◆仮に地方のしがない占い師がドラッカーの『マネジメント』を読んだら
~ドラッカー的占いビジネスの在り方5~



◆12、「集中とは、『真に意味あることは何か』『最も重要なことは何か』という観点から時間と仕事について自ら意思決定をする勇気のことである」
『経営者の条件』P.152

成果を上げるために欠かせないのは「集中力」である。同時並行して物事を完成させるよりも、ひとつひとつのことを完成させていくほうが効率的といえる。そのためには、集中できる環境を作ることが大事である。そこで、取り組むべきでない仕事を決めて「捨てる」ことが必要になる。

<占いビジネスとしての実践>

(NG)
顧客の満足のため、「今日の運勢」を無料で毎日丁寧に占って作成し、サイトもしくは何らかの媒体にアップしていく。

基本的に無料で提供する情報は無料だけの価値しかないため、顧客の反応が薄くやりがいが無くなる。また、他にやるべき仕事が入ったときに仕事量が多すぎるとパニックになる。

(Good)
「今日の運勢」を無料で毎日提供し続けるのは大変なので、「今月の運勢」や「今年の運勢」を作成し、おおまかにその月の運勢を情報媒体にアップしていく。

緻密なものよりもある程度おおまかな情報を無料で提供することにより、顧客はその詳細が知りたくなる。その結果、詳細を知るために鑑定の依頼が多くなる。


◆13、「コンピュータのおかげで、これまでは反応するだけだった人たちのきわめて多くが、真の意思決定者、真の執行者とならなければならなくなる」
『経営者の条件』P.209

現代はコンピュータ社会となり、日常生活においてコンピュータはもはや必須と言えるまでになってきている。しかし、コンピュータは与えられた作業を繰り返し遂行することは得意だが、指示なしでは動かない。一方で人間は自分で判断し、応用して物事を考えることができる。それぞれ一長一短だが、コンピュータはあくまで道具に過ぎない。最終的に決定するのは我々人間の役目なのである。

<占いビジネスとしての実践>

(NG)
占い師自身の直接鑑定は避け、占いのシステムや鑑定内容を詳細に組み上げて、コンピュータで鑑定できるようにプログラムすることで、占いビジネスに着手する。

「エンターテイメント」としての占いと考えると成功であるが、ひとりひとりに即した繊細な鑑定内容を提供することはできない。おおよその傾向は掴めるものの、情報から決められた結果を提示するだけである。

(Good)
占い師自身も直接鑑定をしつつ、あくまで占いをエンターテイメントと割り切る部分において鑑定内容をシステム化しコンピュータにプログラムして提供する。

占い師自身の持ち味をプログラムの文面から確認できるため、顧客において判断することが可能になる。また、不特定多数の顧客に向けて情報を発信できるため広報媒体として有益といえる。


(チームワーク編)

◆14、「決定において最も重要なことは、意見の不一致が存在しないときには決定を行うべきではないということである」
『経営者の条件』P.198

「決定する」ということは数ある選択肢の中から選びとるということを意味する。自分ひとりで決定すると、そこには「自己満足」「独りよがり」という落とし穴がある。そこで、決定に至るまでは複数の人と意見を交えることが必要になってくる。特に重要なのは、同調する意見ではなく反対意見である。対立意見は今ある意見をさらにより良いものにしてくれるための研磨剤である。対立意見の中にこそより良い決定の糸口が隠されているのである。

<占いビジネスとしての実践>

(NG)
自分は占い師なのだから、同業者である他の占い師に占ってもらうことは避ける。自分の顧客のためにもあくまで自分の占いの世界観を大切にする。

自分以外の占い師がいったいどのような鑑定方法を選択し、どういったアドバイスをしているか、ひいてはサービスや料金体系がどうなっているのか分からないまま、意固地に我を通してしまう。

(Good)
同業者であるからこそ、自分の占いの在り方と違う点を学びに行くべく、他の占い師のところへ占いに行ってみる。

謙虚に、しかし自信を持って同業者の在り方を見つめることにより、今の自分の占いの長所と短所がわかる。そうすることで、自分を修正したり相手の良いところを取り入れることができる。そして、占い以外のサービスや料金体系のことにも敏感になれる。


(サクセス編)

◆15、「構造変化は、その産業の外にいる者に例外的というべき機会を与える。ところが、産業の内にいる者には同じ変化が脅威と映る」
『イノベーションと企業家精神』P.80

どの業界でも人気・不人気の波はつきものである。しかし、その業界内で働いている人にとっては、なかなかそれを感じることは難しい。産業や市場の構造変化は内部ではなく、むしろ外部の人のほうが気づきやすいのである。つまり、内部にとっては脅威となるものが、外部にとってはチャンスになりうる。変化はこれまでのスタイルを変えることを余儀なくする。変化に対して適応を惜しまない組織がそのチャンスを掴むのである。

<占いビジネスとしての実践>

(NG)
占いのイメージダウンに繋がるような報道がマスメディアでなされたので、売上げが下がることを覚悟しつつ、ほとぼりが冷めるまでしばらく待つ。

「イメージダウン」という変化の波に乗れない(察知して分析しない)ことにより、そこから生まれる新しいニーズに気づけない。その結果、今後同じようなことが起きたときに対応できない上に、適応力のある占い師に出し抜かれる恐れがある。

(Good)
占いのイメージダウンに繋がるような報道がなされたので、いったん占いから離れてみて、他のアプローチ、例えば心理学やセラピーの観点などから新しい切り口を考えてみる。

これまで培ってきた占いの知識と、新しく開拓した知識とが融合しあって自分独自の新しい領域が生まれる可能性がある。もしもそれらが互いに相反するものだとしても、さらに上位のビジネスアイディアに繋がる契機になるかもしれない(止揚;アウフヘーベン)。結果、変化に強い占い師になれる。