全国B型肝炎訴訟原告団弁護団は、2021年11月20日に、鹿児島で「歯科の感染対策を考えるシンポジウム~より安全・安心な医療を目指して~」を開催しました。
最初に、全国原告団の田中義信代表が、「B型肝炎感染被害と歯科への思い」と題して基調報告されました。再発防止の活動として、歯科において口腔内で使用される医療器具の連続使用がなされないよう取り組んでいることが報告されました。
鹿児島原告団の宝蔵もと子さんが、鹿児島大学歯学部において6年度にわたって実施されてきた患者講義について報告されました。
久留米大学医学部消化器内科の井出達也教授が「肝炎ウイルスの感染対策について」と題する基調講演をされました。内視鏡検査でも、ウイルス肝炎陽性の患者さんを後ろ回しにしていたが、今は行っていないこと、胃カメラの問診票でB型肝炎の質問事項がないことが紹介されました。また、針刺し事故が起こった場合は、事故者の血液検査を実施し、処理することが紹介されました。
鹿児島大学口腔顎顔面外科の比地岡浩志講師が、「鹿児島大学病院歯科における感染対策について-教育と実践-」と題する基調講演をされました。
歯学部の臨床実習における医療安全・感染対策目標として、標準予防策を実践できる、という項目があること、2004年には、歯科医の4分の1強がHIV感染者の診療を原則として断ると回答し、厚生労働省は、適切な歯科診療体制を確保するよう通知したことが紹介されました。
標準予防策の不徹底に問題があることを歯学部で教育し、大学の歯科でも実践しているが、市中の歯科診療所に行くと、連続使用をしているところがあり、そこに就職するドクターもいる。どうするのかはずっと問題になると報告されました。
パネルディスカッションの冒頭で、東京歯科保険医協会の濱﨑啓吾理事が、歯科の現場からは、保険診療では標準予防策の徹底はコスト面で難しいという意見が多いことを報告されました。卒業した歯科医師への教育も課題と指摘されました。
医科では、胃カメラの肝炎患者の後ろ回しが1,2年でなくなったことが紹介され、どうしたら同じようになるのか議論をしました。コストが課題なのではないかという意見が多く出されました。
問診票で、ウイルス性肝炎の感染の有無のみを問うことにどのような意義があるのか、患者側の葛藤について、それを聞き出す医療上の必要性について議論がなされました。出血傾向を知りたいのであれば端的にそう尋ねるとよいと、井出先生から意見が出されました。ユーチューブで見られるので、シンポの表題を検索して是非ご視聴ください。
(問い合わせ先 弁護士 武藤糾明)