子どもの頃の話。
東京下町で育った我々の遊び場は造成中の空き地か稲荷神社の境内だった。
空き地はいつかは重機が入り遊べなくなる、安定の遊び場はやはり神社の境内。
カン蹴りや高鬼、キャッチボールや野球の練習までしてた。
昭和40年代は子どもの数が多い、境内に行けば誰かしらいたものだ。
母親たちも安心、夕方になっても子どもが帰ってこなければ神社に行けば良い。
「晩ご飯よ、早く帰ってらっしゃい」
夏休みの田舎でもそうだ。
近くのお寺が遊び場。
昼は鬼ごっこ、夜は肝試しの舞台になる。
いつだって神社やお寺は子どもの遊び場だった。
いつからだろう、神社やお寺は初詣か慶弔の時にしか訪れなくなった。
子どもたちが境内で遊び回るようなことはしないのだろうか?
「灯籠が倒れたらどうするの?」などと親に止められているのか?
いずれにしても最近は神社やお寺で遊ぶ子どもを見なくなった。
さて昨日、三重県松坂にある「八雲神社」に番組の取材でうかがった。
社務所で行われる「ご当地カルタ大会とコマ作り」を収録するためだ。
市役所の方や地元企業の方が事務局になり準備設営。
神社やお寺のスペースを有効活用するというwebサイトを運営する社長が会の進行を行う。
集合時間になると子どもたちが集まって来た。
半分以上が親に連れてこられている、昔は子どもだけで集まったものだが時代が違う。
24人の子どもたちが本殿で宮司さんに促されて「二礼二拍手一礼」の作法でお参りする。
こんな経験はあまりないのだろう。
その後、社務所で賑々しく会が開かれた。
宮司さんにインタビューすると現状を吐露してくれた。
「子どもたちが遊びに来ることなんてほとんどないんです」
「神社やお寺は後継者問題を抱えています、後を継ごうという人がいなくなっているのです」
なるほど、子どもたちだけではなく大人たちも神社やお寺に行かなくなり「檀家制度」が成り立たなくなっているそうだ。
「7、8つの神社を面倒みている宮司さんは多いですよ」
驚きである、宮司さんは神社を掛け持ちして面倒を見ている。
神社やお寺の経営状態もかなり厳しいようだ。
檀家さんが減ってしまえばそりゃそうだろう。
日本古来の文化の危機をまた一つ見つけてしまった。
現時点でも厳しい経営状態であれば子どもたちが大人になる頃には一体どうなってしまうのだろうか?
少子高齢化社会が進むこれからの日本では宗教的な支えも大いに必要になるはずだ。
「お葬式の時にしか行くことないなぁ」ではいざという時の作法も費用も皆目検討がつかない。
災害支援の拠点として、地域コミュニティの拠点として、また子どもたちが安全に遊べる場としてもう一度境内を見直す必要があるのではないだろうか?
今回の取材のきっかけとなった「かすてら」https://castera.jp (運営は株式会社佛英堂)はそのような志の元に努力している。
日本の文化の起点である神社やお寺にいつも明るい笑い声が響くような社会になるよう、我々もできることを応援しようと強く思った。