パート4からの続き
シーザー・ミランは奥様のイルージョンが出て行ってしまったとき、“自分は父親や叔父がやっていることと同じことをしているだけなのに”と思います。生まれ育った環境で見てきたことをしているだけの悪気のないシーザーは、どうしたら家族を取り戻せるか考えます。相手を責める策を思いつき、イルージョンの悪いところを上げていったシーザーは彼女を落ち着かせるどころか、逆効果。荷物をまとめて出ていく決断をされてしまったのです。
シーザーがいくら泣いて謝っても許してもらえず、結局、マリッジ・カウンセラーのところに一緒にカウンセリングを受けに行くことに同意することを約束にイルージョンは半年間の別居から戻ってきたそうです。
二人はカウンセラーのところに行くと、まずは、イルージョンがシーザーに望むことをリストにして述べていったそうで、それをノートに取っていたシーザーが発見したのは、イルージョンが望んでいるのは、まるで犬が望んでいることと同じだ!ということ。
そうやって、シーザーが犬を理解するように、イルージョンのこと、人間のことを理解しだすようになったのです。
“Dog Whisperer”(ザ・カリスマドッグトレーナー)を見ている人はお分かりのように、“問題は犬ではなくて飼い主だ”とシーザーはいいますが、当時の彼は、人に対しては、自分も問題の飼い主と同じだったのです。
シーザーはイルージョンとの結婚を通してはじめて人の習性を理解できたのです。1995年に“もし、イルージョンが出ていかなかったら決してウィル・スミスとジェイダ・スミスのロッドワイラーたちや、オプラ・ウィンフリーなどのために仕事をするようにはならなかっただろう”と語っています。
こうやって危機を乗り越えたものの、2010年の2月に16年共にした最愛のダディが亡くなり、翌月にこちらも16年を共にした奥様のイルージョンから電話で離婚をファイルしたことを告げられます。
この時、シーザーはヨーロッパツアー中で、イギリスに滞在中。その後のツアーはすべてきっちりこなしたそうです。この時期、ショーを終えると、ホテルのジムに行き、数時間、時には午前2時までエクササイズをしていたそうです。そうでもしないと、その時期を平静を保って仕事ができなかったのでしょう。
いくらエクササイズで気を紛らわしても、“すべてを失った。生きる目的が無くなった”と思ったシーザーは大量の薬を飲んで自殺未遂をはかりますが、幸い助かります。生かされていると思ったシーザーは薬ではなく、エクササイズと仕事に専念することで、ダウンした状態から這い上がります。
そして、“Dog Whisperer”はもう終わりにして、新しい番組に取り組みたいと申し出ます。それが、今放送している“Leader of the Pack”(リーダー・オブ・ザ・パック)です。これは捨てられた犬たちを引き取りたいと申し出ている飼い主候補の中から、ベストな飼い主を見つける番組です。一度はシーザーも“捨てられた”と思った身です。捨てられた者にもやり直す価値があるはずと、自分と捨てられた犬たちに二度目のチャンスを与えることにフォーカスしたかったようです。
すべての経験が今のシーザーに生きているはず。さらに慈悲深く、人を理解していくシーザー。彼のこころと身体のトレーニングも永遠に続くのでしょう。
生きていた頃のダディ↓