期発見・早期治療がとても重要だといわれているのは、このためです。
[参考]
大分大学医学部人間環境・社会医学講座
(人間生物学) 倉掛 重精
http://www2.odn.ne.jp/oitaken-sports/spo_ika/spo_ika_netu.html
熱中症における臓器障害の抑止には、水分補給と体温を下げることがキーポイントです。
熱中症の救急処置は「FIRE」(ファイヤー)と呼びます。
F(Fluid)・・・液体(水+塩分)の経口摂取、または点滴
1.意識があれば、スポーツドリンクなどを飲ませる。意識が混濁していればできるだけ早く点滴を開始する
I(Ice)・・・身体の冷却
2.衣服を脱がせる
3.氷嚢または冷えたカンジュース等で首筋・わきの下・足の付け根など大きな動脈が触れる部位を冷却
4.氷嚢または冷えたカンジュース等で首筋・わきの下・足の付け根など大きな動脈が触れる部位を冷却
5.うちわや扇風機で風を送る
R(Rest)・・・運動の休止・涼しい場所で休む
6.涼しい場所で休ませる。可能であればクーラーのある部屋へ移す
E(Emergency)・・・「緊急事態」の認識・119番通報
7.119番通報・救急車の手配
8.意識状態のチェック
9.体温のチェック(現場での体温は熱中症診断に役立つ重要な情報です)
10.医療機関に到着したら、倒れた現場での状況、気温、スポーツの強度・練習時間などを担当医に話す
[参考]
安岡正蔵 他「熱中症I~III度分類の提案」救急医学23巻9号、1,119-1,123、1999
5月27日から6月2日までの1週間で、熱中症で230もの人が搬送されており、消防庁も注意を呼びかけています。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130604/dst13060412310008-n1.htm
雨対策には、天気予報があるように、熱中症対策には、暑さ指数というものがあり、こちらも参考になるかもしれません。
環境省熱中症予防情報
http://www.wbgt.env.go.jp/
気温だけではなく、湿度、日射量を勘案した上で、人が熱中症になりやすい状態を示す指標が暑さ指数です。
例えば「同じ気温でも、湿度が高ければ汗が気化熱として蒸発しにくく体温が下がりにくいため危険度が増す」などの指標です。
