読了ホヤホヤの感情を残しておきたいので、本の感想は読み終えた直後にスマホに打ち込んでいます。
誤ってデータを消去してしまって焦ったのですが、既にパソコンに転送しておいたんだった。

というわけで事なきを得た感想記事です。

 

 

12人の蒐集家/ティーショップ (海外文学セレクション)/東京創元社
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『12人の蒐集家/ティーショップ』
(ゾラン・ジヴコヴィッチ著 山田順子訳/東京創元社)
 
「よろけヴァイオリン」、「惚れ睡蓮」、「陽気な骸」、そして「詰めこみモンキー」……変わった名前の菓子ばかり扱う謎のパティシエのケーキショップ。明け方に電話を掛けて「夢」のチェックをし、高額での買い取りを申し入れる謎の男。人を監禁して「希望」を自分に譲れば解放すると主張する誘拐犯。12人の異様なコレクターの姿を描く連作に、喫茶室を舞台とした迷宮的物語「ティーショップ」を併録。東欧のボルヘスと名高い著者が贈る奇妙な驚きに満ちた13の物語。(Amazonより)
 
 
コレクターを題材にした短編連作集。
本編と装丁がマッチしてて良いですねー!
こういう本を手に取ると、やっぱり紙の本は素敵だなって思います。
 
主人公自身が蒐集家である話と、主人公が蒐集家に出会う話とがあります。
蒐集家が集めるのは、日々、爪、今際の人のサイン、夢など、ほとんど超現実的。
不可思議な世界なんですが、読んでいて「こういう人いるかも」と思いました。
「蒐集家」という人種の心理や傾向がファンタジックに誇張されている一方、リアルでもあるなと。
 
登場する蒐集家は、独自のこだわりを持ち、神経質なくらいコレクションに没頭する人ばかり。傍から見ていると滑稽なくらい。
でも、蒐集によって生活の秩序や心の安定を得るってのはわかる気もします。
 
コレクション内容はもちろん収集手順、保管場所や収納方法が多様で面白いです。
どんなものを収集するかに、なんとなくその人の人となりが表れているようにも思う。
 
何に価値を見出すかは人それぞれ。
大多数の人にとってはつまらないものでも、コレクターには垂涎モノだったりする。
そして取るに足らないと思って手放したものが、実は必要不可欠なものだったことに気づかされる。
物事の価値と、それを手放す代価を問われている気がしました。
 
●日々
特別なケーキを食べるために、自分ならどんな日々を支払うか考えてしまう。
ケーキのネーミングと幻想性がお気に入り。
●爪
最後の一文が強烈。呆れるっていうか何ていうか。
ジョジョ四部の吉良吉影を思い出した。
●ことば
共感と満足感を覚える。
●夢
この出来事そのものが夢だったのではないかと疑わせるような話。
 
この4篇が好きですね。
散々コレクターたちの執着を書いておいて、最後に「コレクションズ」を持ってくる作者は意地が悪い。
全ての話に登場する紫が印象的。
 
併録されている「ティーショップ」は千一夜物語っぽくて好み!
物語のお茶は憧れるけど、自分が語り手の中に入っていくのは躊躇してしまうなあ。
 
 
14番目の金魚/講談社
¥1,728
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『14番目の金魚』(ジェニファー.L・ホルム著 横山和江訳/講談社)
 
ある日突然、天才へんくつ科学者のエリーのおじいちゃんがやってきた。おじいちゃんは若返りの薬(クラゲ)を発見したという。疎遠だったおじいちゃんと食事したり、学校に通ったりするうちに、科学への興味がわき、エリーの世界は一変する! おじいちゃんとエリーの仲間たちは、研究所に奪われた若返り薬(クラゲ)を手に入れる奪還計画を実行にうつすのだが…。(Amazonより)

小学校中・高学年向けの児童書です。
 
 
私ゃ老人と子どもの交流モノにめっぽう弱い。好きですこの本。
おじいちゃんが若返る以外そんなに大きな事件が起きるわけじゃなく、若返り薬奪還作戦も割とあっさりした展開です。
本書の魅力はそういう冒険よりもむしろ、科学を通した女の子の視野の広がりとか、気づき、みたいなものなんでしょう。
 
可能性を広げることだったり、価値観を見直すことだったり、科学と倫理のバランスだったり……エリーの姿を追いながら、気づけば読者も考えている。
 
主軸はあくまで、少年になった老人と孫の日常です。
おじいちゃん、頑固で独善的な態度にイラッとする場面もあるんだけど、憎めないし考え方が面白い。
キッチンと研究室を重ね合わせるのは私にはない発想だ。
 
博士号にこだわるおじいちゃんと演劇好きのお母さんの親子関係とか、
そんなおじいちゃんが見せるおばあちゃんへの愛情だとか。
ちょっとしたエピソードが微笑ましい。
ゴスファッションの男子がすごく気のいい子だったのが高ポイント。
 
科学の二面性(世界を幸せにも不幸にもし得る)を、きちんと書いてくれているのが嬉しかったです。
特にオッペンハイマーに対するエリーの視点の変化。
私たち日本人は子どもの頃から原爆について一定のことは教わる(授業だけでなく、絵本やアニメやいろいろなメディアで)けれども、アメリカの子どもの認識ってこんな感じなのかも。
 
「14番目の金魚」の意味を知った時、感動しました。
 
読者対象は9~12歳とのこと。
この本を読んだ子がその子なりの14番目の金魚に出会ってくれればいいと思うし、
大人として子どもに向かい合った時、自分は14番目の金魚になれるのだろうか、と内省的な気持ちにもなりました。