今後のマンション政策のあり方に関する検討会(7) | セミリタイアを目指すサラリーマン大家 マンション管理のお勉強

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2022年10月に国土交通省によって設置された"今後のマンション政策のあり方に関する検討会"は、9回にわたって議論が重ねられ、2023年8月10日に取りまとめが行われました。
9回の各検討会で行われていた議論内容も参考になるかと思い、資料を参照し、気になった点をメモ書きしましています。今回は令和5年5月22日の第7回の検討内容についてです。

■第7回(開催:令和5年5月22日)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000214.html

(1)建替え等に関するテーマの検討
1)建替え事業における住戸面積基準のあり方
2)建築基準法の形態規制(容積率、高さ、日影等)について
(2)とりまとめ骨子(案)についての意見


(1)建替え等に関するテーマの検討

1)建替え事業における住戸面積基準のあり方

〇建替後の住戸の面積基準
・基本:50m2
・単身者向け住戸:25m2

〇面積基準に対する課題
・50㎡以上の面積を確保することで、区分所有者の費用負担が著しく増加するケースや、容積制限超過等による既存不適格で建替え後の床面積を十分に確保できない場合などのケースでは、当該基準が隘路となり、本来、円滑な建替えが望まれるマンションの建替えを困難にしているケースがある。
・近年、建替え時期を迎えるマンションに現に居住している世帯主の多くは高齢者であることや、マンション購入世帯(30代後半~40代)をはじめとした各年代の世帯人数が減少傾向にあることなど、法制定当初から社会状況の変化が見受けられる。
・世帯人数が減少していることを鑑みると、建替え後の住戸面積を一律に50㎡とするのではなく、区分所有者の状況に合わせた引き下げを行うとともに、地方公共団体においても住戸面積の引き下げを適切に許可できるような対策が必要ではないか。
・都道府県知事等による面積基準の緩和の対応を一層進めるべきではないか。
・住戸面積基準の緩和について、建替え前の面積を満たせば良いのではないかと考えている。この場合、誘導居住水準に満たない面積の小さな住戸が新たにできてしまうことになるが、そもそも建替えができず、住戸面積の小さくかつ高経年のマンションストックが積み上がることを回避すべきではないか。
・デベロッパーが取得する保留床について 50 ㎡以上とするように求められる場合が多いが、50 ㎡以上の住戸が価値観の多様化に対応するマーケットのニーズに適合しない場合もある。また、区分所有者においても、建替えにかかる費用負担や家族構成等を考慮した面積の住戸を取得したいとするニーズがある。住戸面積を 50 ㎡以上とする制度と区分所有者等のニーズとのミスマッチが生じているため、制度の柔軟化を図ることで、このミスマッチを解消することが重要と考える。
・住戸面積基準は撤廃した方が良い。資金負担の耐えられない高齢者は大きな床面積を確保しようとすると建替えに参加できない上に、転出しようと思っても、独居だと民間賃貸のどこも入居できない。そうすると基本的には決議の反対者となってしまうため、決議要件も満たせなくなる。

2)建築基準法の形態規制(容積率、高さ、日影等)について

〇建築基準法の形態規制
・敷地に対する建蔽率や容積率、高さに関する規定、日影規制等の形態規制が設けられており、具体の基準については、地域のまちづくりの方針を踏まえ、地方公共団体において定められている。

〇建替え時に問題点
・マンションの建築後これらの規制が整備された場合、建替えに際しては、現行の規定に適合させる必要があるため、結果として、建替え前の建物規模を確保できず、事業性が確保できない場合が多くあるとの指摘がある。

〇検討課題、意見
・これらの基準の緩和については、周辺市街地との関係を踏まえ、慎重に検討することを要することは前提としつつ、今後は、建替え事業を実現するにあたり、地方公共団体がマンション建替えに際して独自に緩和している取組等を把握し、優良事例の横展開を図っていくべきではないか。
・余剰床創出を可能とする、容積率、日影規制等に係る制度の見直しを検討すべきではないか。
・余剰床を確保するためという理由で、日影規制を緩和することについて、周辺住民の理解を得ることは困難ではないか。

(2)とりまとめ骨子(案)についての意見

〇EV 用充電器の設置
・マンションが戸建住宅と大きく異なるのは、多くの利用者の利用調整が必要となる点にある。
 とりまとめ骨子(案)では EV 用充電器の数にしか言及していないが、パワーのない充電器では充電に時間がかかるため、利用者相互の利用調整上、EV 用充電器のパワーも重要となってくる。

〇漏水対策
・管理会社の最大の課題は漏水事故である。2000 年以前のバブル期までに大量に供給されたマンションでは専有部分の給湯管が銅で、この給湯管にピンホールが発生し床や壁が膨らむなどの不具合が生じている。近年発生する漏水の主な原因は、こぼし水か、専有部分の給湯管からの漏水である。専有部分の給湯管を樹脂管に変更することについても何らかのコメントをしてほしい。

〇マンションの解体費用
・国交省資料によると戸あたり 200~300 万円かかるというデータがあったが、横浜市でシミュレーションしたところ、土地を売却して解体資金を確保できないマンションが約 1 割存在した。

〇定期借地権マンション
・地代の交渉・解消について管理組合が関与できるのかという課題や、中古物件の流通を阻害しない制度の必要性、底地の買取り手続きに関する制度の必要性などがある。
・借地の原状回復について管理組合がどの時点でどのように関与するかという問題や、定借期間が満了しても建物の寿命が続く場合の期間延長のルール設定も検討事項としてあげられる。