【2013年上映作品】「奈緒ちゃん」 | ヒューマンドキュメンタリー映画祭《阿倍野》のスタッフブログ

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2017年6月24日(土)〜25日(日) 阿倍野区民センター 大ホール


ヒューマンドキュメンタリー映画祭《阿倍野》2013
上映作品

「奈緒ちゃん」
伊勢 真一監督 98分

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突然発作を起こす病気「てんかん」と、知的障害を持って生まれた奈緒ちゃん。
しかし、この映画は奈緒ちゃんの発作の様子を撮ることなく、
彼女の家族との日々を見つめたものとなっている。
奈緒ちゃんと家族の「しあわせ」を写した12年間の記録。

「姉に長女が生まれた。しかし、普通ではない、何かの病気のようだ」
と知ったのは、記録映画の編集者だった父、伊勢長之助が亡くなった年、今から20年前のこと。

姉の長女、奈緒ちゃんの病気がてんかんで、知的障害をともなっているとわかったのは、それからさらに数年後でした。
ドキュメンタリーの仕事を始めて、父にかかわりのあるスタッフとめぐりあい仕事を共にするようになった頃、奈緒ちゃんはすでに小学生になっていました。

「映画づくりにかかわる人達の気持ちは理解できない」とさかんに首をかしげていました。
いわゆる福祉映画にするのはやめよう。
そのために、奈緒ちゃんとその家族の普通の日々をしっかり視すえてゆこう、と奈緒ちゃんのもとへ通い続けました。

てんかんという病気には発作がともないます。
奈緒ちゃんが多い日には2度、3度と起こしていた発作を撮影すべきかどうか・・・。
スタッフの結論は、撮らない、ということでした。この映画の狙いはそこではない。

発作を描けばインパクトも強く、病気に対する理解も得やすいかもしれないが奈緒ちゃんのその姿を見せ物にするのは忍びない。
しかし、それぞれのスタッフの心の中には、事実から目を離してはいけないというプロのドキュメンタリースタッフとしての想いもありました。
そんな想いを知ってか知らずか、12年間の撮影中、不思議なことに奈緒ちゃんは一度もスタッフの前で発作を起こしませんでした。

このフィルムには「しあわせ」が写っているとつぶやいたのは、大ベテランのカメラマン、瀬川さん。
「しあわせ」という言葉がなぜだかとてもなつかしく、新鮮な響きに聞こえたのを今でも忘れません。
(監督:伊勢真一)


いせフィルム