海外に行く皆さんは「日本」というブランドを背負っていきます。皆さんが出会う人が、皆さんを見て「日本人」に対する印象を持つことになります。アメリカのホームステイプログラムは人気があり、ホストファミリーは世界中から学生を迎え入れていることがあります。そんな中、皆さんがどのような接し方をするかによって、現地でホストする人の「日本人」に対する見方が形成されてしまうので、皆さんはそのことを意識して行動しなければならないのです。CVSでは2002年からホームステイプログラムをやってきていますが、大半は日本人に対するイメージがよくなり、中にはそれをきっかけに日本に来るようになったホストファミリーもいるほどです。日本政府は観光事業に力を入れていますが、日本政府が海外でする広告以上に、皆さんが海外で現地の人とどのような接し方をするかのほうが、日本観光には大きな影響があるのではないかと思います。ホストファミリーによっては日本人が初めてという家庭もあります。そのような家庭は「日本人」=「あなたとの体験」になります。それだけ、皆さんのホームステイ先での言動は重要であり、皆さんが「日本からの親善大使」的な任務を背負ってホームステイ先に行くという意識をしっかり持ってもらいものです。

 

ホストファミリーが指摘する日本人学生の問題

CVSでは過去オレンジカウンティーで、ホームステイと英語教育だけのOCプログラムというのをやっていました。その時はメキシコプログラム(これもホームステイ)、LAプログラムと兼任していて、私は週に1度しかチェックせず、色々と心配なことがありました。私がしっかり指導していなかったことも原因ではあるのですが、最終的にこのプログラムは中止せざるをえなくなりました。大学生は体は大人ですが、マインド的には子供の人も多く、ホームステイとなると、「自分の家」=「親への甘え」的な発想が起きてしまうようで、CVSで提供するホストファミリーが温かく優しく接してくれるがゆえに余計、色々な問題もでてきてしまったのではないかとも思っています。これらはすべてのホームステイプログラムに共通する学生側の問題行動ではないかもしれませんが、例としてあげておくので、皆さんの参考にしてください。

 

問題1 延泊するのが当たり前:CVSの参加者もそうですが、アメリカに来ると「日本に帰らずにしばらくいたい」という気分になります。更にホームステイ先がとても良くしてくれる家庭だと、そのまま延泊しても問題ないと感じてしまいます。更にとてもナイスな家庭だと、日本人の学生がストレートに「3日余計に泊ってもいいですか?」と言われるとなかなかNOと言えない状況になります。学生側は、「無料で3日間泊まれる、ラッキー」的な発想になり、ホームステイ期間と同じように泊まり続けます。それが嫌で、ホストをしなくなる家庭もありました。CVSでは延泊に関するルールを設定し、こういう問題を防ぐようにしたのですが、ナイスにされたから、当たり前のように泊まり続けるのはちょっとあつかましいと思います。ホストファミリーは必ずしもお金ではやっていませんが、お金を払うことを条件に滞在している以上、延泊をする場合にもそれなりのお返しをする必要があります。直接この件を話すのはなかなか気まずいものなので、CVSの場合は、延泊する場合はCVSを通じて申し込み、支払いをします。参加者が期間中に稼いだCVSポイントでも宿泊できるので、それを活用する人が多いようです。

 

問題2 一切手伝いをしない: これも最近の傾向なのですが、学生の中には今まで家で手伝いをしたことがないような子供もいます。食事を出してもらっても片づけない、家の手伝いをしようとしない。みんなで掃除をしていても部屋にこもって出てこない。部屋も散らかしっぱなし。多少のお金を払っているとはいえ、ホテルではありません。人間関係を構築する上でも手伝いをすべきです。ホームステイとはその家庭のカルチャーに入っていくもので、それ自体が学習です。家族で掃除をしていたりしたら、当然参加をすべきです。そして、ホストが断ったら、代わりに何か家のためにできないか聞くのが、エチケットです。食事を出してもらったら、当然後片付けなどの手伝いは申し出るべきものです。キッチンの手伝いをするのは男性も女性も同じで、家で女性ばかりがきっちんまわりをしていて、食卓でどかっと座って動かない習慣がついてしまった男性陣は要注意です。

 

問題3 コミュニケーションを取らない:飛行機のファーストクラスは、どのエアラインも格別のサービスを提供します。そしてそのサービスの特徴には国の「おもてなし」の差が出ます。アジア系の航空会社の場合は、とてもプロフェッショナルなケアに力を入れています。アメリカ系の場合は、フライトアテンダントがやたらいろいろ話をしてきたり、別なゲストを紹介してあたかもアメリカのPartyに来て、その家のホストと話をしているかのような雰囲気があります。アメリカ人にとってコミュニケーションは「もてなし」の一つなのです。話をするということがとても重要な社会の中で、外国からわざわざやってきて「会話をしようとしない」かえってきてもすぐ部屋にこもってしまうというのは問題です。ただ、「何を話して良いかわからない」という人も過去いたので、CVSでは意図的に課題で特定のトピックに関して話をする場を設けています。ホームステイをする一番の目的はコミュニケーションを学ぶことなので、積極的に話をすべきです。

