昨日ボストンでMITの説明会に参加した際に、卒業生の初任給は12万ドルから13万ドルだと言われました。今のレートで日本円で2000万円程度です。更に親の年収が1500万円($100K)に及ばない家庭は授業料が無料になると言われました。どうやらこの授業料無償は外国人にも適応されるようです。授業料無償で卒業したら年収2000万円でグローバル最先端の仕事ができるのです。世界中の高校生にとってMITやトップレベルのアメリカの大学への合格は究極の将来へのチケットになりつつあります。そのせいか、ハーバード大学やMITはアジア人、インド人、南米の高校生や中学生の見学であふれていました。AIやテクノロジーの進化の中、様々な単純労働が消えていこうとしています。そしてその効率化を推し進めているのがテクノロジーに関する研究機関であり、MITなどはその先端をいっています。ますます世界中からアメリカの大学の人気が高まり、グローバルレベルで勝ち組と負け組が分に分かれる時代に突入しようとしています。

 

東大の価値はそこまで高くない

日本で東大や京大に合格することは大変ではありますが、初任給は他の大学の卒業生とは変わらず400万~500万程度ではないでしょうか?ネットでサーチしたら東大卒で45歳で1155万円とあります。つまり45歳まで働いてもMITの新卒の年収を上回ることがないわけです。更に東大を出たからといって、ニューヨーク、ロンドンなどの会社に直接就職できるわけではありません。MITの場合は世界中の企業からリクルートされるとのことです。東大に入るのは簡単ではありませんが、そこまでの実力があるのであれば、MITやハーバードにトライしようという人が増えてくると想定されます。つまり、東大がハーバードやMITのすべり止めになる時代です。東大、京大といった日本の名門校は日本を何とかしなければならないという国に対する責任もあります。なので、国家公務員という魅力のない仕事に奉仕する人も少なくないわけです。アメリカではミリタリー系の大学に行かない限り、そこまで国に対する責任というカルチャーはありません。国の通貨に対する信頼が減り、国家間の紛争の際には逃げた方が勝ちという状況、更にはテクノロジー、ノウハウ、企業などが国の枠を超えて移動する時代に人々はよりグローバルなキャリアを魅力と感じていくようになるでしょう。その結果としてアメリカの大学人気は今後さらにエスカレートしていくと思います。

 

アメリカ留学で価値があるのはトップスクールだけ

アメリカの大学でも中堅規模、例えば私の働く教会のすぐ近くにあるハワイ大学といった中堅の大学(全米170位)になると、大卒平均初任給は38000ドル(600万程度)と日本と変わりなくなっていきます。私はアメリカで人気がある会社と言われるDELOITTEで採用面接などもやっていましたが、私の面接に上がってくる人はほとんどがトップ50の学生でMBAの場合はトップ25だけでした。リベラルアーツカレッジもたまにいましたが、クレアモントカレッジぐらいしかなかったと思います。近くにオバマ大統領も通ったOccidental College などもあるのですが、一人もそこを出た社員は見ませんでした。学歴で選考をしていないのですが、必然的に前段階で落とされてしまっているようです。アメリカのトップスクールの魅力はなんといってもそこに集う学生たちです。その刺激ある環境で頭が刺激されるが故に、企業などが必要とする生産性や想像力、実行力といったものが培われ、それゆえに成功者の出る割合も高くなるのです。授業料、リスク、そして価値を考えるとアメリカの下位の大学に留学をするなら日本の上位の大学に行き、大学院で受験しなおすほうが良いと思います。大学院入試の場合は海外から受験した方が有利になる場合もあります。

 

専攻科目の重要性

外国人がアメリカで就職をする場合は、通常は学生VISA(F1)の延長のPRACTICAL TRAININGという制度で就職し、その間企業からH1Bという労働VISAを出してもらいます。そしてH1B6年間(3年+3年延長)の間にグリーンカードをスポンサーしてもらい永住権を得ます。その間会社を解雇されれば強制帰国同様の状況になります。なので、アメリカで就職してもやっていけるという専攻科目でないと留学はしても就職はできないという状況が待っています。更には専攻科目によってはあっという間に永住権が出るものもあります。私の知り合いではIT、物理、薬学や化学、看護などの学位を持っている人はすぐ永住権が出ていました。文科系ではビジネス、会計学、ファイナンスなどがありますが、歴史、社会学、文化人類学、音楽、言語といった領域では就職の可能性はかなり低くなります。子供がアメリカ市民権を持っていれば別ですが、外国人として受験する場合は受験する大学のレベルだけでなく、専攻科目もよく選んでおいた方が良いと思います。努力して留学をしたとしても、日本に帰ってきたら通常の大学生と同じになります。なら日本の大学に行っておいた方がまだいいのです。

 

