ご無沙汰しております。15期の松尾一輝です。
今回のブログでは、我々15期が独自に進めている企画の中で、3月にイスラエルのベンチャー企業Aleph Farms 様と共催したワークショップを取り上げたいと思います!
いきなりスケールの大きな話になりますが、既に宇宙旅行、宇宙生活が夢物語で無くなっている昨今、食の世界にもイノベーションが起きています。
植物工場、培養肉
、3Dフードプリンター…。
環境の制約を無くし、より効率的な生産を行うべく、多くのベンチャー企業が研究・開発を進めています。これらの技術は、少しずつ、だが確実に我々の食卓を変えようとしています。
イスラエル🇮🇱のレホヴォトに本社を置くスタートアップ、Aleph Farmsもその1つです。動物を殺すことなく、皮膚などから細胞を取り出し培養することで肉を生産する、培養肉の研究開発・普及を手掛けています。
今回のワークショップでは、事前に公募した20名ほどの参加者と、Aleph FarmsからNeta Lavon 博士とマーケティングを担っているGary Brennerさんを招き、今後の食卓がどのように変わっていくのか意見交換をしました。
まず、導入として培養肉の英語での呼び方について面白いお話がありました。
英語で培養肉はかつて、clean meatと呼ばれていたそうです。しかし、clean の対義語がdirtyであり、従来の肉に「汚い」というイメージを付してしまうことから、近年はcultured meat やcultivated meat が用いられるようになったそうです。以上、豆知識でした(笑)
特に興味深かったのは、各国のニーズに合わせたマーケティング手法でした。日本で霜降り肉が好まれているように、国によって好まれる肉の特徴は異なりますよね。大きさ、厚さ、脂身の量などなど。Aleph Farms では各国のシェフらと協力しながら、コンピュータで厳格に管理して、それぞれの国に向けた肉を培養しているということでした。
単に肉を生産する段階ではなく、ここまで技術が進んでいることには驚きですね。
Aleph Farmsは、自社で肉を生産し海外(特に肉需要の伸びているアジア)に輸出するのではなく、各国にバイオファームを作り技術を移転し各国のニーズに合わせて生産してもらう、これこそが長期的なビジョンだと語ります。
実際日本市場に向けては、三菱商事と提携して、既に市場調査等を進めているそうです。和牛の細胞をイスラエルに持ち込むことは出来ないため、追々日本のバイオテクノロジストを雇い、日本で生産することを目標にしているとのお話でした。
1時間ほどの講演の後には、参加者から積極的な質問が投げかけられました。
例えば、従来の畜産農家との競合について。仕事を奪わないかという懸念について。
これに対しては、畜産従事者が高齢化し減少している一方で肉需要が増加している中、むしろ肉の生産という共通目的のもと助け合う立場をとっているとのことでした。また、単に供給の問題だけではなく、土地不足など現状の畜産業には課題もあり、それらの解決を助けることも使命だとおっしゃっていました。
ただ、倫理観については腑に落ちない部分もありました。日本人の「いただきます」に代表されるように、我々は生きていくために動物を殺し、命に感謝しながら生きてきた文化を持ちます。そうした伝統的な「食観」との矛盾についてです。
Gary Brennerさんは、「動物を殺す方がおかしい。実際、宗教で豚や牛を食べない地域もあるし、そちらのニーズに応えるべきだ」と話していましたが、本当にその通りなのか。
culture=文化の語源は、cultivate=耕すであり、文化を形成してきたのが農業・畜産であることは間違いありません。農業が工業化していくことで、文化も変質していく可能性があることも認識せねばなりません。(培養肉の英語名がcultivated meat やcultured meat になっていることはなんとも皮肉的で、培養肉も、更新し続ける文化の一部と捉える見方も当然あるのでしょう)
その辺りの部分をより深く考えるため、農業や食のあり方を大切に守っておられる、もう1方のゲストとの交流も企画しています(春先の緊急事態宣言で延期中でしたが)。
またご報告できればと思います。
では。
15期 松尾一輝