今回から民法の家族法と呼ばれる領域、「親族法」に次ぐ二つ目、「相続法」に入りましょう。
相続は皆さんもうおなじみですよね。ドラマのテーマになったり色々と想像力を掻き立てられます。でも、現実世界では骨肉の争いとか聞き捨てならない話も出てきます。
いずれにせよ相続は、世間の重要テーマであることに変わりありません。H&T係長は、人間臭くてとても面白いと思います。
“相続法は、私と一緒だからだいじ、だいじ、でもぶんなげないでね”*(実物はムギュっとしたいほど可愛いアイアイ/栃木県出身)*「相続法は私と一緒だから大丈夫、大丈夫、でも適当にしないでね」の意
参考:相続界の曼陀羅
(相続法で学ぶテーマたち)
人(生身の人間)が亡くなった時に、その人が生前持っていた財産的な位置や権利・義務を全部ひっくるめて他の人(生身の人間)が引き継ぐこと、それが相続です。
ただ、亡くなった方に固有の身分的な権利や義務は相続の対象になりません(例えば医者や弁護士、もちろん行政書士も、亡くなった後にその資格を子供さんが相続するということはできませんよね)。
なお、言葉の定義ですが、亡くなった人から相続を受ける人が相続人、亡くなった人は被相続人と「被」がつきます。
以下事例形式で相続の基本的な知識を学んでいきましょう。
●相続は人の死を原因とし、死亡した時から開始(もしくは、失踪宣言を原因とし、死亡とみなされた時から開始)する。
事例:Aさんは妻子とともに相当の財産を残してある日突然姿を消した。以後何年間も行方不明であるが、果たして妻子はAさんの財産を相続できるか。
☞生死不明になって7年が経過すれば、妻子など利害関係人は家裁に請求して失踪宣告(しっそうせんげん)をしてもらえます。失踪宣告があれば、7年が満了した時点で死亡したとみなされ、その時点から相続が開始します。(普通失踪:民§30、31)
一方、戦争や船の沈没など死亡の原因となるような事件・事故や災難など(=特別の危難)により生死不明の場合は、これら特別の危難の去った後1年を経ても生死不明ならば家裁に失踪宣告をしてもらえます。その場合、特別の危難が去った時点で死亡したとみなされ、その時点から相続が開始します。(特別失踪:民§30、31)
※(参考)以上のように失踪宣告で死亡とみなされれば相続は開始します(ちなみに婚姻も解消)。しかし、水難や航空機事故、火災などでご遺体が確認できない場合、戸籍法§89により警察など官公庁による報告を基に市町村が戸籍に死亡を記載できる制度があります(=認定死亡)。認定死亡は失踪宣告と違い、事故などから1年を待たずになされます。他方、死亡と「みなす」のではなく死亡と「推定」なので、反証があれば覆ります。 なお、東日本大震災では2011年6月法務省の運用により、ご遺体が見つからなくても死亡届を提出できる特例措置がとられ、届出人の申述書提出など一定の要件を満たせば死亡届が受理されました(相続は死亡届の受理/戸籍記載により開始)。
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●相続人は権利能力を持たねばならない(ケース1同時死亡の推定)
事例:資産家のお父さんと息子さんが一緒に乗っていた飛行機が墜落、不幸にも二人は亡くなってしまった。果たして息子さんはお父様の資産を相続できるか。
☞相続人には被相続人が亡くなった時に、権利能力が必要です(すなわち、その時点で生きていなければなりません)。したがって同時に死亡した人の間で相続は発生しません。
事例のような場合、どちらが先に亡くなったか不明ですが、この場合、二人が同時に死亡したという推定がなされます(=同時死亡の推定/民§32の2)。
よって、事例の息子さんはお父様を相続できません。しかし、息子さんにお子さん(お父様から見た孫)がいる場合などは、お孫さんなどが息子さんが代わり相続する制度(=代襲相続/だいしゅうそうぞく)があります。※代襲相続はのちほどまなびましょうね。
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●相続人は権利能力を持たねばならない(ケース2胎児の権利)
事例:妊娠中のA子さん、ご主人とお腹の子にB子ちゃんと命名し、ふたりで話しかけたりしていた。しかし、不幸にも突然ご主人が亡くなっってしまう。果たしてお腹のB子ちゃん、お父さんを相続できるか。
☞生まれる前の胎児には権利能力はありません。しかし、相続については生まれたものとみなされます(民§886)。これは、胎児が無事この世に生を受けたならば相続できることを意味し、残念ながら生まれなければ相続はしません。(無事出産という条件付き)
事例ではB子ちゃんが無事生まれて来たならば天国のお父様から相続できます。(しかし万が一、生まれて来れなかったとしても、その時は天国で優しいお父様と一緒のはずです)
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(ワンポイント)学習のポイント:
ところで、相続の学習でH&T係長が大切と思う点を2点あげておきます。
一つは、相続の順位が重要になる点です。順位は親族としての遠近で決まります。従って、第322回配信で学んだ親族の範囲を適宜振り返ってくださいね(そんなに難しくないので心配はありません)。 https://ameblo.jp/headtail2/entry-12682867322.html
もう一つは、既に学んだ民法総則や債権法などの知識も、必要に応じて関連付け振り返って考えてみることです。相続と民法総則や債権の関係に限らず、今学んでいることと、過去学んだテーマとを関連付けて考える習慣をつけることは、当然、過去の復習にもなりますが、相乗効果(よりしっかりした理解と記憶の定着)も期待できます。
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●次回、相続人でないのに相続人のように振舞う人(表見相続人)がいる場合、本当の相続人はどう立ち向かえばよいのか、見ておきましょうね。
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研究室は今、ダジャレバトル勃発の気配?
教授:源君、この間、“教授の扶養は不要です”そうダジャったそうだね?
源有紀:は、はい、ダジャりました。
教授:それじゃ、私からも一つ、“君のボディーはNobody”
源有紀:あっ、それ父が「ずぅーと昔」よく言ってました!
教授:(少しむっとした表情で沈黙)
“ゼミ終わったし、はい、先生も一杯!”(取り入るのが上手過ぎる源有紀(みなもとゆき)ちゃん)
●ヘッドライトとテールライトHead & Tail
https://ameblo.jp/headtail/
こちらもどうかよろしくお願い致しますね!!!
●日本政府を通じた東日本大震災義援金受付