前回、動産の物権変動の対抗要件である引渡し(占有の移転)の基本4パターンを見ました。
今回は、少し発展するので、どうか頭を切り替えてくださいね。
●物権変動の対抗要件は不動産なら登記、動産なら引渡し。でも、不動産の場合、相手が登記を具えていても、その相手がきちんと権利を持っていない場合(無権利の場合)、その人を信じて取引した人は保護されません。
一方、動産の場合、相手が引渡しを終えていれば、きちんと権利を持っていない場合でも、その人を信じて取引した人は保護され、最終的に権利を得ます。
これらのことを、不動産の公示(登記)には公信力がなく、動産の公示(引渡し/占有の移転)には公信力があると言います。
動産の場合は「公示を信じたものは救われる」のですね。無権限の人から物を譲渡されても、自分は権利者だと言い張れる、凄いパワーです。
でも、考えてみれば、動産の取引というのは不動産よりも数が多く、逆に公信力を認めないと、それこそ、世間が混乱します。お店の買い物すら安心して出来なくなりますよね。そこで、民法は以下のように考えたのです。
真の権利者の利益 < 外見を信じて取引した人の利益(取引の安全)
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●この動産の物権変動の時の公信力を制度化したのが即時取得(または善意取得)です(民§192)
即時取得が成立するには、動産(現に登記や登録されている車や船などの動産を除く)であること以外にも次の条件があります。
1)相手が無権利者であること:例えば、売主が所有者でなく実は賃貸借の借主だったとか、売主とさらに前の売主との契約が無効や取消しになった場合などがあります。
ただし、相手(側)が無権利者でも保護されるべき場合(制限行為能力者、無権代理された本人、要素の錯誤をした人など)があり、これらの場合には相手(側)の保護のために即時取得を認めません。
2)「取引」により占有を始めたこと:「相続」はどうでしょう。相続は取引ではないですね。だから相続では即時取得は成立しません。
3)占有開始時に「平穏(強暴なやり方でなく)、公然、善意、無過失」であること:平穏、公然、善意は民§186①で、また判例では無過失も推定されると解釈しています。だから即時取得を主張する側がこれらを立証する必要はありません。
(・・・以下一休みです・・・)
余談ですが前回掲載した当事者関係図に登場するCさん役は、自称「お店はバイト、本業はあくまでもダンサー」のジェニーさんです。
ジェニーという名前は、映画「フラッシュダンス」のヒロインを演じた女優のジェニファー・ビールスから取ったらしい。
映画「フラッシュダンス」(1983/コロンビア)のジェニファー・ビールスさん
●次に即時取得で問題となるケースを2点見ておきましょう。ちょっと難しく感じるかも知れませんが「占有改定でいう占有」をしていても即時取得される恐れがあるし、また、こちらから即時取得の主張もできないという点がポイントかと思います。
1)占有していても即時取得を主張されるケース:
前回見た通り引渡し/占有の移転には4パターありました。4つの図を載せましたが、Aから目的物の譲渡が行われ、占有の移転を受けたBは対抗要件を具えています。Bが占有している以上は、誰か別の人(例えばC)が登場して即時取得するなど一見できそうにないです。
ところがです。占有移転の4パターンの中には、Bが占有していると言っても、現物がBの手元に無い場合がありましたね(いわば法律上占有は移転してるけど、現物はAの手元に残っている場合です)。占有改定と指図による占有移転がそれでした。
これらの場合には、Bが引渡しを受けていても、全然事情を知らないCが出て来て、実際に物を手元に持っているAからこれを譲渡(=二重譲渡)されれば、Cから即時取得の成立を主張される可能性があります。
2)占有していても即時所得を主張できないケーズ:
もう一つは、上の図のように、物がAからCへ譲渡されていて、Bはこの無権利者となったAから譲渡(売却)を受けたものの、物はまだAの手元に残っている場合(Bの占有が占有改定や指図による占有移転の場合)、B自身が即時取得を主張できるかどうかという観点で考えてみましょう。少し頭を切り替えてくださいね。
判例は結論的に、Bの占有が占有改定によるものの時は即時取得を認めません。しかし、指図による占有移転の時は即時取得を認めています。
●次回、盗品や遺失物(忘れ物や落とし物)でも即時取得されてしまうのか見ておきましょうね。
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