2019年明けてます、おめでとうございます。

今年の読書目標は、絶対好きなはずなので読もう読みたいと思いつつ1冊も読めていないスティーブン・キング作品と原田マハ作品を読むことです。

マイペースにやっていきます、どうぞよろしく。

 

昨年それなりに読書はしたものの、ブログの感想記事はロクに書いてませんでした。

自分で気づいてびっくりしました。

なので2018年に読んだ本の感想を今、書きます。

来年のことを言うと鬼が笑うと言いますが、新年早々去年を振り返るとどうなるんでしょう。泣いちゃう?

まあ平成ももうすぐ終わるしバチは当たらんよね。

 

 

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『おばあちゃんのごめんねリスト』

(フレドリック・バックマン著 坂本あおい訳/早川書房)

 

エルサは7歳。おばあちゃんは77歳。破天荒なおばあちゃんは、ずっとエルサの友達だった――「変わった子」と言われるエルサの、ただ一人の、強い味方だった。
でも、おばあちゃんは亡くなった。
おばあちゃんに託された謝罪の手紙を、エルサは代わりに届けはじめる。宛先は、よく知っている人も、全然知らない人もいて……
『幸せなひとりぼっち』の作家が、変わった子だった大人たちにおくる物語。
(公式サイトより)

 

作者で選んだわけではなく、面白そうだなあと読み始めてから『幸せなひとりぼっち』の作者だと気づきました。ナイスフィーリング。

 

老人と子ども、喪失と再生。

私の中では鉄板と言うべきテーマです。

エルサとおばあちゃんの絆に最初から最後まで心をつかまれました。

学校でいじめられたエルサに対するおばあちゃんの行動、良いなあ。

筋の通った奇行だ。

 

何より良かったのは、エルサとおばあちゃん二人の世界が、二人だけのまま終わらなかったこと。
 

おばあちゃんの死後、残された手紙を届けるうちに、エルサは自分をとりまく人々の過去に触れていきます。

おばあちゃんの秘密を知り、おばあちゃんの娘(エルサのママ)の秘密を知り、同じ建物で暮らす住人たちの秘密を知る。

そして彼らの秘密が、エルサ自身の秘密であることを知る。

すべての手紙を届け終えた時、ああ、みんな繋がっているんだと思えました。

 

過去と現在の繋がりと言い、明かされた過去が現在にもたらす変化と言い、この作者の描く物語は本当に構成がニクいです。

読んでいるうちに登場人物の背景が浮かび上がってきて結びついて、最後には愛おしくなる。

嫌なヤツも怖い犬も、赤の他人だと思っていた人も。

ウルリカ、アルフ、黒いスカートの女、ブリット=マリーでさえも。

 

祖母と孫の間にいる母(娘)のことがちゃんと書かれてるの好きなんですよ。

エキセントリックなおばあちゃんと、「変わった子」であるエルサのシンパシー。そこに交われないママ。

そのママを二人の敵役にしないで、ちゃんと家族として、ママにはママの考え方があることを書いた作者のまなざしが好きです。

 

おばあちゃんがおばあちゃんになる前、どんな人間だったか。

なぜ「ごめんね」の手紙を送るのか。

わかった時には泣きそうでした。

この本に出てくる大人はほとんどが母や父であり、母や父になり切れなかった人で、彼らの抱える過去はとてもさびしい。

そういう大人たちへの救済、あるいは許しの物語でもあるのでしょう。

 

最後の手紙の封筒のにおい。

この文章がもう。最高の幸福感でした。

 

エルサのお気に入り作品としてハリポタとX-MEN、『はるかな国の兄弟』が出てくるのが嬉しい。

『はるかな国の兄弟』はアストリッド・リンドグレーンが書いた児童文学です。

ハリポタに比べると古い作品なんですが、なんでこれが出てくるかって言うとリンドグレーンもバックマンもスウェーデンの作家だから。

 

ハリーやアメコミヒーローに憧れる現代っ子エルサを描きつつ、自国の名作も大切にする作者の心意気に私は敬意を表したい。

グリフィンドール(獅子寮)のマフラーを巻いたエルサがレイヨンネッタ(獅子心)兄弟を引用するのめっちゃ胸熱じゃないですか。

新旧ファンタジーの、受け継がれるヒーローの系譜を確かに見た……。

 

序盤の死と終盤の死、二つの死があるのも『はるかな国の兄弟』へのオマージュか。

ウルス、頼もしくて可愛いよ。

 

女の子のエルサがおとぎ話の中で、姫でも女王でもなければ〈選ばれし者〉でもなく、〈騎士〉になるのがいい。

お城を守って。とおばあちゃんは言った。

おとぎ話が現実とリンクしていく展開も相まって、女の子がヒーローになる姿にグッときました。

 

おばあちゃんの生き方や家族の在り方も含めて、根底に「多様性の尊重」がある気がします。

ハリポタをiPadで読んでいるエルサと、紙媒体の本が好きと言う女性と、オーディオブックを聴いているパパ。

物語への触れ方にも細かな多様性を感じます。
 

車の名前(車種?)にやたらとこだわるのも作者ならではだなあ。