不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会(6)パブリックコメント | セミリタイアを目指すサラリーマン大家 マンション管理のお勉強

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2020年2月から2021年3月にかけて国土交通省の「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」において検討が行われ、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が策定されました。検討会で行われていた議論内容も参考になるかと思い、資料を参照し、気になった点をメモ書きしましています。今回は2021年4月27日の第6回の検討内容についてです。

■第6回検討会(2021年4月27日)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00015.html
・パブリックコメントにて寄せられた意見概要と回答(案)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=155210315&Mode=1

(1)パブリックコメントにて寄せられた意見概要と回答(案)

・国が率先して、自殺に対する偏見を助長する内容である。ガイドラインを策定すると、個々の判例を一般化し、自死のあった物件をすべからく心理瑕疵物件とされる。差別・偏見が益々増長し、これまで以上に差別・偏見が強固になることが懸念される。
→ご指摘を踏まえ、ガイドラインの全体構成を再検討した結果、告げなくてよい範囲を明確化することとしました。また、「人の死は日々各地で発生しているが、それがいわゆる心理的瑕疵に該当するかや、その継続性の評価は、事案の態様・周知性等や当該物件の立地等の特性によって異なり、時代や社会の変化に伴い変遷する可能性もある。また、いわゆる心理的瑕疵は時間の経過とともに希釈され、やがて消滅するとの裁判例もある。」と明記いたしました。

・心理的瑕疵が本当に存在するのならば、ホテルでも告知を要し、遺族に対して損害賠償請求がなされるはず。どちらもないのは、そもそも「嫌悪すべき歴史的背景」などという心理的瑕疵が存在しないからではないか。なぜ不動産取引においてのみ心理的瑕疵の概念があるのか説明を求める。

・本ガイドラインは、民事損害賠償請求における具体的損害額の算定方法や立証責任についてまで言及するものではないことを明示すべき。
→ご意見を踏まえ、本ガイドラインは、人の死の告知に関して宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負うべき義務の解釈であることを明記し、また、取引当事者が参考とすべき旨は削除しました。

・近隣住民への調査は不要と理解してよいか。調査が必要になる場合はどのような場合か。その際の場所的範囲はどこまでなのか。大島てるより情報を仕入れた場合、他のインターネットサイトを確認する必要があるのか。新聞記事での調査や国会図書館まで調査する必要があるのか。
→調査を行う場合であっても、近隣住民等の第三者に対する調査や、インターネットサイトや過去の報道等に掲載されている事項に係る調査については、正確性の確認が難しいことや、亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要があることから、特に慎重な対応を要することに留意が必要であるとしました。

・「特段の事情」とは何か。大島てるに掲載されていれば、特段の事情に当たるのか。「特段の事情」は死亡事案の内容により変わるのか。最初の賃借人には告知が必要との判例もあるが、死亡事案発生後、おおむね3年間当該事案発生の部屋を賃貸に出さなかった場合は、特段の事情に該当するのか。
→「特段の事情」は、例えば、複数の近隣住民から人の死に関する事案に係る情報が寄せられた場合等を指しております。

・多くの人が日常利用する共用部分は、対象外にしてほしい。集合住宅の共用部分を告知対象とすると、多数の損害賠償請求が自死遺族に対して行われる可能性がある。建物内部と共用部分は、心理的瑕疵の程度に差があり、同列に扱うべきではない。集合住宅の共用部分を告知対象とすると、分譲マンションの場合、無期限で告知がなされ、多額の損害賠償請求が行われる危険性がある。建物内部と比較して、心理的瑕疵の程度は軽微であり、「概ね3年」程度で告知が不要となることを明記すべき。共用部での事案の取扱いはどうなるのか。ベランダ又は共用部からの飛び降り・転落事故は告示義務があるのか。告知が必要な場合、各住戸の購入希望者にまで行うのか。各住戸に対して告知義務が生じるならば、遺族に過度な請求が及ぶのではないか。

・自殺対策大綱では、「第4 自殺総合対策における当面の重点施策 9.遺された人への支援を充実する(3)遺族等の総合的な支援ニーズに対する情報提供の推進等」において「いわゆる心理的瑕疵物件をめぐる空室損害の請求等、遺族等が直面し得る問題について、法的問題も含め検討する。【厚生労働省】」としています。前項2(3)で述べたガイドラインが及ぼす影響と自殺対策基本法等との間には整合を欠いていますが、国交省のガイドラインが自殺対策基本法や大綱より優先するのでしょうか?また、大綱では心理的瑕疵物件の法的問題について厚労省が検討することとなっていますが、国交省と厚労省との間では協議があったのでしょうか?
→パブリックコメントの後に、厚生労働省担当部局とも相談し、ガイドラインをとりまとめました。

(2)議論、意見、検討

●ガイドラインの今後の取扱いについて
・興味本位の意見や偏見によって、事案が生じた物件の関係者が、本来被害者であるにも関わらず、加害者かのように扱われ、苦しまないような配慮が必要。