『小屋番 -涸沢ヒュッテの四季-』(69分)
監督:伊勢 真一
上映日時:8月22日(金) 13:20~
北アルプスの四季の巡りと人の織りなす映像詩である映画『小屋番 涸沢ヒュッテの四季』は、
2012年夏から2013年春にかけ、穂高・涸沢を舞台にして撮影された記録である。
“小屋番”とは、まさしく山小屋を守り、山を守る仕事。
レスキューなどの劇的な場面にかかわることもあるけど、普段は山に入る人々のお世話をする、という地味な仕事だ。
「俺達撮ったって、面白くねえし、誰も観ないと思いますよ・・・」と恥ずかしがりながら
小屋番たちは写される人になっていった。
撮影を繰り返すうちに、だんだん、その“小屋番”たちの顔に魅かれていく。
不思議なものだ。
当初は何とも思わなかったのに、ただ黙々と山小屋の仕事に取り組んでいるひとりひとりの表情が、それぞれに何かを語っているように見えてくる。
山は何も言葉を語らないけど、じっと見入っていると、何かを語りかけてくるように思うのに似ているのかもしれない。
そんな風に見えて来た頃に、撮影は終わった。
“小屋番”という言葉は、少しでも山にかかわりを持つ人々にとっては畏敬の響きを持つようだ。
それは、優しく、たくましく、大きな存在。
しかし涸沢ヒュッテのスタッフたちは口をそろえて「まだまだ小屋番修行中です・・・」と言う。
“小屋番”は山の頂きのように、彼等にとってそこを追い求め、たどり着く存在なのだろう。
誰もが心の奥に秘めているにちがいない、理想や夢のようなもの。
たどり着こうと思ってもたどり着けない遥かな頂き...生きる、ということ。
“小屋番”たちの何気ない日々の営みに寄り添いながら、そんなことを考えた。
「山を想えば、人恋し 人を想えば、山恋し」だ。
山と人を描いた、そう綺麗とは言えない、舌足らずの山の映画に触れてみて欲しい。
---------- 監督プロフィール ----------
伊勢 真一
(監督・ヒューマンドキュメンタリー映画祭《阿倍野》 総合プロデューサー)
1949 年東京生まれ。
1995年、重度の障害をもつ少女の12年間を追った作品「奈緒ちゃん」で毎日映画コンクール記録映画賞グランプリを受賞。
近作に「風のかたち-小児がんと仲間たちの10年-」(09・文化庁優秀映画賞受賞)、
「大丈夫。-小児科医・細谷亮太のコトバ-」(11・キネマ旬報文化映画ベスト・テン第1位)、「シバ 縄文犬のゆめ」(13)。
ヒューマンドキュメンタリー映画祭《阿倍野》をはじめ、大倉山映画祭・はなまき映像祭など、各地でドキュメンタリーの映画祭を企画。
2013年度「第11回シネマ夢倶楽部賞」を受賞。
昨年公開となった「小屋番 涸沢ヒュッテの四季」と、最新作「妻の病-レビー小体型認知症-」を今年度、映画祭で上映。