今日は結城紬にガード加工はどう?という観点からのマニアックなお話です。

最近、パールトーン社長のお話を聞く機会がありました。

パールトーン加工というと、着物をお仕立てする方や、リサイクル着物などを手にする方でもその商標は見たことがあると思います。

知らない人だったら、スコッチガードは聞いたことがあるかもしれません。

撥水加工のことを表しますが、それぞれのメーカーさんによって名称が異なります。

スポーツ用品などには撥水加工ってありますが、着物にもそういうことができるのです。

 

パールトーン社は、なんと95年の歴史があるそうです。

もともとは海軍の軍服の為に開発されたのだと言われていてビックリです。

海軍と言うと、真っ白い軍服がイメージされて、それをキレイに保つために役立ったのかなと思ったりします。

水ははじくので、雨などやお食事の時などに水分が飛んできてもはじいてくれるそうです。

油分は少し沁みるようですが、糸の深いところまでいかないので、自分でお手入れしても取れやすいようです。

実際に、実演されている様子をYouTubeでリアルタイムで見ました。

 

パールトーンの場合はパールトーン社で独自に作っている溶剤だそうで、あちこちの着物屋さんで「ガード加工」という一般名称で色々な薬剤が使われたりするようです。

特別に商標などを取っている以外は、オリジナルというよりも溶剤のメーカーから購入してガード加工をしていることが多いようです。

各社によって、保証などがついていたり、いなかったりと違いがありますが、同じような効果を狙ったものだと言うことです。

 

それで、そのガード加工ですが、結城紬の老舗、奥順さんではその加工をあまりお勧めしないという話を聞いたことがあります。

ふだん着物の著書などで有名な、きくちいまさんも、結城にはガード加工はしない方が良いと聞いたと言われたいたし、私は奥順さんに洗い張を出す機会があり、その時にそんな話を聞きました。

では何故なのか?実はああそうなんですね~という感じで聞いていなので何故なのかについて突っ込んで聞かなかったのです。

次回に、結城に行くことがあったら、是非質問をしたいところではありますが、もしかしての答えが昨日見つかった気がしました。

結城紬というと、現代では非常に高価な印象があり、

「結城紬は三代にわたっての財産になる」

「結城紬は三代着て馴染んでいく」と言われたり、

「大店の奥様は最初は女中に着させてやわらかくしていく」なんていう話もあります。

まあ、現代で女中さんに着させる人はいないでしょうが、最初は硬くて何回か洗い張りをして仕立て直していくことでノリが落ちてきてやわらかくなるから着やすくなるということのようです。

 

昔は、各家庭で着物を解いて洗い張りをして反物の形に戻して、再度縫って着物にすることを繰り返してきたのです。

なので、縫物が上手というのは大事な要素だったのですね。

ところが、上手でない人ももちろんいますし、そういう場合には仕立て屋さんがいて仕立てを内職でしたりしていました。

お金持ちの人で呉服屋さんでやってもらう人もいたのかもしれませんが。

 

話は逸れますが、私が印象的に残っている縫物の話として、5千円札にも登場している樋口一葉さんがあります。

樋口一葉さんの妹さんは仕立てがとても上手な人で、反対に一葉さんは仕立てが下手だったらしく、妹さんが縫物で家計を随分と支えたというのを何かの本で読んだことがあります。(真実かどうかは分かりませんが)

その話は妙に印象に残っていて、縫物の下手な私は、人間はそれぞれに才能の出所が違うものなのだと思ったわけです。

話を元に戻すと、

そのガード加工について、賛否両論があります。

 

洗い張りをするある職人さん曰く、ガード加工をしているものは洗い張りに非常に手間がかかってしまうとのこと。

洗った後にしんし張りという幅を整えることをして、糊をひくのですが、その糊は水溶性なのでそれをぽろぽろとはじいてしまい、1回では糊が上手く乗らないと言っていました。

実際に映像でやっていて、見事に水玉の状態になって布の上を滑っていきます。

通常の手間以上にかかるので、そこではガード加工したものの洗い張りは追加料金をいただいているとのことでした。

 

そのため、特に水に当たりやすい人やそういう場面での着物以外にガード加工する時はよく考えてした方が良いと思うとの見解でした。もちろん仕立て直しを一切しないのであればよいのですが。

 

一方、ある染み抜きや色かけなどの染色補正の方が言うには、ガード加工をしていると糸の奥まで入り込まないので、染み抜きなどがとても楽にできやすいと言われていました。

ガード加工を嫌がるのは、染み抜き職人の仕事が減るからであって、お客様の利益を考えたら、することを推奨すると言っていました。

 

同じ悉皆に関わる人でも全く反対の意見が出ていて、これはなかなか興味深いなと。

そして、結城紬に関しては、糊をとる作業は通常の着物とは異なります。

糊に小麦粉をつかっているのは結城紬だけらしいですが、そのため、独自の地入れという洗って糊を落とす職人さんに作業をしてもらうと、とてもふっくらとしてやわらかくなります。

しかし、完全の糊を落とすのではなく、通常では少し硬さを残して何回か洗い張りをして良くなるようにするのが通常らしいです。

私は、自分一代しか着ませんから、着こんだ感じに糊は落として下さいと頼んだら、とても着やすい感じで上がってきました。

しかし、基本は何回も洗い張りをしていくという考え方なので、ガード加工をしてしまうことで、その後の洗い張がしにくくなるという洗い張り職人さんの言葉を考えると、ガード加工はしないでというのは、そこにあるのかもしれませんね。

 

人によっては、ガード加工をすると風合いが変わってしまうからという方もいますが、それは柔軟加工が施されている反物の場合だと、溶剤×溶剤の反応によっては変わってしまうことがあり得るらしいです。

ちなみに、パールトーンの場合にはほとんどそういうことは今までないとのことでした。

あと、溶剤の種類というか、それによっても異なるかもしれません。

着物に関するマニアックな長いお話を読んでいただきありがとうございます。

 

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