昨日は、就業中にわりと時間があったので、次の抗がん剤のことを調べたりしていた。 

KRAS遺伝子が変異の場合には、成長ホルモン(EGF)からの信号がなくてもがん細胞の増殖や転移が進んでしまう。 
セカンドラインのアービタックス、ペクティビックスは、成長ホルモンからの信号を受けるもの(EGFR)に結合して信号を避けるものであるので、KRAS変異の場合には効果がないとされている。 
なので、KRAS変異の場合には、アバスチンをそのまま使う(BBP)か、それ以外となる。 
サイラムザ、スチバーガ、ロンサーフが候補としてあげられるが、ファーストラインに比べれば、生存期間も短くなり、奏効率も下がる。 
一方で、ひどい副作用(グレード3以上)の出現率も高くなる。 

ただ、OS(全生存期間)のグラフを見ていると、不毛にも感じてしまう。 
プラセボ群に比べて1カ月横軸がずれていたとしても、最初のほうに入る場合もあるし、プラセボ群の最後のほうになる場合もあるのだ。
単純にごく一部の人だけに効果があるだけで、全ての人が1ヶ月延命するわけではない。
使ってみないとその効果はわからないし、使わない(別の抗がん剤を使う)と使わない影響もわからない。 
”効果がある”かどうかは、個々の状態に依存するものであるが、個々の状態に応じた正確な治療法は確立されていない。 
確立されていないから、確率で選択することになる。 
大腸がん転移といったざっくりとしたグループ(性別や年齢、RAS変異で層別されるぐらい)での結果から、純粋に統計学的に算出された確率だ。 
これは、患者にとっては頼りないことだけど、かといって、医師にはどうしようもないことだとは思う。 
効果のある治療ができるかは状況に応じてチャンスを逃さないことぐらいだろう。

モノづくりでは、車に使われたりするとディフェクトゼロ(不良ゼロ)が求められる。 
不良が出てしまうと、お客さんが乗り込んできて、大変なことになる。 
設計や生産では、不良を出さないために、どういう不良がでるかを予測して対策を行い、さらにできても流出を抑える手だてを打つ。 
ただ、そうやって不良率を0.1ppm以下(1000万個の1個以下)にしても出るときは出る。 
確率はあくまで確率でその1個にとっては必然なのだ。 

昨日は元気だったし、今日も妻は元気だ。 
明日も元気だろう。 
とりあえず、それでいい。