コロナの影響は人々の生活を変えています。生活の変化は消費の変化でもあり、その変化を読むことが成功する投資には欠かせません。今まで書いてきたようなことをLINEで共有したのですが、私の家族などは海外のこと、ましてや専門的なことはわからないと言われたので、日本の市場も見てみました。当時はマスク不足が話題だったので、ユニ・チャーム(8113)などを調べたのですが、前回述べたような理由でやめました。同時に日本で顕著だったのが、テレワークの推奨でした。これはもう2月ぐらいにはスタートしていたし、実際アメリカではリモートワークへの移行はずいぶん前から騒がれ、ビデオカンファレンスで有名なZOOM(ZM)は昨年4月にIPOした時から話題になっていました。IPOの時から株価が数倍になったので、私は今年1月に下落するまでそのPositionは取りませんでした。1月に$73だったのが、コロナの影響で$240まで上がり、今は$200前後です。コロナによるテレワークにZoomは欠かせず、アメリカではSNL(Saturday Night Live) という長年続いているお笑い番組もZOOMでのネタがあるほどです。興味がある人は見てみてください。

 

テレワークの意義

日本の株式市場はアメリカと比べ、変動が小さく、動きも遅いといった特徴があります。それは株の持ち合いや、海外企業からの買収を防ぐための公的基金を含む固定投資があること、そして個人投資家の割合、さらには売買頻度が低いということが想定されます。特に大手企業の株式にその特徴があるのですが、小規模の会社は比較的そのような弊害は少なく、アメリカの市場に近い動きがあります。更に小規模の企業は大手と比べ一つの成功のインパクトが大きいので、日本でファンダメンタルズ投資をする人はそういった会社に特化したほうが水準より高いリターンを実現できるかもしれません。特にテレワークは仕事のやり方を変え、日本人の生活や仕事効率改善にも大いに貢献するので、これを機にホワイトカラーの仕事の仕方や生活などが改善するのではないかと期待しています。

 

日本の勘違い:意味のないオフィススペースの拡張

数年前大手商社に就職したCVSの卒業生が都心の新築ビルに招待してくれました。皇居に面しており、以前は高さ制限があり、皇居を見下ろすという昔ながらの礼儀により長年規制されていた場所です。その規制が緩和され、外堀通り沿いのビルが次々と高層化していたのです。東京のオフィススペースの供給は拡張しています。「誰をターゲットに開発?」という問いに対し「外資系企業」という答えしか来ませんでした。欧米企業はすでにかなり日本に来ており、新規増加することは想定しにくく、更にハイテクなど成長企業は巨大なスペースを必要とせず、むしろ自宅や、独自の町(キャンパス)で働くという形態に移ってきています。中国企業が事務スペースを東京に必要としている可能性はありますが、そこまで多くオフィススペースが必要なのでしょうか?あの上海タワーでさえ、空き室だらけ、更に東南アジアの全ての都市で都市開発が進み事務所スペースが増えています。そんな中、東京のオフィススペースをこれ以上拡張させることに経済的意義は感じません。都心のオフィススペースが多ければ通勤ラッシュは緩和されません。更に通勤時間は働いているわけではないので、その間の生産性はゼロです。テクノロジーは世界、働き方を進化させるのではないでしょうか?

 

サテライトオフィス、ホームオフィスの発想

アメリカのコンサル会社では20年以上前からリモートワークは始まっています。私もプロモートされたときにオフィスをもらえたのですが、ダウンタウンまでの通勤時間と駐車料金が無駄なので、ほとんど使いませんでした。会社側から「年何万ドルも払っているから…」と言われたので、「いらないからその分給料を上げてくれ!」と言ったら、当然給与は上がらずオフィスだけ没収されたことがありました。コンサルの場合はほとんどクライアントの場所で過ごすので、事務所にいること自体が「働いていない」というサインになるので、あまりオフィスにいる習慣はありませんでした。マネジャー以上はよく会議などがあったので、事務所が与えられるのですが、リモートでの参加もOKだったので、そちらを使っていました。会社側は働く効率を考え、空港、センチュリーCity、アーバインなどにサテライト事務所を開設し、そこで事務作業は十分できました。会社のカルチャーを作るネットワーキングをする際には、NBAのゲームや、バーを貸し切りにしてそこでネットワーキングをする機会を別途作ってくれていました。今思えば、非常に効率的で良かったと思います。東京事務所は、クライアントが都心に集中していること、さらにクライアントのオフィススペースに余裕がないなどの理由で自社オフィススペースを必要としていました。ただ、今回のコロナ自粛でテレワークが推奨されたことで、日本でも多くの会社の仕事のやり方が大きくかわるのではないでしょうか?ちょっと考えただけでもリモートワークには以下のメリットがあります。

1) オフィススペース削減による固定費の削減

2) 通勤費用の削減、労働時間の増加

3) ワークライフバランス:特に赤ちゃんを育てながらも働くことがえきる環境は少子化、保育園不足の対策ともなりうる。

4) 労働環境、生活環境の改善(自宅の環境が良ければ…)