 

その他、「観光に連れていってもらうのが当たり前だと思っている」とか、「少しのものでも洗濯機をまわす、家族と一緒に自分のものを選択してもらうのをいやがる」といったような細かいことも言われていますが、私はホームステイのプログラムにおける問題は以下の共通した問題があるので、参加者の意識が変われば防げることだと感じています。

 

溺愛されて育てられた子供たち

OCプログラムのホームステイの参加者がホストファミリーから非常によくされていると聞いたので、参加者からホストファミリーに何かお礼をしたらどうかということを言ったことがあります。その際にリーダー格の女の子が、「ホストファミリーは私たちのことが大好きだからすごくよくしてくれるのです。だから、彼らと一緒にいてあげることが私たちがしてあげれるベストな恩返しだと思います。」といって連泊することを提案していました。最初はジョークだと思ったのですが、結構真顔で言っていて、他の学生も同調していたので驚きました。高学歴の皆さんが、そういうことを言うとは…!このことは後でホストファミリーと反省会を開催したときにも相談したのですが、その際に現代の日本の社会問題が背後にあるのではないかということが議題に上がりました。まず、今の日本のトップクラスの大学に行っている学生はお金持ちの家庭が多いようです。それは、保護者説明会などでも感じています。そして、親が子供をものすごく大切にしているというのはその会話の端々からも感じます。お父さんの例、お母さんの例をそれぞれ出しましょう。まずはお父さんの例、以前、クライアントの社長さんが、「鬼社長」として社内で厳しいことで有名だったのですが、たまたまご自宅を訪問した際に「お父さんはとても優しい」と大学生の子供たちが言っていたのを聞いて驚いたことがあります。会社では「鬼」でも家庭では「仏」だったのです。厳しい社会の中、家庭や家族に愛情を集中させ、家庭に安らぎを得るというのはわかります。親にとって「内」である家族、そしてその中で最も大切な、愛情の対象としての子供がいるということに対し、「外」という厳しい環境がある。「外」=戦いの場であり、厳しくなる。その結果として、子供を守ろうという意識から極度に子供にとっての「外」である、学校の先生などに厳しくあたるという心理側面があるのだと思います。次にお母さんの例です。裕福な家庭のお母さんには専業主婦が多く、その仕事の中心は家事ではなく、子育てです。お母さんにとって大学生になっても子供のことが気になってしょうがない人がいます。どんなに子供が大きくなっても自分の役割として子供のケアをするという役割から離れられないのかもしれません。特に大学になっても同居している場合は、親の「過保護」が続きます。

 

これら父、母が子供を過保護にするのはそれぞれの立場的にそうなってしまうしょうがないことなのかもしれません。ただ、これから社会人になる大学生などにとって、それをDefaultとしてしまうのは問題です。前述した参加者が、「ホストファミリーと一緒にいてあげるのが恩返し」といった発想はまさに、親からの過保護の影響だと思います。「彼らは自分のことを大切にしているから愛してくれる。だから一緒にいてあげるのが自分がしてあげる最大の恩返し」という大きな勘違いをしているのです。継続的に社会に出てもそんな考えをもっているようであれば、将来かなり痛い思いをするでしょう。自分が過保護にされたことはしょうがないとしても、それは親の前での役割にして、割り切って外に出たらしっかりとした立ち振る舞いができるようになってほしいと思います。私の姉は大学教授ですが、大学生の成績に親が口を出す時代、子供たちはそれを「当たり前」だと考えてはいけません。親の子離れは心理的にできない時代です。だから皆さんは、日本の家庭でのDefaultの態度を持ち込まないでください。(それは私に対してもです)

 

ホームステイで気を付けること

悪い例ばかり書いてしまいましたが、CVSの参加者はおおむね、良い学生が多く、特にLAプログラムでスタートしてホームステイはホスト側からもかなりの好評で、USCの教授や、JPLで働くエンジニアなどかなりの人も興味を持ってくれています。他の国(特に最近多いのはあまやかされた中国人の子供)の子供に比べ、日本人の学生は人気があります。それらの良い実績などに基づき、ホームステイに関する具体的なアドバイスをします。

 

1)事前からのコミュニケーションを取る:前期の参加者で2人の女性がサラさんという家庭に滞在しましたが、「今までで、BESTな体験だった」と言われました。ステイした2人は今回、リクルーティングで頑張っているので皆さんも知り合いになるかもしれませんが、彼らは別に英語ができるわけではありません。(むしろかなりひどい:ゴメン)でも、いつも元気で、一生懸命な二人です。彼らの特徴として、日本にいる間からしっかりホストファミリーと連絡を取り合っていて、クリスマスカードの交換までしていました。前回突然のドタキャン参加者がでてしまい、ホームステイ先の交換などをしなければならなくなった際にも、ホスト側からその学生は変えてほしくないという強い要望がでたほどです。ホームステイはステイする時にはじまるものではないのです。ホームステイというのは「人間関係を持つ」ということなので、事前にそういった努力をすれば、相手も警戒心が減るし、受け入れることに対する「期待」がでてくるのです。CVSでは事前からホームステイのマッチをします。今回も、CVS参加者全員と面接をしてそれを決めたいと思いますが、きまったら、すぐ人間関係構築を始めてもらいたいと思います。

