魔法少女12 | どぅばの倉庫

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 次の日は朝から、そうね、あなたたちと同じように、結構早い時間から橋本さんを訪ねたの。

「さて、ばあさんのことか。何から話すかのう」
「あ、あの…その前に気になる事が…」
「なんじゃ?」
「あの、おじいさんが知ってるかどうかはわからないんですが…なぜ『魔女』って呼ばれてるのかって思って…男の場合は『魔法使い』なんですか?」

 アキラが言うには、別に「超能力者」でもいいんじゃないかって。だって、「魔女」だと悪い人みたいでしょう?

「なるほどの。まあ、ワシの知っている限りでは『魔女』の能力は女限定らしい」
「えっ!そうなんですかっ?」
「ふむ。そのへんはなぜかは知らん。そういう話じゃ。あと、ずーっと昔になるとわからんが、ちょっと前までは『不一致』と呼ばれとったらしい」
「不…一致…?」
「もしかしてWitchですか?」
「何それ?」
「おお、ようわかったの。何のことはない、英語を聞き間違えたか、わざわざ字をあてたのかってところじゃ。それ以前はなんと呼ばれていたのかはわからん。おそらく、奇術師とか…まあ、そんなとこじゃろ。ばあさんが会ったのも『魔女』だったと聞いとる。別の『魔女に関係した人』ってのは男だか女だか聞いとらん。『不一致』というのはその人から聞いたらしいが、まあ、どちらの話にも魔法を使う男は出てこんかったそうじゃ」

 私たちも他の魔女に会うことがあるのかしら?なんてことも話したんだけど、結局よくわからなかったの。それはそうよね。魔女さんから聞いた話を私たちにしてくれてるだけなんですもの。

 でもね、突然ポンッと手をたたいて、「じゃが、ワシらが考えた結果、わかったこともある」って。

「まあ、わかったというか、おそらくこういうことじゃろうって思っているだけじゃがの。ときに、小さい魔女さんよ」
「あ、はい。藤原…です…」
「ふむ、藤原さんとやら、お前さん、どんなことができる?」
「あの…物を熱くしたり冷たくしたり、燃やしたり、風をおこしたり…あと、物を濡らしたり乾かしたり、怪我を治したり…電気がビリビリってなったり、えっとそれから…」
「なんと!そんなにいろいろできるのかい?たいしたもんじゃ」

 橋本さんはすごく驚いてたわ。私達は『魔女』ならみんなできることって思っていたの。でもね、魔女さんは怪我を治せるってのが主な能力で、他にはね、ちょっとだけなら物を暖めたり冷やしたりできたそうよ。でも、その能力の「強さ」って言えばいいのかしら?チアキの方が強かったみたい。

「はっはっは、こりゃばあさんの自慢話はできんのう。まあいい。で、その魔法なんじゃが、その中のいくつかにどういう原理でそうなっとるのか予想をたてたんじゃよ」
「ほ、本当ですかっ?」
「ああ、例えばの、小さい魔女さんほどの力はないにせよ、ばあさんもお茶を温める程度のことはできたんじゃ。これは、ばあさんが手のひらから熱を出しとった」
「わ、私の手も熱くなります…」

 チアキはその力が強いから、何かに火をつけることもできるみたい。魔女さんにはできなかったそうよ。魔女の力も個人差があったのね。

「じゃあ、なんで手が熱くなったりするんですか?」
「そう思うじゃろ?ワシらも不思議だったんじゃが…人間の体ってのはな、熱を出すことができるじゃろう?」
「えっと、風邪ひいた時とか…ですか?」
「それじゃよ。要するにその人間そのものにある能力を都合よく調節しているだけなんじゃないかって思ったんじゃよ」
「ええっ?そんなことが…?」
「まあ、なぜできるのかは知らんが、確かに風邪をひいた時に熱が出るのは、風邪の元になるウィルスをやっつけるためじゃ。そういった能力の延長なんじゃないかとな。人間の脳ってやつは、実際に使われているのはほんの一部分じゃ。普通の人が使っていない部分、そこら辺に秘密があるんじゃないかってのがワシの考えじゃよ」

 そういう話はね、その頃の私たちでも聞いたことがあるわ。今ではちょっと考え方が違うかもしれないけど、人間は脳が持ってる力をすべて使っているわけではないって所は同じね。

「ばあさんが得意としていた『怪我を治す』能力も、本人のそれについては恐らく人間の自然治癒力を強めたものなんじゃろう。で、他人に対しては何らかの方法、あるいは力でその人の自然治癒力を高めたんじゃよ。そう考えると、あの異常な食欲も説明がつくんじゃよ」
「魔女さんもだったんですかっ?」
「そう、ばあさんだけでなく、歴代の魔女たちは皆、大食いだったらしい。」
「でも、何でそれが魔法と…?」
「実はの、ちょっとした怪我ならわからんのじゃが、大きな怪我をばあさんの力で治してもらった人は、十人が十人、その直後ものすごく食べるんじゃ。峰時さんも例外ではなかった」
「えっと、それが何か…?」
「人間は何もないところから熱を出したり傷を治したりはできんじゃろう?要するに、魔法を使うには『エネルギー』が要るんじゃよ」

