映画 『波伝谷に生きる人びと』
監督・我妻 和樹からのメッセージ
『波伝谷に生きる人びと』上映日時: 8月22日(金) 18:00-

今回みなさんに観ていただく映画『波伝谷に生きる人びと』は、宮城県南三陸町の「波伝谷(はでんや)」という小さな漁村に生きる人びとの、2008年3月から震災当日にかけての日常を描いたものです。
もともと東北学院大学の学生時代に、民俗学研究の一環で出会ったこの波伝谷ですが、その出会いはその後の僕の人生を良くも悪くも大きく変えることになりました。
それだけ波伝谷の人びとの姿が、当時の僕には魅力的に映ったのだと思います。
海や陸の恵みとそこでの人のつながり。面倒なことも多いけど、それが生きがいでもあるという大きな矛盾を孕んだ豊かで複雑な世界。
「土地とともに生きる」ということが一体どういうことなのか。
波伝谷という一つの地域社会の中で、互いが深く関わりあい、ときに葛藤しながら生きている人びとの姿を、その瞬間を生きる人びとの表情と言葉をもって伝えたい。
そうして映像の下積みもないまま、僕の映画製作はスタートしました。
震災から3年を向かえ、「震災の風化」といったことが全国的に叫ばれていますが、震災以前に、その土地でどんな人の営みがあったのかということは、誰にも知られぬまま、地元の人の記憶からも次第になくなりかけています。
しかし、自分達の足元を支えている世界やその背後に連なる歴史に目を向けることも、ときには必要です。
案外、そうした日頃気づかずに過ぎ去っていく時間や身近なものの中に、とても大切な何かが隠れているのではないかと、僕自身はいつも思っています。
その点、この映画は確かに「震災」という出来事を含んでいますが、そうした枠組みに収まりきらない、多様なテーマを含んでいるともいえます。どうかみなさんも、波伝谷の住人になったような気持ちで、そこに流れていた空気や人びとの息づかいを感じながら、自分なりの感性で映画を観ていただけると幸いです。