 

2)コミュニケーションを取る:前述したとおり、アメリカの社会でコミュニケーションは重要です。CVSではホストファミリーを厳選していて、人間的に素晴らしいホスト達が多く、英語以上に、彼らと知り合うことを大きな学びの場としています。ホームステイの家庭とは定期的に話をするので、より込み入った話(悩みの相談など)、自分のハードな体験や将来に対する不安といった深い話をすればするほど人間関係が強化され、それがホスト側からも良く思われます。そしてその人間関係は、日本に帰ってからも続き、強い関係となるのです。なので、アメリカに来た際にその家に今度は「無料」で滞在できる一番の理由は、深い人間関係にあります。これは参加者により異なり、おもしろいことに毎回CVSでも、ホスト側での評価もことります。中には人間関係構築が無理と判断されてしまうと、「事務的」な対応に代わってしまう家庭もあります。この外国のコミュニティー人間関係構築能力が、国際的なリーダーを育てる観点でも重要なことなので、皆さんにも意識して力を入れてもらいたいことです。

 

3)気配りをする、敬意を示す:日本人の多くは、外国に行って人と会う際に、お土産をもっていくとか、形式的なことにフォーカスしすぎです。何をするかというより、どういう「気持ちや意図をもっているのか」というのがはるかに重要です。その結果としてお土産を持ってきたり、家のために何かしてあげたりといった気配りが出てくるのです。夜静かにしたり、部屋を片付けたりするのはホストに対する敬意の表れでもあります。なので、ホストファミリーに対して敬意を払い、それを行動で示すべきです。その行動の表れが、事前のコミュニケーションや期間後の継続的な人間関係構築にも共通するものです。

 

ホームステイプログラムの面接に関して

 

今回はホームステイプログラムに奨学金を出し、5名は99900円で参加できます。そして全コース参加者にはさらなる奨学金も提供する予定なので、今回は日本で全参加者と面接をしたいと思います。奨学金を出す際に、「どれだけその学生が奨学金をほしいのか」ということが重要になります(必要ない人に大切な奨学金基金を出す必要はないでしょう?)。なので、それを理解できれば、奨学金をもらえることはまちがいありません。私は今回記載した内容も考慮し、以下のことを評価に入れます。

 

1)人間関係構築能力(20%):上記のrespectの部分とも共通しますが、相手に関心を示すことは敬意の表れでもあります。なので、奨学金面接をする際に当然相手は私のブログなどを読んでいて、私の考えなどを理解した上で、会話を持とうとするはずです。それをチェックします。

 

2)英語能力(20%):前述した例で英語が全然だめだったけど、ホスト側から「最高の学生」と評価されたことを書きましたが、平均的にみると、帰国子女や英語能力が高い学生たちのほうが評価が高くなっています。それは上記のコミュニケーションの前提条件としてあります。やはり英語ができないとコミュニケーションが難しくなりますし、深い会話は困難になります。なので、英語もチェックします。

 

3)プログラムに関する理解・関心(20%):貴重な夏をcvsのプログラムに参加しようと真剣に考えている人であれば、CVSがどんな団体であるのか、どういったプログラムで、何が要求されているのか、など興味を持って調べているはずです。興味=どれだけ欲しいか、ということの反映でもあるので、それをチェックします。昨日の役員会で、「ただ安いから行く」という考えの学生だとリスクが上がるという結果がでたので、そういった人に奨学金を出すのは本末転倒なので、それもチェックします。

 

4)事前・事後のコミュニケーション(20%):今回応募者には私のメールアドレスを教え、面接のアポを含め直接コミュニケーションをとってもらおうと思います。そのコミュニケーションがしっかりできるか、継続的なフォローをするかをチェックします。私とのコミュニケーションが良い人はホストファミリーともよいコミュニケーションをもつので、それを調べます。

 

5)全体的な印象(20%):楽器ができる、算数ができる、スポーツができるといった要素はホストからも良い印象を持ってもらえるので、それをチェックします。さらにその人がどういったバックグラウンドで何を目指し、どういった人間であるのかということもしっかり考慮したいと思います。

 

最後に

CVSでは大学の副学長や、現地での起業家など素晴らしい人材とのマッチメイキングがあります。それが就職や将来の人間関係で非常に影響のあるものになると思います。そういった最初の出会いが、今回の面接です。多くの学生がこのチャンスにチャレンジし、飛躍的に成長し、将来、世界で活躍できるグローバルリーダーになってもらいたいと思います。