 目からウロコというのはこのことね。本当かどうかは別として、私たちのモヤモヤを晴らしてくれる一言だったわ。チアキもそう言われてみれば思いあたるふしがあったみたい。一生懸命魔法を使わないように隠してた、でも、無意識で魔法を使うこともあった、だからたくさん食べる日とそうでない日があったのね。

「お前さんがたの言う『風を起こす』というんはばあさんにはできなかったが、これは何らかの方法で手元の気圧を変化させとるんだろう」
「気圧ですか?」
「気圧はわかるか?天気予報なんかで聞くじゃろう。風はな、気圧の高い方から低い方に空気が動くから起こるんじゃよ」
「おじいさんすごーい!」
「はっはっは、こう見えても理科を教えとったんじゃよ」
「先生だったんですか?」
「もう、辞めてから二十年近く経つがの」
「他のもわかるんですか?」
「うむ、電気はの、これも人の体に元々そなわっとる。脳波なんて言葉を聞いたことあるじゃろ?あれは電気信号なんじゃ。物を濡らすにも『水』なら人間の体には豊富にある。空気中にもな。物を乾かすのも、周りから水分を奪うことができれば説明がつく。ばあさんにできた程度の物を冷やす魔法は、恐らく気化熱、って言ってわかるか?水分が蒸発するときには周りから熱を奪うんじゃ。その原理だと思っとったがの。お前さんたちの言う『物を凍らせる』ほどの力は得られん。まぁ、これも気圧を操る力の応用じゃろう」

 なるほどなるほどって、アキラは目を輝かせて聞いていたわ。圧縮された空気をどうとかこうとか…ごめんなさいね、私ではうまく説明できないわ。理科の教科書にも載っているようなことみたいだから、後で調べてみてね。

「しかし、小さい魔女さんは本当に何でもできるんじゃのう」
「他の魔女さんはできなかったんですか?」
「ワシが聞いた限りじゃ、たいていどの魔女も得意なものが一つあって、まあ、ばあさんの場合は怪我を治すってことじゃの。で、あとはたいして役に立たない程度の魔法じゃったよ」
「私、どこまでできるのかなあ?」

 その頃のチアキは、まだ自分の能力を把握しきれてなかったわ。もちろん、どんなことができるかってことなら、いろいろと試してはいたんだけど、じゃあ、どのくらい熱くできるのか?とか、どれほど強い風を起こせるのか?とかね。今度、どこか人目につかないところで試してみましょうって、そんな話をしてたの。

「まあ、確かに試してみんことにはわからんとは思う。じゃが、気をつけねばいかん」
「何をですか?」
「さっきも言ったように、魔法を使うにはエネルギーがいるじゃろう?もし、気付かずに自分の限界を超えてしまったらどうなる?」
「…どう、なりますか?」

 チアキのとっても不安げな顔を覚えているわ。私だって、えっ?魔女さんが亡くなったのももしかして…って思ったわよ。

「実はワシにもわからん」
「えー?」
「ばあさんができるのは『怪我を治す』じゃったからの。ばあさんが治せんかもしれんぐらいの怪我人ってのは、たいていすぐに救急車で運ばれる。峰時さんの時は、たまたま居合わせただけじゃ。まあ、あのくらいでも大丈夫だったようじゃが…要するに、怪我を治すには怪我人が必要じゃが、能力の限界を超える怪我、あるいは一度に大勢の怪我人には会ったことがないからわからないんじゃよ」

 わっはっはって大きな口をあけて笑ってたけど、チアキの方は笑い事じゃなかったわね。何でもできるチアキは、いつでも限界まで挑戦できるんですもの。

「だから、試すのも一日少しずつにせんといかん。いや、もしかすると大丈夫かもしれんが、それは魔女にしかわからんじゃろう。大事をとっておいたほうがええ」
「魔女さんは、その、食べたらすぐに回復したんですか?」

 私にはアキラの質問の意図がわからなかったわ。あなたたちはどうかしら?つまりね、食事を取れば、それがすぐにエネルギーになるわけじゃないでしょう?食べたら食べただけ、もちろん体重は増えるけど、すぐに太ったりはしないわよね。

「それもわからん。ばあさんは確かに魔法を使った後は大食いじゃったが、疲れて魔法が使えんという事態は経験したことないんじゃ」
「そうですか…じゃあ、そのことも頭に入れて試さないとですね」
「なんだかんだ言って、それでも結局は、魔女のことは魔女にしかわからんようじゃの。しかし、お前さんは賢いのう」

 もちろん、アキラのことよ。チアキはどうだかわからないけど、私はね、実はほとんど理解できなかったの。私にはその後の魔女さんとの馴れ初めとか、普段の生活とか、そういった話の方が興味深かったわね。