5) 家族の関係強化

デロイトのサテライトオフィスのように、自宅近くの駅前などに色々な企業が共有できるシェアドオフィスや、スタバの中に小さいブースを作りそこから働けるといったようなモデルが考えられます。更に、地方の大自然に囲まれたところに住みながら、自宅にあるホームオフィスから東京の会社にリモートで働くということもありです。地方の方が住宅環境は良く、生活費も節約できます。

 

都市開発の方向性

今回のテレワークは一時的なものではなく、そのような方向に日本人の働き方をシフトしていくのではないかと期待しています。その視点に立つと、都心のオフィススペースの不動産開発などの会社の将来性は明るくありません。むしろ、安くなった駅前の空きビルを改装し、Wework(ソフトバンクは大損しましたが)のような共同スペースの開発と運営、サテライトオフィスを後押しする方が将来性があります。今年の初めに都心の開発をしている投資家の方と食事をした際に「でも東京の都心は大丈夫でしょう」という東京神話のようなことを言われたのですが、むしろ都心の巨大ビルに全ての機能が集中すること自体がリスクであり、日本に確実に起きる大地震で津波が押し寄せ地下が水浸しになったりするような状況で、都心のオフィスに大人数の人が集まっている状態は恐怖でしかありません。防災的な観点からもテレワークの推進は悪くないのです。むしろ日本の魅力、日本の将来は地方にあるのではないかと思います。

 

働き方改革の遅れ

日本の工場のプロセスは世界トップクラスですが、日本の事務処理は世界最低レベルだとも言えます。今回の給付金の処理に見られるような簡単な処理に異常に無駄な時間や作業が発生しています。そしてそのようなお役所のような事務処理が日本の会社の仕事の仕方のデフォルトになっています。この原因は変化をきらうおじさんたちが昔ながらの仕事を変えようとしないことが理由なのかもしれません。周りに人がいないと仕事をしてる気がしない人たちです。今回のコロナ自粛により政府もテレワークを後押ししており、今までの実績もあるので、一気に改善する良い機会です。

 

テクノロジーの苦手な日本企業

日本企業の特徴は一般的にITが弱いということです。日本企業が中国や北朝鮮のハッカーにやられるという話はよく聞きます。日本独自の決済システムがハッカーにやられたので、結局中国のALIPAYを活用したPAYPAYのような仕組みが大きく導入されたと聞いています。リモートワークはZOOMやクラウドを活用すれば別にいつでもだれでもできるものです。前述したとおり私の働いていたアメリカのコンサル会社ではもう90年代からリモートワークは基準になっていました。この問題は日本企業や政府がITを戦略的に重要とみなしていなかったこと、さらには独自路線で偏ったITに執着していた80年代の問題があると思います。

 

私が88年にジョージタウン大学に留学した際に外交学部でさえ、ロータス123といったスプレッドシートを活用していて、その為のクラスを受けさせられたのを覚えています。日本もNECなどを中心にITの開発では世界をリードしていましたが、ITの汎用化といった点では出遅れ、システム管理部のような役所的なIT部門を設け、ITをごく一部の人のスキルとしていたことが全体としてのITスキルを低下させ、日本が遅れを取る原因となりました。

 

テレワーク投資

テレワークは汎用のアプリを使えば随分前から実施することは可能でした。今でもそうでZoomや、クラウドを活用して普通にリモートで働けている人も少なくはないでしょう。でも日本は前述したとおり、ハッカーにやられたり、更には問題が発生した時の責任追及や社会的な批判が半端ではありません。なので、テレワークに関してもそのサービス自体を外注した方が安心と考える企業も少なくはないかと思えます。この観点から日本での株式に関し、以下の2社を勧めました。

 

ブイキューブ(3681

日本のテレワークの大手として出てきた会社です。上場した2014年ごろには2000どるほどの価値があったのですが、利益の伸び悩みなどから株価は低迷していました。明らかに今回のテレワークでチャンスだと思ったのですが、市場は反応しておらず2月ごろ、600円台だったと思います。リモートのワークスペースの開発もしているらしく、まさに上記の方向とあっています。前期は売上も利益も落ち低迷していましたが、債務はそこまで大きくなく、コロナ自粛は良いPositioningだと思いました。この短期間で1200円に上がりました。日本にしては珍しい成功例です。

 

クラウドワークス(3900

事務作業の中で仕事の打ち合わせ、外注の調整などはよくある仕事です。クラウドワークスはそれをネットワーク上でやるので、今回のコロナ自粛の状況に対応できると思いました。売り上げも伸びており、負債も低く成長をサポートする財務状況であったにもかかわらず3月の相場が落ちた際になぜかこの株価も500円前後まで落ちたので、Positionを取らせました。今では1600円を超えています。

 

株式投資は学習目的でするべきです。株価は将来の価値の判断なので、将来を読んで投資をすべきです。若い人は自分自身の将来に直接影響があるので企業の将来性を見抜くことは重要です。今優良企業と言われるGoogle, Apple, Amazonなどは以前はハイリスクの会社と言われていました。金融は安定しているなどという神話もありました。でも低金利の中金融は危機的状況で、ハイリスクのテクノロジー会社が安定企業になりました。つまり現状=将来ではないので、株式投資を通じて将来を読むトレーニングをしてほしいと思います。就活、転職などを考えている人は特にこの将来の世界を意識したキャリアプランは重要なので、株式投資は役立ちます。