※ネタバレあるよー。
『グスコーブドリの伝記』を観てきました。
言わずと知れた、宮澤賢治原作のアニメ映画。
冷害によって家族を失ったブドリが、様々な人と出会いながら成長し、人生を終えるまでの物語です。
賢治作品が好きで、ますむら先生が好きで、『銀河鉄道の夜』が好きで、満を持して観に行ったこの映画。
すごく良かったです。
「良かった」って言う人と、「わけがわからない」って言う人に分かれそうですが、私は好きです。
派手なシーンは少なく、全体的に静かな雰囲気。
手に汗握るようなアクション入れると、せっかくの宮澤賢治が台無しになりそうなので、この雰囲気には好感を持ちました。
まず映像が綺麗!
てぐす工場の繭の木や、森を出たブドリが目にする棚田、夢の中の物見塔、森の緑、夕暮れのイーハトーヴ、金色に光るオリザの穂。
どのシーンも美しく、出来るだけまばたきしないように見てました。
青が良かったなあ。繭の木の青い光や、塔に入る時の青とオレンジのコントラストが印象に残ります。
塔の場面は特に幻想的でしたね。
ブドリが覗きこんだ、CGとも実写ともつかぬ怪物は、最初ナマハゲかと思ったのですが、どうも違うような……。
岩手の化け物か神様の類?
ストーリーは「100%原作通り」ではないですが、このくらいの改変はアリかなと。
『銀河鉄道の夜』とリンクしているのが嬉しい。
始めの方に『雨ニモマケズ』の朗読を入れたのは、まさにグッジョブ。
あの詩のデクノボーこそブドリであり、賢治の志した姿なんだなあ。
学校の先生、凛とした素敵な声だと思ったら桑島法子さんだった。
道理で上手いわけだ。
冷害の描写にしっかり時間が割いてありました。
両親が追い詰められていく過程と「森へ行って遊んでくるぞ!」には少しゾワッとさせられた。
そしてネリが重たそうに瞼を動かす様子が痛ましかったです。
ネリ。彼女の行く末が原作と違っていて驚き。
原作の再会シーン、希望があって好きなんだけど……。
ニ度と会えない方が、ブドリの自己犠牲への決意に説得力が出るかな、とも思う。
『永訣の朝』を思い出してしまうなあ。
欲を言えば、両親の墓を見に行くシーンを入れてほしかった。
父親が、(きつい表現だけど)発狂して子どもたちを捨てたんじゃなく、てぐす工場の主に後を託して死んでいったんだと信じたいので。
コトリをただの人さらいではなく、もっと妖しい存在として描いたのは好印象です。
昔は子どもを攫う妖怪をコトリと呼び、悪い子には「子取りに攫われて、サーカス団に売られてしまうよ」と脅し文句を言った。
ブドリの夢の中でネリが見世物にされていたことから考えて、そういう言い伝えがコトリのモチーフになっているのではないでしょうか。
同時に、死に近づいた者を迎えに来る存在=コトリだとも思うし、もしかしたらネネム≒コトリなのかも?
いずれにせよ彼によって、物語の幻想性が増している気がします。
「銀河ステーション~」と車内放送が入った時はワクワクしました。
こんな感じで作品世界の繋がりが示唆されるの好きなんだよー。
憶測ですが、『千と千尋の神隠し』が好きな人は、この作品も好きになるはず。
あれも「良かった」って言う人と「わけがわからない」って言う人に分かれるよね。
彼岸の世界の描かれ方が、ちょっと似てる気がするのです。
この物語は、と言うかブドリの最期は、ハッピーエンドとかバッドエンドとか、そういう枠では括れない。
「僕はどうなっても構わない」、『雨ニモマケズ』のリフレイン、そして流れる「生まれ来る子供たちのために」。
ここらへんで、前にいた年配の女性はボロ泣きしてたっぽいし、私もうるっときてしまった。
EDがさ、昔の曲のはずなのにぴったり合ってるんだよ。
ブドリ、口数は多くないけれど、赤ひげや局長に「はいっ」「はいっ」と返事をして仕事に励む姿の健気なことよ。
サンムトリ山を見て、目に涙をためるシーンにグッときました。
あれは溶岩の赤い光に対する感激だったのか、自分が誰かを守れたことへの喜びだったのか。
ますむら先生のコメントにある「ブドリが放った青白い熱」という表現、ああまさしく、と思った。
気になったこと。
・ヒデヨs……赤ひげが憎めないおっちゃんで和んだ。クーボー博士は予想以上にひょうきんだった。
・なぜだかわからないが、冷害描写の中では誰もいなくなった学校のシーンが一番こたえた。
・パンフレットにブドリ語訳が載ってるので、黒板の文字が気になった人は買うべし。
・最後らへんの、街中を行き交うひとたちがチラッと映るシーンにパンツ君がいた?
・緑の服着て帽子かぶって煙草吸ってたような。でもてぬぐい巻いてなかったしなあ、別猫か?
・とにかくブドリが可愛い。お目めぱっちり猫。
・トマトのスープ食べたい。
子ども向けだと思って観に行くと裏切られた気持ちになるのでご注意を。
話を追うのに想像力を働かせる必要があること。
宮澤賢治の思想と、彼の作品の知識が必要なこと(なくてもいいけど、あったほうが楽しめる)。
派手さ、明快さに欠けること。
以上の点から、「アニメだし、かわいい猫だし、何やら道徳的な感じだし、子どもに見せるのにちょうどいいわ~」という感覚で観に行くのはオススメしない。
でも、ずっと記憶に残る作品だと思うのでお子さんにも観てほしい。
じんわり沁みるいい映画でした。
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