日本の予備校ではアメリカのトップスクール合格は無理

大学受験という試験一発の世界では、点数を上げるテクニックを教える予備校は価値があります。但し、トップクラスのアメリカの大学に合格するには日本の予備校のやり方では難しいと思います。アメリカでもっとも伸びている産業の一つに教育アドバイザーという仕事がありますが、これは日本の予備校のようなものですが、より包括的に、更には目標とする大学の専攻基準や状況を理解したうえで戦略を練りフォローするという役割があります。金持ちの中国人の受験生は年に$1 million(日本円で1億5千万円)ものお金をそういったアドバイザーに払ったと言われています。これらのアドバイザーは以下のアプローチで学生の支援をします。日本の予備校もこのようなサービス提供ができれば、今後増えると想定される留学予備校としてのビジネスを伸ばすことができるでしょう。

 

1)        基礎学力の補充:アメリカでトップスクールに行く場合は、まずは学校の成績、共通試験の結果(AP EXAM、SAT, ACT)、そしてアカデミックアワード(National Merit Scholar, その他各科目のオリンピックや、論文など)などを抑えなければなりません。例えば、GPAが4.5  APクラス(大学レベルクラス)を10個取っているといったトップスクールの標準値です。AP EXAMで5,SAT, ACTでほぼ満点、こういった全てのエリアでの高得点が必要になってきます。それを最大化する為のアドバイスをまずはします。ただ、それらをすべてクリアした人でも50%は落とされるといいます。アメリカのトップクラスの大学の合格率は5%以下で、それだけ多くの人が世界から受験するのです。更に大学はただ頭が良い人より、将来性のある人を取ります。なので、以下の領域の方が近年は注目されています。そして、これらの要素はアカデミックで多少ミスった場合でも合格の可能性を残します。

 

2)        ポートフォリオ作成:アメリカの大学を合格するにはアカデミックだけでなくても入れます。スポーツ、芸術、起業・リサーチ、ボランティアといった領域です。特に近年は1)のアカデミックでほぼ満点の人ばかり受験してくるのでこの分野での差が合格、不合格の分け目になっています。但し、スポーツなどではかなり厳しい基準があり、オリンピック水準、全米のランキングなどで突出していないと切り札にはなりません。芸術に関しては実績だけでなく、願書に自分の作品やパフォーマンスのビデオを送ります。特にピアノやバイオリンなどやっている人が多いアートはコンサート基準という実績を要求されるので、むしろコンピューターを使ったグラフィックアートなど近代的なものや比較されにくいアートの方が良いかもしれません。起業に関しては最近増えたので、売上、従業員数だけでなく、自分が具体的に何を貢献したのかなどつっこまれるので、エッセイだけのインチキでは通用しません。リサーチやボランティア活動も一緒で、社会的に大きなインパクトがあるかどうかが評価されます。これらのポートフォリオの格付けとして言われているのが、Aランク:国際水準での活躍、Bランク:全米規模での活躍、Cランク:州レベルでの活躍、Dレベル:地区レベルでの活躍です。トップスクールはポートフォリオの中にAランク、Bランクレベルでないとポートフォリオのみでの合格は難しいでしょう。

 

3)        リーダーシップ:ケネディ大統領が成績がイマイチだったのにハーバードを合格したのは卓越したリーダーシップがあったからというのは有名な話です。トップスクールは政治やビジネスなどで将来のリーダーを輩出したいと考えているので、リーダーシップはとても重要な要素になります。それを証明する為にアメリカの高校で、学生たちが必死になって生徒会長や新聞のEDITOR、更にはクラブの会長などをしたがります。そのリーダーを巡る競争は日本では考えられない水準です。アメリカでは人の上に立つことを良しとするので、リーダーシップはトップレベルの学校に入るには不可欠であり、これをポートフォリオやエッセイ更には面接などで印象付ける必要があります。

 

4)        エッセイと差別化:アメリカのトップスクールの場合は、学校の成績は足きりとして考えられ、上記ポートフォリオで突出している人はそれで合格、最後にエッセイでその学生の潜在性や学校の求める人材のFITをチェックします。エッセイは各志願者の差別化、自己PRの場になります。成績が良いけどトップスクールに入れない人はまさにこの差別化に失敗した人です。但し、これは面白いエッセイを書けばよいというものではありません。各大学の要求するエッセイのタイトルを見ると大体何を求めているのかがわかります。 なので、そのエッセイで秀でる為の人材育成が必要になってくるのです。だから、エッセイにはその下地となる実績、何らかのユニークな経験が必要になってきます。ポイントは他の人とかなり異なっていること、そして人間としての魅力が十分伝わってくること、他の合格者にはない多様性を持っていることなどが重要になります。

 

アメリカのトップスクールを目指す際には上記1)~4)に関する準備をかなり前からやっておく必要があります。目標を設定し、戦略を考え、それに沿った人材育成をしていくというものです。そういった意味でかなり日本の予備校がやっていたこととは異なると思います。

 

私は過去20年様々な人のアメリカ留学を支援、サポートしてきました。奨学金まで出したこともあります。MITに合格した人に推薦状を書いたこともあります。この夏帰国します。その際、6月11日にはYale大学の卒業生と一緒に東京薬科大学で話をします。6月18日には台東区の浅草北部教会でメッセージもしますので、興味がある人は会いに来てください!